おいしくない…
翌日…
ここで寝るのは3回目くらいだが、毎回のことながら違和感を感じていた。
それが今回ようやく分かった。
多分、寝ている時間が常に一定だ。
なぜ余計なことに気がつくのだ…
起きてぼ…オレの部屋から出たが、祐樹はやっぱり居ない。
寝ているのだろうか?
シャワーを浴び、ロビーへ行くと、いつもどおりアリスがいた。
「準備はいい?」
「もちろん。」
そう答えたころには外だった。
「さて、はじめるわよ!」
アリスは一体いつ寝ているのだろう…
「今日は何をするんですか?」
「決まってるじゃない!昨日と同じよ。」
またか…
3時間ほど練習して、やっと少し制御できるようになった…
「よし、じゃあ今日は終わりね。」
「ぇ!?もうですか!?」
「1日3時間までにしとかなきゃ体壊すわよ。」
気使ってくれてるんだ。
「また明日お願いします。」
本部に戻った。
なんかこれから暇だな…
1人で行けそうなクエストでも行ってみよう。
「ふぁあ〜…」
目覚めると、竜はいなかった。
「ん〜…修行でもしてるのかな?」
この忌々しい傷さえ早く治ってくれればいいのに…
さすがに2日連続でクランのとこ押しかけると迷惑だよなぁ…
今日は部屋でおとなしくしていよう。
クエストボードを眺めながら一人で行けそうなクエストを探す。
これならいけそうだ。
ランクD
<依頼内容>
私、イノシシ汁を食べたくなってしまいました。
しかし、イノシシは怖くて狩れません。
どうかイノシシ狩りを手伝ってください。
契約金 200F
報酬金 1500F
感謝金 契約金×2 + いっしょにイノシシ汁を食べましょう。
イノシシ汁というものが食べられるかどうかは置いておいて、イノシシの討伐だけだな。
簡単そうだ。
「こんにちは。用件は?」
机が話しかけてくる。
「クエストに行きたいんだけど。」
「かしこまりました。」
場所は…どこだ?
日本じゃなさそうだ。
「アリス…は…いないな…」
周りを見渡す。
「すいません。これってどこですか?」
目の前にいたリリーに聞く。
「まぁどこでもいいんじゃない?」
なっ…何て適当な…
「はいこれ。」
渡されたブレスレットは、前にもらったブレスレットとは色が違った。
「タッグで行くときと個人で行くときは色が違うのよ。他は変わらないから安心して。」
「言葉…通じなかったらどうしましょう。」
「そのブレスレットが翻訳してくれるわ。」
おぉ。便利なものだ。
「ありがとうございました。」
次に、ここと反対側に歩いていく。
「すいません。クエストに行くのでむこうの世界のお金受け取りたいんですけど…」
「ランクは何かね?」
知らないおじさんが応えてくれた。
「Dランクです。」
机の中をがさがさと探している。
「はいよ。」
一万円札が渡された。
「ありがとうございました。」
よし行くか。
<出る>
心の中で念じた。
体が軽くなった。
着いたのは…山奥?
「やぁ、待っていたよ。早速だが、イノシシを狩りに行こう!」
「はい。」
早速イノシシを発見。
「ぎゃぁあああ!」
何!?依頼主が僕の後ろに隠れよったぞ!
「仕方ない、修行の成果を見せてやる!」
床に手を向けて、細い糸をイメージする。
「ぎゃあぁあ!来る!来る!」
「え?」
バコーン!
「いってぇ!」
「ちょっと!何やってるんですか!?早くたおしてくださいよっ!」
術の発動までに時間がかかりすぎるなぁ…
次はそこを練習しよう。
「失礼ですが、あなたのその背中の銃をお借りしてもよろしいですか?」
「いいよいいよ!早くしてくれ!」
イノシシがこちらを見て、走る構えをしている。
さて、
「この銃ってどうやって使うのですか?」
オレは世の中じゃまともに生きてきたほうだ。
無論、使い方など知るはずがない。
「ぎゃー来るっ来る!」
「早く使い方を教えてください!」
「貸して!」
依頼人は逃げながら銃を構える。
ドカーーーン!
見事に腹に命中する。
何発か打ちまくる。
イノシシが動かなくなった。
「おめでとうございますっ!」
「なっ何言ってるんだ!?君は結局何もしてくれていないじゃないかっ!」
泣きながら叫びまくる。
「そうですね。でもこれで、これからいつでもイノシシ汁が食べられるじゃないですかっ!」
多分オレの笑顔は、そこで喚いている人にとって悪魔に見えたことだろう。
その後、彼の家へ行ってイノシシ汁を食べたが、微妙だった。
「ありがとうございました。」
帰り際に、キーを渡してきたが受け取るのを拒んだ。
だって何もしてないし、自分の力の弱点が分かったからそれだけで十分だ。
<入る>
心の中で念じると、体が軽くなる。
ついたのはいつもと変わらないロビーだった。
読んでくださり、ありがとうございました。
今回はのほほんとした感じの雰囲気を漂わせてみました。