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【序章】 最初から最後
それは、あまりにも異質過ぎた。
黒という黒を、
闇という闇を、
負という負を、
姿形も有無も理性も境界も精神も思考も個体も
何もかもをドロドロに、ぐちゃぐちゃに、
異端で痛んで傷んで悼み切った
そんな、歪に歪みまくった瞳。
言葉で説明することなど無理。
言葉で説明してみるなど愚劣。
そもそも、関わろうなどと考えるだけでこちらが壊れてしまいそうだ。
そんな瞳をしたソレが、潰れた音を吐きながら
何時もの歩き方で、笑顔で寄ってくる。
幾つか欠落したその体で、何事もなかったように寄ってくる。
そして、
「 」
少女は、壊れたソレの手を握る。
離さない様に、迷わない様に
今度こそ、その手を握る。
緩やかで湿っぽい雨の音が、
トタン製の屋根を何度も何度も打ち付けていた。
何度も、何度も…………―――――
―――――あの日も、雨の日だった。