表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お肉屋さんが異世界に  作者: 鯖寿司
1章 異世界生活の始まり
1/4

プロローグ

1つ、肉屋たるもの、お客様に上質な肉、惣菜を提供すること


2つ、肉屋たるもの、食材に対しては粗末に扱わず、丁寧に、感謝 を持って扱うこと


3つ、肉屋たるもの、笑顔を大切にすること








俺の名前は井上龍次。25歳独身。満面の笑みでサムズアップをしているブタちゃんマークが目印の『肉の井上』店主である。


そして上の3つは、俺の両親が昔から口をすっぱくして言ってきた言葉だ。2人はこれを『肉の井上の3か条』と呼び、幼い頃から俺に何度も教えてきた。

ことある事にそれを言ってきたので正直鬱陶しかったが、3か条の通り、父の捌く肉は鮮度がいいと評判で、母の作る肉料理はとても美味しく、2人の笑顔はとても眩しかった。










そんな2人が亡くなったのは、7年前‥‥俺がまだ高校生だった時の事である。


死因は交通事故。2人が遠くの業務用スーパーへ調味料を買いに行く途中、飲酒運転のトラックにぶつかって死亡したそうだ。


そりゃもう当時の俺は凄まじいものだった。2人の死を聞いたとたん、ただひたすら泣き、ゲームばかりしてないで、家族との時間を大切にしていれば良かったと自分を憎み、そのトラックの運転手に対して激しく怒った。肉屋はどうなる?と不安にもなった。

とりあえず、負の感情で色々と真っ黒だったのだ。


そんな絶望のどん底に居た俺を救ってくれたのは、常連客であるおじいちゃん、おばあちゃん、主婦の方々に高校の友人たちだった。


ある老夫婦は「龍ちゃん大丈夫か!?」と誰よりも早く俺の心配してくれたし、ある裕福なシングルマザーは「貴方のためなら!」と金の援助をしてくれた。友人は俺のためにメシを奢ってくれたりもしたな。


真っ黒いものがすぅっと消えていった。と同時に俺は恵まれていると感じた。もしもみんなが居なければ、立ち直れなかったかもしれないし、両親を追って自殺していたかもしれない。


そうして真っ黒い感情が消え、自宅に安置された2人の死に顔を見た瞬間、俺の心に新たな感情が芽生えた。



この店は、『肉の井上』は俺が継ぐという『決意』である。


俺を支えてくれたおじいちゃんおばあちゃん、主婦の方々が愛してくれたこの店を、俺の父と母や先代たちが築き上げてきたこの店を、2人が居なくなったという理由だけで潰してなるものか。と決意したのだ。


それからというもの、俺は食肉処理業や食肉販売業など、精肉店を営む上で必要となる資格が手に入る大学に進路を決め、死に物狂いで勉強した。小中高の時とは大違いである。


金についても先程のシングルマザーやおじいちゃんおばちゃん達から支援してもらっている分に、今まで両親が働いて、今後のためにと貯金していた分、俺自身がアルバイトとかで稼いだ分があるので問題はなかった。その上肉の部位や捌き方、惣菜の作り方については幼い頃から親にみっちりと教わっていため問題は無かった。



そして卒業後、ようやく俺は店主となり、両親の死によって長らく休業していた『肉の井上』を再営業させる事に成功したのだ!


久しぶりに店を開いた時はそりゃみんな喜んでくれた。「久しぶりに井上のメンチカツが食べれる!」と歓喜する人も居れば、「あんなにちっちゃかった龍ちゃんが今ではこんなに立派に‥‥」と涙してくれる人も居た。


あの時は本当に嬉しかった。ようやく励ましてくれた人たちに恩返しが出来たのだと、父と母の店を、『肉の井上』をちゃんと継ぐ事が出来たのだと‥‥


とまぁこれが俺の自己紹介。色々とあったが、

今に満足しているし、これからも『肉の井上の3か条』を守ってみんなに美味い肉を販売していくつもりだ。



んで現在。


「‥‥‥‥‥‥どこだここ」












俺は今、見知らぬ森の中で、大の字になって倒れている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ