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「それはいつから君の顔についているんだい?」
相談用に用意された椅子に吉崎を座らせ、対面に柳田教授は座った。僕は教授の斜め右後ろに机と椅子を用意して、話の記録の体制に入る。床にこぼれたコーヒーが気になるが、教授は吉崎しか眼中になく、掃除する間もなく相談が始まった。
「半月くらい前から、顔に白い吹き出物ができるようになったんだ。最初は額に数ミリ程度の大きさで、かさぶたみたいに引っ掻いたら取れたから、あんまり気にしていなかったんだけど、日に日に白い吹き出物が大きくなっていって。なんか気味が悪くなって、皮膚科の医者に診てもらったんだけど
。」
「ダメだったんだな。」
柳田教授がイキイキしながら吉崎の顔を観察している。右目の下にクマができて、青白い顔の彼を見てよくそんな楽しそうな顔になるなとイライラしたが、話を折るのも嫌だったので、怒りを込めた視線だけ送っておこう。教授、彼は困っているんだからそんな楽しそうにしないでください。
「…あ、はい。それで他の医者に診てもらったり、神社でお祓いしてもらったり、できる限りのことはしたつもりなんですけど、どれもダメで。」
話しながら、吉崎は左の頬を覆っている白い物体を引き剥がした。さっきまで左目までしか覆っていなかった気がするが、気のせいだろうか。
「白い吹き出物の覆う速度もだんだん速くなっているんだ。今はまだ引っ掻けば取れるけど、額のあたりとか一部はもう取れないんだ。いつか顔全体を覆って取れなくなってしまうんじゃないかって心配で、怖くて、ここ2、3日はろくに寝れていなくて。」
「それは面白いな。」
「教授、さすがにそれは不謹慎です。」
疲労困憊で辛そうにしている人に対して面白いはないだろうが!
「噂で聞いたんだ、どうしようもなくなった時でも柳田先生ならなんとかしてくれるって。なぁ助けてくれよ!」
柳田教授の専門分野が民俗学ゆえに、妖怪や霊などやばそうなことはなんとかしてくれる、そんな噂が流れているのは有名だ。そしてそれはデマではないことは、手伝い始めてからうすうす感じていた。
「…そのカケラをもらってもいいかな。少し調べてみよう。」




