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お肉屋さんが異世界に  作者: 鯖寿司
1章 異世界生活の始まり
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はじめての戦闘

お久しぶりです。この度は前の話しから投稿半年以上も間を空いてしまい誠に申し訳ありませんでした。リアルがとても忙しかったのです‥‥

またゆっくりとではありますが、更新していこうかと思います。何卒宜しくお願いします。

ところで、豚の屠殺(とさつ)方法についてご存知だろうか?

屠とは家畜を殺してその肉を頂くという意味だ。


屠殺(とさつ)ってのはスピーディに、かつその動物を苦しませないよう配慮されたものが多い。

最近よくある方法が電気ショックで感電死させる事。

他にはハンマーのような鈍器を使う方法がある。頭に強い衝撃を与え気絶させ、その間に刃物で頸動脈を切って殺す。躊躇さえしなければ誰でも出来る簡単なやり方だ。

あとは薬物を注入したり、二酸化炭素で窒息とかもあるな。


なんでこんな残酷な事を知っているかって?勉強したんだよ勉強。

嫌でも『動物』から『肉』になるまでのビデオとか見て勉強しなきゃなんなかったんだ。


話を戻そう。何故急にこんな話をしたかというと、俺は今あの猪を倒す作戦を考えてるからだ。

あの猪は図体がデカくて牙も四本あるがそれ以外は普通の猪と同じ。だからこそ普通の猪のような屠殺方法が通用するのではないかと考えたのだ。


だが俺にはハンマーもスタンガンもライフル銃も薬物もない。あるのはこの包丁のみ。

頸動脈を狙う出来るだろうが、いかんせん動きを止める手段が無い。


怯んでいる隙を狙えばいいのでは?と思ったが、ヤツの怯んでいる時間は以外と短い。確実に仕留める事が出来るくらいの長い隙が必要だ。


逃げながら精いっぱい考える。


(何か目くらましが出来れば‥‥‥‥)


‥‥‥‥目くらまし?


そうだ!目くらましにちょうどいいもんがあったじゃないか。

そうと決まれば善は急げ。記憶を頼りに俺はある場所を目指して走り出した。







「はぁ‥‥はぁ‥‥確かここに‥‥あった」


目の前に広がるは大量のリンゴモドキ。

そう、俺はリンゴモドキが実った木のある場所に戻ってきたのだ。


「ブモォォォ!」


遠くから轟く雄叫びが、木々を薙ぎ倒す音が聞こえてくる。ここへ来るのも時間の問題だろう。


俺の体力は底を尽き、これ以上走る事はもう不可能だ。その上この木は他の木と違って、開けた場所にぽつんと1本だけ生えている。他の木の影に身を隠す事なんて出来ない。

ヤツがこの木にぶつかって怯んだ時、それが俺にとって最初で最後のチャンスとなるだろう。


1つだけ実をもぎ取り、切れ込みを付けてベリっ皮を剥く。

はは、皮を剥いたら本物のグレープフルーツと見分けがつかねぇな。


‥‥‥‥‥ヤツの姿が見えた。衝突まで恐らく7秒、息を飲み、俺は木を背にして待機する。


出来る事ならこんなことしたくないし、あんな思いをするのはもうゴメンだ。だが、あの猪に勝つにはこの方法しかない。

俺はリンゴモドキをまるごと口の中に放り込み、思いっきり噛み砕いた。


瞬間、苦味と塩気が入り混じった果汁が口いっぱいに広がる。

不快極まりないその味に、思わず泣きたくなるが、これでいい。

『食べる』のではなく、『吹き付ける』のだか

ら。



「ブモゥ!?」


ヤツの突進を避け、リンゴモドキの木にぶつかって怯んだと同時に、すれ違いざま俺はその目に勢い良く果汁を吹き付けた。

要はプロレスラーのやる毒霧だ。テレビで見たのを見様見真似でやってみたが、上手くいったようだ。


「ブッヒャァァァァァ!!!!」


海水が勢いよく目に入ったと例えるべきだろうか。これは相手が化物だろうと一溜りもないだろう。

狙い通り猪は地面に顔を擦り付け動きを止めた。効果てきめん、チャンスは今しかない。


「オラァァァァァァァァッ!!!」


俺は包丁を構え、その首に刃を突き立てた。



~~~


「まさかこんな事になるとはなぁ‥‥」


俺の目の前にはあの猪の死体がある。そう、俺は勝利したのだ。

それはいいのだが‥‥


その猪の頭の体は綺麗に分かれた肉塊と化していた。


そもそも俺は頸動脈を切ろうとしただけで、頭を切り落とすつもりは無かった。というかそんな事になるだなんて思ってもいなかった。

首に包丁を刺した瞬間、ストンと音を立てて首が落ちたのだ。猪は何が起きたのか分からないといった感じでこちらを見た後、ワンテンポ遅れて切り口から勢い良く血を吹き出し、そのまま白目を向いて絶命した。


怖ぇよ!ギロチンかよ!


思わず体が震えた。あんな凶暴な猪が、何度巨木に頭をぶつけても傷一つつかず血も流さなかった猪が、簡単に死亡した。

‥‥もしかしたら俺はこの世界ではめちゃくちゃ強いという事か?それともこの包丁はとんでもなく切れ味がいいとか?

いや、恐らく後者だろう。俺はただの一般人、食に関する知識以外は皆無だし、筋トレなんかも全然していない。この包丁がこの夢の中におけるいわゆる『チート武器』ってヤツなのかもしれない。


まぁいい。とりあえず今はこの猪をどうにかしよう。


「どうすっか‥‥これを保存する手段も持ち運ぶ手段もねぇし‥‥。参ったな、道具が足りなすぎる。」


解体をするならこの切れ味バツグンの包丁1つで出来るだろう。

だが問題はどうやって保存し、持ち運ぶかだ。


見た所、800kgくらいありそうなその巨体。この肉を全て俺が食べるとしたら、当たり前だが食い終わる前に残りの肉の鮮度が悪くなってしまう。そもそもこれを1人で食べるというのも無理な話。だからこそ保存する手段が欲しい。


それにこんな巨体を運べるほど俺は力持ちじゃない。リアカーなどがあれば運べるかもしれないが、そんな物はどこにもない。


解体した所で、保存する道具も持ち運ぶ道具も無ければ無意味だ。だが、だからと言って放置する訳にもいかない。


肉という貴重な食料を手に入れた訳だし、牙や毛皮といった使えそうな素材も沢山ある。

そして何より、殺した以上この猪の死を無駄にしなくないからな。


「何かこう‥‥持ち運び可能な冷蔵庫(・・・・・・・・・・)みたいなもんがあれば助かるんだが‥‥そんなんあるわけないか」


そう考えた次の瞬間だった。


包丁の装飾に使われている宝石が、青く、眩く発光した。


「うおっ眩しっ!?」


あまりの眩しさに、思わず包丁を手から離してしまう。

だが、俺の手から離れた包丁は落下する事なくそのままふわりと宙に浮いていた。

その上七色に輝いてた宝石はサファイアのような輝きを放つ青い宝石に変化している。


新品同様になるだけでなく、宙に浮いて宝石の色が変わる機能まで付いてるのか?


そう思ったその時。








【異次元冷蔵庫を発動します。】







女性の電子音声のような声が、俺の頭の中に鳴り響いた。


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