ねえ、私良い子でしょう?
ぐじゅり、びちゃ、がっ、ばきっ。
ああ大変、ああ大変。
私はどうしてこんなに小さいのかしら。どうしてこんなに力が弱いのかしら。
力仕事は出来ないわね。だってとっても疲れるんですもの。
ああ大変、ああ大変。
でも誰にも代われなんて言わないわ。これは私にしか出来ないことだもの。
私以外に任せられないことだもの。
みし、みしっ、ぐしゃ。
ああ大変、ああ大変。
慣れないことだから上手く出来ないわね。初めてのことだから仕方ないわよね。
少しくらい失敗してもあなたは怒らないでしょう?
だってあなたはとってもとってもやさしいのだから。
大事なお皿を割ってしまっても、大切な絵を汚してしまっても、
いつかは必ず壊れてしまう時が来るからってあなたは私の頭を撫でてくれたわ。
とってもとっても嬉しかったのよ。
怒鳴りも殴りもしない手なんて初めてだったもの。
温かくて、いい匂いがして、柔らかくて、とっても心地よかったの。
ぎちっ、ぎりっ、ぼたり。
ああ大変、ああ大変。
ちょっと疲れちゃった。でも急がないとあなたが帰ってきちゃうのに間に合わないわ。
もう少しだから頑張るわ。これは私にしか出来ないことだもの。
あなたが帰ってくるまでに綺麗に綺麗にしなくちゃね。
だってここはあなたと私の大事な大事なお家だもの。
がりっ、ぐじゅり、ぶつん。
ああ大変、ああ大変。
足音が聞こえてきちゃった。もう帰ってきちゃったのね。
でも大丈夫、もうすぐ終わるわ。
ぐじゅ、びちゃ、ごとん。
ああ大変、ああ大変。
急いでお出迎えに行かなきゃ。忘れずに準備したものを持って行かなきゃ。
うふふ、間に合ってよかった。時間ぴったりね。
ねえねえ、早くドアを開けて。早く私を見て。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた。
お帰りなさい、やさしいあなた。お帰りなさい、良い子にして待ってたのよ。
ねえ見て、すごいでしょう。
あなたと私の大事な大事なお家に入ってきた邪魔なもの、私が退治したのよ。
うふふ、驚いてるのね。
私はこんなに小さいのに、私よりもずっとずっと大きな邪魔なものを退治したから。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた。
うふふ、うふふ。
すごいでしょう?頑張ったでしょう?
だから、褒めて。私の頭を撫でて。
温かくて、いい匂いがして、柔らかくて、とっても心地よいあなたの手で。
ねえ、ご主人様。
小さな私が、力の弱い私が、頑張って頑張って千切り取ったこの頭、
食べちゃっても、いいわよね?
グロい、と思われるが…想像の仕様によっては笑いに転じる可能性もあり得る?
私と呼ばれる存在をあなたならば何で想像されますでしょうか?