消滅
恐怖を通り過ぎると、笑いがこみ上げてくると言うのは本当だ…
「竜、もう一度さっきのやるから気を引いてて。」
祐樹は勝つ気でいる…
「あら…足に魔力を溜めてるわねぇ…また瞬間的にスピードをあげようとでも考えているのかしら?」
何!?
「不思議そうね。私たちには死んだ同志たちの記憶が流れ込んでくるのよ。」
「祐樹…さっきのは無理そうだな…」
祐樹が悔しそうに頷く。
「もちろん私たちは戦闘の経験値が倍増されるわ。あなたたちが私たちを殺せば殺すほど、私たちは強くなるのよ。」
「祐樹!右だ!」
さっき祐樹の足元から木の尖ったものが突き出た。
とっさに祐樹は避けることが出来たが、ギリギリだ…
「お喋りはあまり好きじゃないのよ。」
「やれやれ…じゃあ殺しましょうか。」
「くっ…」
一斉にかかってきた。
クランとヘレンは身動きできずにいる。
「クラン!ヘレン!一旦ギルドに戻れっ!」
鉄の柵を自分たちの周りに作る。
「い…いやよ…そんなの……あたしも戦うわっ!」
「私も…」
「僕たちに任せて!」
「上は、がら空きねっ!」
上から1体のユニオンが入ってきた。
「ぐ…」
今度は出口の無いドームを形成する。
「こんなもので防げるとでも思うっ!?」
他の5体は柵を壊して向かってくる。
1体のユニオンがドームを破壊しようと棘を放っている。
必死に魔力を注ぎ込んで強度を上げる。
「早く戻るんだ!」
「いやよっ!仲間を見捨てるなんて…」
「そうよっ!」
ユニオンは攻撃を続けている。
「いいから戻れ!」
なんと声を張り上げたのは祐樹だった。
そして、優しい口調で言った。
「ここは僕たちがなんとかするから、戻って。大丈夫、僕たちは死なないから。」
「それならあなたたちも…」
「僕たちが戻ったら紅界が解けるからダメだ…」
そういうと、彼女たちの体が薄くなっていった。
「何で!?何でよクラン!?あたしはまだ戦うわ!」
「ヘレン!」
クランは強い口調で言った。
「ぐ…早く……」
もうドームも壊れそうだ…
「ほらほらぁ!いつまでそうやってやってるつもりよっ!」
依然として攻撃は止まない。
「ここは任せるのよ。私たちがいても足手まといだわ…」
もう彼女たちの姿はほとんど見えない。
「ありがとう。信じてくれて…僕たちは絶対大丈夫だから…」
「絶対に…死なないでね…」
そういって彼女たちは消えた。
「そろそろ限界だ…」
「あと少し絶えて!」
祐樹は足に魔力を溜めているようだ。
「ゴメン…もう…無理…」
ドームが壊れた。
同時に、祐樹が僕を抱えて飛ぶ。
「…助かっ…」
「助かってないわ。」
ドカンッ!
「うわっ!」
後ろから吹き飛ばされる。
直撃ではなかったが、痛い。
「敵は1人じゃないわよ。」
うっ…。
「ぐあっ…」
祐樹が後ろからムチで打たれた。
「祐樹っ!」
「2人、逃がしちゃったわね…あなたたちは…逃げないの?」
祐樹がふふっと笑う。
「お前たちなんかが相手で、逃げるわけないじゃん…」
ドカンッ!
今度はムチで周りの壊れたコンクリート類を投げつける…
オレは祐樹を抱えて下がった。
「口だけは達者なようね。」
火に油をそそいだようだ…
「どんな状況か分かっているのかしら?」
オレたちの前には5体が横一列に並んでいる。
「分かってるさ。オレたちが有利だってことだろ。」
オレは魔力がまだ結構残っている。
祐樹は…そうでもなさそうだ。
「その口、二度と叩けないようにしてやるわ。」
5体がオレたちの周りを囲む。
頼む……
「終わりね。さようなら。」
「死んでたまるか!」
辺りが静まり返った。
すっと5体が消える…
何が起こったか分からない…
「…竜…何したの?」
「こんなに……」
「竜…?」
自分でも驚いた…
「体全体から魔力を放出したんだ…そしたら…」
「一瞬で消えた…」
たじろいでいる場合ではない。
「一旦、帰るぞ…」
オレは心の中で<入る>と念じた。
最後まで読んでくださり、有難うございました。
前回の最後という漢字、間違ってました。すいません。
これからも戦闘続きです。どうぞこれからもよろしくお願いします。