3
「ひとっちも大変だねぇ、教授のお守りなんて。」
「だったら土居も手伝えよ、僕にばっか押し付けないでさ。」
「俺にはやなぎぃのお守りなんて無理ムリ。それにバイトにサークルに忙しいしさぁ。」
柳田ゼミ生は、3年生では僕と土居の2人だけ。4年生は就活や卒論があるので、なんでも相談室の手伝いは3年生でやる事が慣例になっている。本来は交代で手伝いをするべきところを、何かと理由をつけて土居は僕にばっか仕事をさせてくる。悪いやつじゃないけど、なんかうまいところを持っていかれている気がする。
「なぁ、理学部の2年の吉崎誠って知ってるか?」
「吉崎誠?…あぁ、まこっちゃんのことか。…もしかして今回の相談者はまこっちゃんなの?」
「そうだけど、相変わらず知り合い多いな。」
「まこっちゃんとはサークル一緒でさぁ。そういや最近見てないなぁ。」
『彼の友人関係や恋人について調べておいてくれ。』
吉崎が帰ったあとコーヒーの後始末をしている僕にそう言い残すと、教授は部屋を出て行ってしまった。今回の件と何か関係があるのだろうけど、それが何なのか詳しく教えてくれないから分からない。というか、吉崎本人に聞けば早いものをわざわざ調べろだなんて効率が悪いんじゃないかと思うのだけれど、まぁやるしかない。人間関係について調べる時は、大学内外で人脈が異常に広い土居に相談するのが、お決まりのパターンだ。
「吉崎と仲のいい友達とか、彼女がいるとか教えてくれない?」
「俺もそこまで仲良くないからそんなに詳しくないけど…彼女はいなかったはず。サークル内なら同じ理学部の確か…西本と良くつるんでいた気がするなぁ。」
「そっか、ありがと。」
「礼には及ばんよぉ。ってか吉崎に直接聞いた方が早いんじゃねぇ?」
「まぁそうなんだけど、教授が吉崎の話を聞いたらすぐに追い出しちゃったから。」
「ひとっちも苦労してるんだなぁ。」
そう思うならたまには教授の手伝いをやってほしい。
「おっと、もうこんな時間だ。じゃあな、俺バイトあるから。」
「えっこの後の講義、必修だろ?」
「あとでノート見せてくれよ!じゃ」
「おっ、おい!」
「あっそうだ、もし西本に会いに行くなら、サークル来いって言っておいてくれよ。あいつも最近サークル来ねぇからよ。」