仕事の神様がやって来た。
初投稿です。誤字とか文法的におかしい点もあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
僕は小説家だ。小説家といっても、ミステリーとか純文学とかではなくライトノベルと呼ばれる類の本を書いている。そんな僕のもとに、彼女は突然やって来た。
◇◇◇◇◇
いつものように部屋にこもり、無音の空間でパソコンに原稿を打ち込んでいると、インターホンの音が鳴った。
誰だろうか?僕は親元を離れているので家族ではないだろうし、恋人とか妻とかいない。悲しいが、年齢イコール恋人いない歴、だ。
出版社の方なら前もって電話なりメールなりしてくるはずで、パソコンの前にいる時間が一日で最も長い僕がメールを見逃す訳がないし電話も音でわかるはずである。友人?なにそれ、僕にそんなものいると思ったか!ってふざけてる場合じゃない。インターホンに応対しなきゃ。
「はーい、どなたですか?」
「えっと、『紅蓮のエンジェルマスター』をかかれているとうみなりさんですか?」
なんと、聞こえて来たのは小さい女の子の声。僕の知り合いの異性だって母親(異性に入れていいのだろうか?)と出版社の方ぐらいで、小さい女の子の知り合いとかいない。僕のファンだと嬉しいのだが。
「え?あの、どなたですか?」
「ここはとうみなりさんのおたくじゃないんですか?」
質問に質問で返してくるのはやめてほしい。
「私が外海成ですが、あなたは誰ですか?」
「わたしはラノベの神さまです。」
ちょっとハテナマークのランドセルなんだが。「ラノベの神さま」って誰?そして仮に居たとしてもよりによって小さな女の子?聞き間違いなら納得なんだが………
「えっと、もう一度お願いします。」
「だから、ラノベの神さまですって。」
どうやら聞き間違いではないようです。しょうがないから話を進めよう。
「ラノベの神さまが私に何の用でしょうか?」
「あまりきかれたくないのでとりあえずなかにはいらせてもらっていいですか?」
舌ったらずだからか、ひらがなで書くのがしっくりくる喋り方。なんか幼い感じが可愛い。いや、そういう意味ではなく。
それにしてもこんな年の子を僕が家に入れているのを誰かがみたら僕は犯罪者扱いされるのでは?そう躊躇していると、「はやくしてくれません?」と微妙に冷えた声色の声が。
何となく恐怖を感じた僕は彼女を家にあげることにした。 手早くリビングを片付けた後ドアを開けると「神さまをまたせるなんていいどきょうね」と言われたのだが、そんな言葉が聞こえないほど僕は彼女に見惚れていた。金髪で身長は140~150cmか。別に僕に幼女趣味とかなかったんだが、男なら誰もが振り返るレベルの、これなら「わたしはラノベの神さまです。」と言われても納得できるレベルの美幼女だった。
彼女はお邪魔しますも言わずに中へ入っていく。でも、神さまなのにペッタンコなのは少し残念だなぁ。
「そんなはんのうされたのはじめてよ。」
どうやら心の声が漏れていたらしい。彼女はリビングに着くと勝手にソファーにどっかりと座った。リビングにはそれしか座れるものがないので真ん中座られると俺が座れない。
頼むから少し詰めてください………と目線で訴えると「はやくゆかにすわりなさいよ」とのこと。泣く泣く床にあぐらをかく。何で僕が………と思うが本当にラノベの神さまだったら生活に支障が出るので言う通りにするしかない。なんか怖いし。
そして自称ラノベの神さまが話し始めた。
「とりあえずあなたが『紅蓮のエンジェルマスター』のとうみなりさんよね?」
「はい、私が外海成です。」
なんか尋問されてる気分だ。
「『ぐエマ』のじゅっかんでたのもまちがいないわね?」
「お陰さまで。」
ちなみに、『ぐエマ』というのは『紅蓮のエンジェルマスター』の略称です。
「どうしてわたしにほうこくしなかったのよ?」
「は?」
「だから、わたしに『ぐエマ』のじゅっかんでるってほうこくしなかったのはどういうりょうけんなのよ!」
どうやら10巻目を出すときには神さまに報告しなければならないらしい。そんな話聞いてないんだけども。
「す、すみません。ですが、私そんな話全く知らなかったもので………」
「しらなかった?」
彼女が睨んでくるが、今度はなぜか全然怖くない。むしろ可愛さが誇張される感じだ。
っていうか今思ったけどなんで僕は敬語を使っているんだろう?相手の方が年下っぽいんだけど。
「はぁ?しらなかったですむとおもってんの?わたし、やろうとおもえばあんたのほんのうりあげへらせるんだからね。」
「本当、ですか?」
目線に疑問を込めて見つめる。
「ええ、『俺の人生ほどタイミング悪いもんもないでしょ 』のうりあげのばしたのも、『あんたの姉じゃなくってよ!』のうりあげへらしたのもわたしのやったことよ。」
どやっ、という効果音が聞こえるぐらいに胸を張っている。張る胸もないのに。ただ、確かに不自然なほどにその2冊の売り上げが急に変動したのは事実。まぁ、ここは信じてやるのが男でしょ。
「へぇ、それはすごいですね。」
「でしょ?でしょ?」
少し誉めただけですっごく嬉しそうに「でしょ?」を連発する。意外とおだてに弱いかもしれない。
「あなたのしょうせつはよんでておもしろかったからほうこくめんじょしてあげたのに……」
「あ、高評価ありがとうございます。」
面と向かって誉められると恥ずかしい。
「じゃあ、サインちょうだい。くれたら、こんかいのけんはみのがしてあげるわ。」
………サインごときで許してくれるのか。優しいというべきかチョロいというべきか。 ご丁寧に色紙まで持ってきていて、渡してきたので、
「名前は?」と聞くと「結乃よ」とのこと。神さまなのに普通の名前なんだね。
色紙にサインを書き、端に『結乃さんへ』と書いて渡したらすっごく喜ばれた。飛び跳ねそうなくらいに。書いてやった価値があったのかな、と思った。ついでに言うとめっちゃ可愛かった。
「つぎはじゅうごかんをだすときにほうこくよ。」
「報告ってどうやってやるんですか?」
「そらにむかって『じゅうごかん、だします!』ってさけべはいいのよ。」
「恥ずかしいなおい!」
「じょうだんよ、じょうだん。ほんとはこころのなかでわたしのことかんがえながらぶつぶついえばいいのよ。」
「それはそれで見られたら怪しい人じゃないか?」
少しリビングに沈黙が流れる。僕はその沈黙を打破しようと新しい話題(言うて新しくないけど)を出す。
「今度の報告はこっちに来られるんですか?」
「きてほしい?」
来てほしいかどうか?そりゃもう、
「まあ、楽しいですしね。幼女とはいえ異性としゃべるのは。」
「でもざんねん。わたしだっていそがしいし………」
「そうですか………」
さっきより重苦しい沈黙が場を支配する。沈黙につぶされそうだ。
「わ、わたし、そろそろかえるわ。」
「そ、そうですか。っていうかどこに帰るんです?」
「神さまがかえるのはてんかいにきまってるでしょ。」
「そうですか。お気を付けて。」
返事もせずに結乃はドアを開け、その3秒後に戻ってきた 。
「な、何があったんです?」
「そとが………くらいから………かえれないよぉ……」
若干涙目の上目遣い。心臓を撃ち抜かれた気がする。
「で、神さまどうするんです?」
「とめて………ください………」
「と言われましても、ウチも財政的に余裕ないんですよね 。」
一人暮らしだから家族にばれる!みたいな心配はいらないが、財政的に余裕がない。
「とめて………もうけいごじゃなくていいから………結乃ってよんでいいから………とめてぇ………」
さっきドアを開けるまで上から目線だった分ギャップ萌えが………そして何より敬語じゃなくていいと!
「わかった、泊めてやるから泣くな結乃。」
早速名前で呼んでみると、満面の笑みで、
「おれいはいっといてあげるわ。」
と言われた。そこは「ありがとう!」じゃないの?急に上からになったし。
「は、はぁ……」
そして、結乃が上から目線になると無意識に下手に出てしまう自分が嫌になる。
◇◇◇◇◇
「んー、とりあえず僕は風呂入ってきたいんだけど、どうする?」
僕は飯より先に風呂に入る。理由は、飯食った後に風呂入ると腹が痛くなるから。たしか血流と関係があったはず。
「そうね………わたしがさきにはいるわ。」
この偉そうな言い方いい加減どうにかならんかなぁ………
「そんじゃあ先に入ってきていいぞ。」
「のぞかないでよ!」
「覗くか!」
まだ小説の続きを待ってくれてる読者さんがいるので捕まるわけにはいかない。待ってくれてる読者さん、いるよね?ラッキースケベ?そんなんラノベだけでしょ。
というわけで、なにも起こらずに結乃が風呂からあがってきた。なんか色っぽいのはなぜだ?あと、パジャマどっから出てきた?
「神さまだからね。」
心の声が漏れていたらしい。
「そんじゃ、僕風呂入るね。」
結乃もいるからあんまり長風呂できないな………と思いながら浴室のドアをあけ、そのまま理性が一瞬飛んだ。何というトラップ!いや、だってドア開けた瞬間に漂ってきた匂いがなんというか、ほら、わかる人はわかりますよね?ってか僕誰に話してんだ………
そのあとは特に何もなく(ホントホント、決してお湯を飲んだりしてない、信じて!)風呂からあがり、ドライヤーで髪を乾かしてから(結乃に「いがーい」って言われたが、小さい頃から親に「髪乾かさないと風邪ひくよ~」って言われてたし。)夕食をつくる。一人暮らしで外食ばかりだと栄養バランスが崩れるので、最低限の料理スキルは身に付けている。
鼻唄を歌いながら野菜を炒めていると背中に視線を感じた。振り返ると結乃がじっとこちらを見ている。
「どうかしたか?」
「いや、たのしそうだから………そんなにおりょうりたのしい?」
「まあ、それなりに」
少なくとも「うわわぁ!締め切りやばいじゃん! 」とか言ってるときよりは100倍楽しいと思う。
「わたしもおりょうりやってみたいなぁ……」
「僕は料理上手では無いからね。本気なら料理教室って手もあるけど。」
「むりだもん………」
今気づいたけど、また素直上から目線消えたね。ずっとこのままだと嬉しいけども。
とか駄弁ってたらできました!チャーハン。比較的得意なんだよ僕。
「できたぞ。箸長いかもな。」
「ラノベの神さまにできないことなんてない!」
それは関係ないと突っ込もうと思ったら、その前にこぼしました。やはり関係なかった。 そのあと、スプーンに変えてやり、丸く収まりましたとさ。
◇◇◇◇◇
飯も食い終わり夜の十時を回った。
普段の僕なら全然起きているのだが、今は原稿締め切りに余裕があるし、結乃がいるので寝ることにする。結乃眠そうだし。そして結乃の眠そうな顔が可愛すぎてヤバいよ。
寝る前にトイレに行く。これもお風呂の件と同じで癖だ。母親にいつも「寝る前にトイレ行きなさい」って言われてたからね。で、何気なくドアを開けたんだけど……
「は?」
「ちょっ、はやくしめなさいよ!」
「ス、スミマセン」
ドアを慌てて閉める。ってかなんで鍵をしてない!
「わ、わすれてただけよ!あなただってなにかをわすれることあるでしょ!」
そう言えば心が読めるんだっけ?まあいいや。あと、質問(?)に答えるならそれとこれとは話が違うだろうと言いたい。はあ、疲れた。
結乃は客間で寝かせる。その方が広いし、同じ部屋で寝るのは不味いだろう。僕はロリコンじゃないけど、一応、ね。
「結乃、そろそろ寝るぞ」
「その………きゃくまは………こわい」
「何故に?」
「よるひとりはこわいから………」
うっわ何この生物可愛い。
「で、どうするんっすか。」
「いっしょにねちゃ………だめ?」
上目遣いは反則感がヤバい。これで断れる人はおかしいよ、人間じゃないよ。僕はあいにくただの人間だった。
「わかったよ、いくぞ」
これ相手が幼女の神様でなければどう見てもラノベだよな。いや、幼女の神様って時点で充分ラノベか。
眠そうに目を擦りながら僕の服の袖を掴んでくる結乃可愛い。結乃神降臨されたわ。実際神らしいけども。
そんなことを考えながら布団に入り、電気を消す。結乃が抱きついてくる。闇が怖いらしい。それに伴い、ふわっと女の子特有の匂いが漂ってくる。さすがに夕べの風呂場の件で耐性がついたのか、そこまでクラクラしなかったけど。
それにしても、ホントなんなんだろうなあれ。女子と男子の匂い嗅ぐ度に(不可抗力。ここ重要!)男と女じゃ根本的に種族が違うんじゃないかといつも思う。
でも、もしかしたら今日で僕の人生の幸せ全部使い切っちゃったかもな………とかくだらないこと考えてたらいつの間にか眠りに落ちた。
◇◇◇◇◇
夢は見なかった。正確には見た夢を覚えてなかった。眠りが浅いからか?夢は深い方が見るんだっけ?よく覚えていないが。ちなみに、結乃は爆睡中。神様がこんなんでいいのか?と言いたい。腹出てるしな。
もう外は明るいので結乃を部屋で一人にしても大丈夫だろうなと判断し、台所で朝食を作る。すると五分後に朝食の匂いに釣られたか、結乃が居間にやってきた。
特にどころか「朝食を食べた」以外に本当に何もなく、結乃が帰る時間となる。なんでも、これ以上遅くなると父親に怒られるらしい。是非とも父親の顔を見てみたい。………いや、挨拶しにいくとかそういうのじゃなくて。
「じゃあ、わたしかえるね」
「お、おう。」
「ほうこくわすれるんじゃないわよ。」
「お、おう。」
「もっとはらにちからを込めて!」
「うっす!」
何の部活だよ。野球部か?柔道部か?
「ねえ、わたしとはなれるのさみしい?」
少し不安げな表情をしているように見える。だから、僕は安心させる意味合いも込めて、
「あたりまえだ。」
すると顔が笑顔になった。
「そう、それはよかった。………とめてくれたし、とくべつにつぎのほうこくのときもきてあげるわ。たのしみにしてなさい!」
上から目線だが、少し頬が赤い。やっぱりこいつ神様なのかね?
「うるさいわね、ちゃんとかみさまやってるわよ。じゃ、がんばりなさいよ!」
そう言って、天界へ飛び立っていった。なんかジャンプしたら吸い込まれていきました、みたいな感じだった。ファンタジー。
さて、お客も帰って一段落ついたし、神様から直々に励ましの言葉を頂いたし、
「仕事がんばりますか!」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。よろしければ感想、ポイント評価、お待ちしてます!