前向きに…
眩しい日差しで目が覚めた。
雨は止んでいたが、外は薄暗い。
僕は昨日はそのまま寝てしまったので、シャワーを浴びることにした。
久しぶりだったこともあって、とても気持ちが良かった。
「竜、早いね。おはよっ。」
「おはよ。起きて大丈夫か?」
「見た目はもう普通で傷跡も残りそうにないけど、火傷したような痛みがある…」
思わず心配になる。
「でも昨日よりは全然大丈夫だよ!」
僕を気遣ってることはすぐに分かるようなセリフだ。
「そうか。今はゆっくり休めよ!」
一応心遣いは受け取っておこう。
キッチンへ行き、パンのトーストを食べたら部屋を出る。
「祐樹はちゃんと休めよ!」
祐樹はおとなしく部屋に戻る。
ホントに痛そうだ…看病してやりたい。
でも僕にはやらなければいけないことがある。
その前に本部へ行き、クエストの報告をしなければ。
行く途中、クランに会った。
しかし挨拶を交わしただけだった。
くっそ〜もっと社交的だったら……
そんなことを考えていたら本部に着いた。
朝早いというのにみんなにぎやかだ。
ん?待てよ。
僕たちは帰ってきたときを夜として僕は考えてるけどここは時間は無いんだった。
僕たちが帰ったころに起きた人からすればもう夕方くらいなんだ。
どうでもいいか。
クエストボードの隣の机へ向かう。
「こんにちは。用件は?」
机が喋った…便利な世の中になったものだ。
「クエスト達成の報告です。」
「キーを挿入してください。」
キー?
「キーって言うのはクエスト達成時に依頼主からもらった透明のカードのことよ。」
振り返ると、知らない人が立っていた。
不思議そうにしているとあわてたように付け加えた。
「あっ…ゴメンね。私はリリーよ。クエスト管理人の仕事をしてるの。」
リリーさんか。
「ありがとうございます。」
僕はカード…じゃなかった…キーを指定されたところに差し込む。
ピーと言う音がして、透明なキーが真っ白になって出てきた。
「何ですか?これ。」
「それは自分のクエストの達成したって言う証拠よ。簡単に言えば勲章みたいなもの。たくさん持ってると自慢できるでしょ。」
そういって笑うと机に座った。
「まったく…アリスったら少しは自分で掃除してよね〜。」
愚痴をこぼすリリー。
「あの…あとどうすればいいですか?」
「待って。今やってるところよ。」
リリーはPC(?)を打っている。
「よし終わり。はいこれ。」
渡されたのは変な紙だった。
そこには
報酬金 80000F
感謝金 20000F
と書かれている。
「すいません。これ間違いじゃないですか?」
「間違いじゃないわよ。あなたたちがクエストへ行った後でクエストがBランクになったから報酬金とかも上がったのよ。」
そういやそんなこと言ってたっけ。祐樹きっと喜ぶだろうな。
「その紙を誰かに渡せば換金できるわ。」
は?
「それってどういうことですか?」
「ここのお金はギルドの中でしか使えないのよ。だからここからお金が出て行くことが無いから、このギルドの中の総額は変わらないの。その紙を誰かに渡せばお金に換えてもらえるし、その変えてもらった人も誰かに渡せば換金できる。その紙は簡単に言えば利子がつかない貯金ってとこかしらねぇ。」
「ここの中でしか使えなかったら、外の世界に出たときはどうするんですか?」
「あれ?もしかして知らないままクエストに行ったの?」
なんか小ばかにされた気分だ。
「クエストに合わせて食事代とか宿泊費とかは向こうの受付でもらえるわよ?」
もっと早く言ってもらいたかった。
もしも安部さんが僕たちにお金をくれなかったら飢え死にしてたというのに…
勝手に深いため息が出た。
「クエストの報告はどこですればいいんですか?」
リリーはびっくりしたようだった。
「あなた真面目ねぇ…したければアリスにしてきて。全部話しても、話さなくても、どういう風でもいいのよ。」
適当だなぁ。
「ありがとうございました。」
僕はアリスのところへ向かう。
「あっ竜。よく眠れた?」
「はい。クエストの報告に来ました。」
僕はクエストであったことをすべて話した。
話がベインのところに差し掛かったとき、アリスが声をあげた。
「ベインに会ったの!?」
動揺しているのが分かる。
「祐樹はベインにやられたのね…」
「でも…どちらかと言うと助けられたんです…」
アリスがよく分からないという顔をしている。
「僕たちは…もしベインが来なかったら死んでたと思います…」
「それは結果であって、あいつの目的じゃないわ。」
なぜか、悔しそうで、哀しそうで、懐かしそうな気持ちが伝わった。
「あいつは…絶対に自分のために動いている…そうじゃなくても、祐樹をあんな目にあわせたからには絶対に許さない。」
それも含め、世界壊滅を阻止せねば…
「いつか絶対に仕返ししてやるわ。」
「僕も絶対に祐樹の敵を討つ!」
多分祐樹がここにいたら<僕まだ死んでないけど!>って言われそうだな。
「そうね。」
アリスの顔が穏やかになった。
「それでアリスに頼みがあるんだけど…」
「分かってるわよ。強く、なりたいんでしょ?」
僕は自分の顔が緩んでくるのが分かる。
「いいわ。本当はクエストで力をつけるんだけどね。」
「お願いします。」
「そんなに畏まらなくてもいいわよ。なんか竜、帰ってきてからずっと堅いわよ?」
みんなにはそうやって映ってるのか。
「つらいのは分かるけど、引きずっちゃダメなの。もっと強気になって!」
「強気ですか…どうやって?」
「そんなの自分で見つけなさいよ!それが難しかったらまず自分のこと<僕>じゃなくて<オレ>とでも呼びなさいっ!」
なんか躾けられている感じがする…
「オレ…ですか。」
なんかむず痒いと言うか恥ずかしい…
「そうそう!あとは自分次第よ!」
そりゃそうだな。よし、強くなればこんな思いしなくていいんだ!
強く、強く。
「じゃあ行くわよ。」
「は…」
返事をするまでに外に来ていた。アリスの力はいいなぁ…
「聞きたい事があるんだけど…」
「手短にお願いね。早く修行に励みたいから。」
僕は頷いて話し始めた。
「昨日のクエストで、戦闘が始まったときに周りが黒ずんだ紅のような色で包まれて、みんな動かなくなったんです…あれって何ですか?」
「あれは紅界よ。紅界を張ると、現実の時間と切り離されるの。そこで物とかが壊れても紅界を解けばすべて元に戻るわ。紅界にかかっていなかったところはベインがサービスで直してくれたのよ。」
そのままにしておいたほうがベインにとって都合が良いのではないのか?
聞いたら、ベインの目的は世の中を乱すことじゃないわ。と言われた…
ベインはなんで世界壊滅を望んでいるんだろう。
「あと、なんか風の球みたいな術のことベインは風球って呼んでたんだけど…」
「あぁそれは術の名前よ。雷の球とかは雷球、火の玉は火球、水の球は水球って言うの。」
ちなみに水球というのは言うまでも無く、競技ではない。
「私があなたたちと戦ったときに出した剣のようなものは、雷刀よ。他も○刀で術の名前は統一されているわ。」
術にも名前ってあるんだ。
「他の術はオリジナルとかが多いから名前はそれぞれ違うの。もちろん一緒のもあるけど、そんなの話してたら日が暮れるわ。そんなことよりさっさと修行するわよ!」
「はい!…でもどうやって。」
「まずあなたは術について知らなさ過ぎるからそれを教えなきゃね。」
なんだか長くなりそうだ…
スイマセン。
無の属性と異の術についてかけませんでした。
次こそ書きます。