力の使い方
遅れてスイマセン。
今回はちょっと凝ってみました。
朝(?)目覚めると外は雨が止んでいたが依然として真っ白だ。
なんだかもやもやしたような、くすぐったいような気分を感じる。
僕は朝食を食べようと思ったが、腹が減っていない。
まぁ精神的に厳しいし仕方ないか。
祐樹を起こしに行こうと祐樹の部屋に入ったが、祐樹はいない。
あいつは確か低血圧だったと思ったけど。もしかして僕が寝すぎたかな。
時計を見渡したが…ない。
気にせずに祐樹を探す。
やっぱりいない。
先にどこか行ったのだろうと思ってはじめに連れてこられた本部のようなところへ行く。
そこで祐樹が食事をしていた。
「早いな祐樹。」
「竜が遅いんだよ!」
「時間わかんないんだからしょうがないだろっ。」
「あー…時計ないよね。何でだろ。」
話しているとき机の上を見るとすごい量の食べ物の残骸らしきものがあった。
「これ…全部1人で食べたの?」
「うん。なんでか分からないけど朝起きて腹が減ってないと思ったけど一応何か食べとこと思って。そしたらなんかそこの料理人がたくさん運んでくれるんだよ!しかも全然腹いっぱいにならないんだよねぇ。」
腹が減らないのは祐樹もか…というかちょっと待て…どこの国でも、どの時代でも無料で快適な空間を作り出してくれる世はないぞ。
「祐樹…その料理人すっごい笑顔だっただろ?」
「え!?よく分かったね!なんで?」
はぁ…コイツは世の中を知らなさすぎる。
一応祐樹に世の中について話してやった。
「え!?じゃあお金いるの!?僕持ってないよ!」
祐樹の声があまりにも大きかった。
すごく大柄な黒人の料理人がすごい形相で出てきて祐樹をつかんだかと思うと……以下略(笑)
今度絶対に払うと約束して死人のような祐樹が席に戻ったとき、アリスが来た。
「おはよ祐樹、竜。」
「おはようございます。あの…いくつか聞きたいことがあるんですが…」
「分かってるわよ。朝クランにあなたたちの心の中を探ってもらったの。だから目覚めが悪かったでしょ。」
あぁ…もやもやした気分はそれのせいだったのか。
向こうのほうにいるクランがこっちを見て笑顔で手をふってくれた。
手を振りつつもやっぱり普通の女の子じゃないんだと心の片隅においておく。
浮気とか絶対できないね。(いいさいいさ!どうせ僕にはこれから先ずっと縁のないことだからね!)
「じゃあ手短にあなたたちの聞きたい事を答えてそのあとで力について話すわ。まずここの空間について説明が足りなかったみたいね。あなたたち朝起きてからおなか減ってないでしょ。ここの空間にいるときはおなかは絶対に空かないのよ。でも満腹にもならない。だからここでの食事は大人で言うタバコやお酒みたいなもの。楽しむためにあるのよ。」
「もっと…もっと早く言ってほしかった…」
ボソッとつぶやいた祐樹。つくづく気の毒だ。
「でも楽しむためにはお金が必要よ。だからクエストでお金を稼ぐの。クエストってものは仕事と考えて結構よ。ここは空間のなかだけど時間の流れは外と変わらないわ。でもこの空間は私のものだから朝とか昼とか夜とか時間はないわ。ただ見かけ上だけ明るかったり暗かったりはするわよ。クエストを受注したいときはクエストボードってところから受注して、私に渡して手続きをすませばいけるの。そのクエストボードは外が昼の時は白、夜は黒になってるから昼間しかできないクエストは白のときに行くってわけ。クエストでお金を稼いだらものを買ったり今まであなたたちが外の世界で使ってたみたいに使えるわ。」
ここで皆さんに質問だ。
祐樹の目の色はどこで変わったでしょうか。
もちろん答えは決まっている。
<お金>と言うことばが出たときだ。
そしてアリスが話し終えるころには<竜!早くクエストへ行こう!>っていいだしそうな輝きに満ちた目でこっちを見ている。
「竜!クエストへ行こう!」
ほらね…
「まぁいいけど報酬金は割り勘だからな。」
「ダメよ。まだ。力の使い方を覚えてからじゃないと。それにクエストって言ってもはじめはタダ同然の金額ではじめるのよ。そしてどんどん強くなって力をつけて名を轟かせるようになってようやくクエストの依頼がくるようになるの。簡単なクエストからD,C,B,A,S,Hとランクがついてるわ。何にしてもはじめは無名からはじめないと。」
祐樹の顔が青ざめてさっきよりひどくなったのは言うまでも…いや、そうでもない。
「じゃあ早く強くなればいいんだろ!竜!頑張ろっ!」
どんだけ前向きなんだよ…
「おう。」
一応相槌を打っておく。もう一つ聞きたいことが…
「あの…いまさらなんだけどアリスも他のみんなも日本語お上手ですね。」
「何言ってるの。あなたたちのほうが英語上手じゃない。」
は…?きょとんとした顔で祐樹と見合わせるとアリスが笑い始めた。
「あははっ。冗談よ。ここのギルドの人で電気を操る人がいるの。その人がここの空間に自分の術をかけたの。その人は本当にすごい人でここの空間にいる人全員の脳内の電気信号の、得に言葉の部分だけをいじってみな理解できる言葉になるようにしたのよ。あなたにとってはみんな日本語を話しているように、私にとってはみんな英語を話しているように感じさせるってこと。」
なぜか懐かしいことを話しているような口ぶりだった。
横では祐樹がいっそう目をきらきらさせていた。
「その人電気を使うんですか!?じゃあ僕もその人みたいになりたい!その人はどういう人なんですか!?」
「スパルっていうんだけど……それより力について説明するから外行くわよ!」
よし!と思って立ち上がったらもう外だった。相変わらず何もない。
「何だこれ!?」
祐樹が声を裏返して驚く。
「あぁ…はじめあなたたちをギルドの中に入れたときも使ったでしょ。この空間の中では私は好きなように動けるのよ。」
すごくうらやましい…
「さて、力についての説明をするとしますか。」
今回ばかりは僕もかなりわくわくしている。
「前も言ったと思うけど力は火、水、風、雷に分かれるわ。ちなみにここの空間でもB空間でも光って力のコアはすごく役に立つの。暗闇で光を持つ人は目が見えなくなることはないの。心の目、心眼って感じのものが使えるのよ。」
あーだからBワールドに入ったとき目が見えたのか。
「術にも属性が同じようにあるわ。術と自分の属性が一致したほうがより強い術がだせるの。私は無と風の属性を持ってるから空間を操る異の術と風を操る術をたくさん身につけてるわ。でも他の属性の術も少しは使えるの。属性が違う分威力は落ちるけどね。」
へー無と風かぁ。ん?異と風?
「自分の属性っていくつあるんですか?」
「人によって代わるけど使いやすい順位はあるわ。」
「じゃあ僕は雷以外に何かありますか!?」
すごい迫力で話しかける。相当興奮しているのだろう。
「ぇえっと…ちょっと待ってね。」
アリスが消えた。1秒…2秒…3…4…
「ゴメンね!この水晶ないと分からないから。」
お早いお帰りで。
「この水晶を手の上にのせて。」
言われたままに手の上に乗せる祐樹。
すると突然祐樹はまばゆい黄色い光に包まれた。
「うわーきれいっ!」
祐樹が感嘆をあげる。
「ホントすごい…」
僕まで感動されてしまう。
「祐樹…あなたすごい珍しいわね。珍しい雷のなかでこれだけ純粋な雷はめったにないわ。まず他の属性の術はまったく使えないでしょうね。でも雷の術はきっと普通の術者の2倍から3倍はあると思うわ…。」
褒められて嬉しそうな祐樹。少し嫉妬してしまう。
「次はあなたね。竜は少し誤解してるからきっと驚くわよ。」
アリスはそういうとにっこりしながら手を突き出した。
そういや昨日も言ってたな。よく意味は分からないが水晶を手のひらに乗せてみる。
すると祐樹のときと同じように…はならなかった。
突如、僕の周りに数え切れないほどのサイコロのような小さいものが現れ、ものすごいスピードで動きだした。
「何これ!?」
その立方体は順調に速度を上げながら上へ上へとあがっていき、竜巻のようになった。
僕の視界はそれしか見えない。外がまったく見えない。
それはだんだんスピードを緩め、終いには僕の周りを漂うだけのミクロほどの四角となった。
ミクロというのはおかしな表現だが、簡単に言うと色しか見えないということだ。
色は…色だけにいろいろ?
「すっげー竜!虹のベールか!?」
「わかんない…」
茶化す祐樹をさらっとかわす。
「アリス…これって?」
「あなたは自分の力が何かわかっていなかったようね。初め、あなたは<消す>という力だと思ってたでしょ?違う?」
「そうですけど…違うんですか?」
戸惑いを隠せない…
「これを見てもまだ分からないの!?この無数の漂っているのは原子よ。あなたの力は消すことじゃないわ。分解し、造り出すことなのよ。分かる?」
「でも…僕たちは鍵のかかっていない部屋とかに入れたんですよ!僕たちの存在を消して壁に認識させないようにして中に入ったんです。」
「それは大間違いよ竜。あなたはあなたと祐樹の細胞一つ一つを原子として分解して、部屋の中で再構築しただけよ。そもそもあなたたちの存在を消したところであなたたちが消えるのは人の記憶の中からだけなのよ。たとえ存在が消えても壁にぶつかるわ。当たり前じゃない。」
確かに……
「異の属性は未知なのよ!書物などに記されている術は使えないけど自分でオリジナルの術を使うことができるの。すばらしいと思わない!?」
そうだ…消すことじゃない、造ることができる…
わくわくは始めの何倍もに膨らんだ。
「それに…」
アリスが何かつぶやいた気がした。
「じゃあそろそろ力の使い方を覚えましょう。そうね…やっぱり術を覚えるのは体で覚えるのが一番ね。私は術のなかで一番シンクロしない雷の術しか使わないから。私に一発でも攻撃を与えたらそこで終了。三十分で空が青くなるようにするから真っ青になるまでに私に攻撃を与えることができなかったらあなたたちの負けよ。ちなみに負けても何もないとか思わないでね。男の子が女の子に負けるなんて恥なんだから。」
そのとおりだ。絶対勝つぞ!
「勝つぞ!祐樹!」
「当たり前じゃん!頑張ろうぜ!」
「始めるわよ!よーい……スタート!」
最後まで読んでくれて有難うございました。
次回予定ではお待ちかねの戦いが入ると思うので楽しみにしていただけたら嬉しいです。