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講義後、僕は再びなんでも相談室に行った。部屋に入ると、柳田教授が吉崎からもらった白いかけらを手に持ち、じっと動かず見続けていた。吉崎が相談に来てから2日経つ。休み時間の合間に部屋をのぞいてもずっといなかったので、とりあえず教授がいることにほっとした。ただ、僕が部屋に入ったことすら気づかないほど集中しているようだ。
部屋は本や書類で机の上から床の下まで埋め尽くされていた。散らかるたびに片付けているのでいつもはそこそこきれいに整頓された部屋が見る影もない。
「教授、それについて何か分かったんですか?」
僕の問いかけも虚しく、教授は無言のまま手に持ったかけらをにらみ続けていた。そうかと思えば、身体を机の方に向けて、パソコンに何か打ち込みを始めている。完全にシカトされるとさすがに悲しい。
「教授!それについて何か分かったんですか!」
「…そんなに大声出さなくても聞こえているよ。」
僕に背を向けたまま、教授は応えた。じゃあさっさと返事をしてくれればいいのに。
「予想以上の成果が得られたよ。後は最終経過をまとめれば、次の学会で発表することもできそうだ。」
「が、学会?吉崎を助けるために調べていたんじゃないんですか?」
「吉崎?…あぁ彼か。今はほっといても大丈夫だよ。死ぬことはたぶんないし。」