絶体絶命
はぁ…はぁ、
「うっ…」
腕に激痛が走る。
「きゃぁっ!」
「何よ、この子達。まったく相手にならないじゃない…」
クランが足を捕まれて宙吊りにされる。
「ぐ………はぁ!」
ヘレンは血の滴り落ちる腕で必死に雷球を放つ。
「こんな死に損ないの攻撃食らうものですか。」
片手で弾かれる。
「まさか…ユニオンが相手なんて……」
絶体絶命の状態だ。
「ヘレンは強いのよ…私さえ…私さえ足を引っ張らなければ…」
「ほぅ…よく分かってるじゃないの。じゃあ死んどく?」
そのとき、クランの足から輝きが放たれた。
「っきゃ…何よこれっ!」
「クランっ!?」
「大丈夫よヘレン。私がやったんだから。」
ヘレンは唖然としている。
「私ね、いつもいつもヘレンにばかり迷惑をかけて嫌だと思ったの。竜を見て思ったわ。私が変わらなきゃダメだって。」
「クラン……」
「だから一番シンクロ値が高い無の属性で、オリジナルではなく、故人の残していった術を身につけたの。」
「それは…それは何だ!?」
まだクランの足は輝き続けている。
「そんなこと知る前に、あなたは光の速さで死んでくわ。」
クランが消えたと同時に、ユニオンは真っ二つとなっていた。
クランの手には風刀が握られている。
目で追いつくことが出来ないスピードだ。
ヘレンの元へ歩いていく。
「それは一体…何?」
ヘレンは愕然としている。
「これは光の靴よ。光の速さで移動できるようになるわ。でも……」
クランが途中でへなへなと座り込む。
「クラン!?」
「大丈夫…この術は、相応の体力と魔力を使うの。だからあんなやつには使いたくなかった…もっと修行しないと、多用は…ダメね…」
息を切らして話す。
「心配させないでよ……でも借りが出来ちゃったわね。」
にこっとするヘレン。
「私が受けた借りはこんなものじゃないわ。これからもっとしっかり返していくんだから…」
ヘレンが魔力を察知した。
「また…何か来るわ!」
「大丈夫よ…こっちに向かってるコアは光…どんなに離れてても、どんなに小さくても光のコアは目立つのよ。闇の中の灯みたいにね…」
くっそ……
もっと早く、もっと早く。
「竜っ!早く!」
「分かってる!」
祐樹は魔力のコントロールがうまい。
悔しいが、ついていくので精一杯だ…
「いた!」
すぐに地上に降り立つ。
足場が安定したところに立つのはすごく楽だ。
「ヘレン!腕、また怪我したの!?大丈夫!?」
すぐさま駆け寄るが、祐樹ほど気の利いた言葉はかけれない。
言葉より先にヘレンの腕を治す。
祐樹はさっきから心配してばかりだ。
「怪我…ひどいね…」
「クランに助けられたのよ…」
それにはオレがびっくりした。
「すごいな…オレとは大違いだ……」
「そんなことないわ。私が変われたのは竜のおかげだもの。」
にこっとしたが、顔が引きつっているのが分かる。
「足、怪我してるじゃないか!」
すぐに治そうとする。
「ダメよ!」
え…びっくりした。こんなに拒否されるとは思わなかった。
「私の回復に魔力を使って、いざという時に使えなかったらどうするの!?」
「仲間を助けるほうが大切だ。」
きっぱりと言うと、おとなしくなった。
「こんなの擦り傷だから大丈夫なのに…」
絶対に嘘だ。足に青アザが出来ている。
表面だけを分解してもダメそうだ。
「ゴメン、足を全部を分解するからちょっと驚くかも…動かないでね。」
すぐにクランの足がなくなる。
「っきゃ…」
「大丈夫、竜を信じてっ!」
祐樹がいい所でフォローしてくれる。
足を形成する。うん、元通りだ。
「ありがとう…でも魔力が…」
「大丈夫だって。オレ魔力多いほうらしいからっ!」
「本当にありがとう。」
交互に2人から感謝される。
こういうときは祐樹は決まってすねるんだよなぁ…
立場的に苦しくなる…
「竜、この辺の薔薇も無くなったことだし、配属場所に戻らないと。」
「うん。行くか…」
そのとき、嫌な悪寒がした。
「どうしたの?」
「来る…」
「どうしたの竜?私たちもう大丈夫よ。」
2人とも首をかしげている。
「違う、何かが、来る!」
ばっばっばっ…
囲まれた。
「おやおや…感のいい子ねぇ…」
どうやら修行で身に付いたのは魔力を察知することみたいだ。
みんなは気づかなかった…
「せっかくコイツらが行ったら女の子2人を料理してあげようと思ったのに…」
「大丈夫よ。どうせみんな死ぬんだし。」
どうしようもできず、会話を聞くことしか出来なかった。
「さて、ここで4人消して、私たちも昇格ね。」
何が起きてるんだ…
「めんどくさいから…抵抗しないでね。」
冗談じゃない…ユニオンが5体なんて…
最期まで読んでくださり、有難うございました。
竜たちは5体ものユニオンを倒せるのでしょうか?
次回をお楽しみに。