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交通事故の原因が吉崎?教授の言っていることが分からず、吉崎の方を見ると、彼の目には恐怖が宿り言葉を失っていた。


「交通事故の現場付近で聞いたんだ。事故のあった時、車にひかれた青年ともう1人同じ年くらいの青年がいたとね。君のことなんだろ?」

「あ、あれは、事故で…」


吉崎の目が泳ぎ舌も回っていない。動揺しているのは明らかで何か隠しているのは間違いない。けれど、僕たちは吉崎を脅しにきたのではなく助けに来たんじゃなかっただろうか。


「さっさと話せば楽になるのに…君に張り付いているのは、『肉付きの面』の類なのだから。」


「肉付きの…面?」


「なんだ、知らないのかい?」


吉崎は首を縦に振った。やれやれとでも言わんばかりに両手を挙げ、無邪気な子どものように目をキラキラさせている。あぁ良くないな、これは。


「昔、お清という信仰心の深い女性がいてね、夫と子どもに先立たれて、姑と一緒に暮らしていたんだ。お清は毎日寺に通い、死んだ家族のために熱心に弔っていた。村の人からも好かれていて、健気に暮らしていたんだ。だが、姑はそれがとても気に食わなくてね。お清のことを良い人ぶっているようにしか見えなかった姑は、誰からも好かれるお清が憎くて憎くて仕方なかった。


お清を痛い目に合わせてやろうと思った姑は、家にあった鬼女の面を被ってお清をおどかしてやることを思いついた。その夜、お清の帰り道で待ち伏せて、鬼女に化けた姑は突然飛び出したんだ。


お清は最初は驚いたけど、念仏を必死に唱えながら走ってその場を逃げていった。姑は内心よろこびながら、お清にこのことがバレないよう急いで家に帰っていった。


なんとかお清より先に帰ることができた姑は、鬼女の面を外そうとした。けれど、お面が張り付いて取れやしない。一生このままなのか?そう思うと悲しくて哀して姑は泣き叫んだそうだよ。


まさに今の君みたいにね。」


怪奇現象に関する話になると異常に饒舌になるのは教授の悪い癖だ。一刻を争う自体なのに、話が長いんだよ。


「教授、とにかく彼からそれを外してください。外し方知っているんですよね?」


「姑は最後どうなったか覚えているかい?仁瀬くん。」


僕の問いに答えず、僕に問いかけてきた。


「…確かお清に全てを話して、一緒に念仏を唱えたら外れた、だったと思います。」

「つまりそういうことだよ。さぁ、さっさとそのお面を外してくれないかい?」


教授は吉崎を見ながらそう言った。吉崎は今の話を全く理解していないのか戸惑いの表情をしている。僕も全然理解できなかったから気持ちは分からなくはない。


「教授、結局彼はどうしたらいいんですか?」

「説明したじゃないか、今。」

「説明になっていません。彼にわかるように話してください。」

「今ので分からないなんて…はぁ。」


教授はひどくめんどくさそうに僕の方を見た。僕も積もりに積もった怒りを込めて睨み返した。やはりめんどくさそうに今度は吉崎の方を見て話し始める。


「いいかい、君にそれが張り付いている原因は、特定の人物に対する憎しみだ。半月前に起きた出来事を正直に話して、反省すれば外れる。本当はこんな話聞きたくもないけど、お面のためだ。」


「…俺は、何もし、てない」


話せばお面が外れる、なのに吉崎は未だに話すことを拒否し続けた。


「…しょうがない、首を切り離して持って帰ろう。大学でお面と顔を」

「教授、それは殺人ですよ。」

「…はぁ。」


「俺は…本当に何も…してないんだ」


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