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得たもの

世界が…動き出した。

ベインがやったのかどうかはわからない。

先ほど壊れた屋敷は元に戻っていた。

そして、僕たちはその屋敷の庭に倒れていた。

「ゆ…祐樹っ!」

依然として返事がない…

早く治療しないと…まずい…

<入る>

そう心の中で念じた。

体がふわっと軽くなり、着いたのは本部のロビーだった。

「竜!祐樹!」

アリスが真っ先に声をかけてくる。

「アリス、祐樹が…祐樹が!」

「ヘアリー!来て!」

アリスが叫ぶと、女の子がこちらへきた。

「うわっ…ひどい傷…」

そういってその子が手をかざすと緑色の光が傷を包んだ。

「ヘアリーはね、傷を治すことができる異の術を使える子なの。」

無の属性は少ないって言ってなかったか?

まぁ今はどうだっていい。

「それより…祐樹は治るんですか!?」

「大丈夫、そんなに焦らないで。今ヘアリーが頑張ってるでしょ。仲間を信じなさい。」

そうか…彼女を信じよう。

祐樹の傷が少しずつ治っていく。

「うぅっ…」

「祐樹!?」

アリスも僕もほっとする。

「よかったわ…」

そういうとアリスは立ち上がった。

「ゴメンなさい。あなたたちがクエストに行ったあとで依頼主から連絡がきたの。Bランクに変更してほしいって。クエストの危険性を見抜けなかった私のミスだわ…ゴメンなさい…」

アリスは責任を感じているようだった。

「アリス、大丈夫。竜も気にしなくていいよ。僕は大丈夫だから。」

振り返ると、祐樹が起き上がっていた。

「目に見える傷なら全然平気だよ。見えない傷のほうがずっと苦しくて痛い…だから責任感じないでねっ。」

祐樹は無理して作った笑顔を見せた。

苦しい…きっとアリスも同じだろう。

アリスのうしろ姿を見ると、泣いているようだった。

「ともかく、死ななくて何よりだわ。これからはこんなミス絶対に起こさないから…」

それだけ言って歩いていった。

「祐樹、ホントに大丈夫か?」

「うん。少しの間はクエストいけないかもしれないけど…」

悲しそうだった…

「大丈夫。クエストに行くことより祐樹の体のほうが大切だ。」

「ありがとう。」

「あなたも人の心配してるけど、休まないとダメよ。」

へアリーが言う。

「そうだね。心配してくれてありがと…」

僕は立ち上がる。

「祐樹、歩けるようになったら来いよ。」

「うん。」

自分の部屋に向かう。

部屋に入るとソファーに腰をかける。

弱くて、情けない…仲間が頑張ってても何一つできない。

悲しかった。

もう嫌だ…

何分かぼーっとしていたら、急に部屋をノックされた。

「祐樹?早いな。」

ドアを開けると祐樹ではなく、クランだった。

「入ってもいい?」

「あ…うん。いいよ。」

2人ともソファーに座る。

「初めてのクエスト、達成おめでとう。」

にっこりとした顔はすごくかわいかった。

「ありがとう…でも…」

うつむいたまま何も話すことができなくなった。

「分かってるわよ。あなたの気持ち。」

あ…そうだった…恥ずかしいな。

顔を上げると紅いきれいな目と目が合った。

「そういえばカラーコンタクトしてるの?」

「してないわよ。私、術を使うと目の色が蒼になるのよ。普通は紅よ。」

クランはまた、にっこりした。

「じゃあなんで僕の気持ち…」

「分かるわよ…そんなの。心を読まなくたって。」

そりゃそうか…僕のせいで祐樹は…

「私も同じだもの…」

「えっ?」

「私の能力は心を読むことでしょ。もしクエストの中で戦闘が起こっても、私はたいした術が使えないから自分を守るだけで精一杯。でもヘレンは私を助けてくれる。助けられるのはいつも私で傷つくのはヘレンばっか……」

クランは泣きそうだった。

「あなたもそうなんでしょ?」

言葉が出なかった。

「傷つくのはヘレンばっかで責任感じてるのに、ヘレンはいつも私に責任感じなくていいって言うのよ?いつもいつも助けられてばっかで、感謝しきれないのに、タッグだから助けるのは当たり前だって言うのよ?いつも攻撃されそうになると、私の前に立って敵の攻撃を自分の体で防いでぼろぼろになるのよ?私はそんな背中見てるだけ…あなたもそうなら…苦しいわよね…」

クランは泣いていた。

「僕も…同じ…祐樹は助けてくれるばっかで、僕は何もできない。自分の非力さに腹が立つけど何もできない…弱いくせに意地ばっかり張って、心の中で祐樹馬鹿にしてるのに、いざとなると、あいつのほうがずっと頑張ってる。祐樹が僕に指示を出して、僕は動くだけ。クエストが始まったときからふざけたことしてるとか思っても、あとになったら、それが大切になってく。僕は何一つとして役に立ってない…」

僕も泣きそうだった…でも女の子の前で泣いたら男じゃない…

あぁまた僕って意地張ってるよ…

「強く、なりましょ…泣かなくていいように、誰も傷つかなくていいように。」

クランは涙を拭いて笑って見せた。

彼女の笑顔のおかげで笑顔になれる。

「うん。」

「強くなってくれるのは嬉しいけど勘違いしないでねっ!」

突然声がしたのでびっくりしてドアのほうを見る。

祐樹がいた。

「ゴメンねっ。盗み聞きしちゃった。」

「どこから?」

「全部!」

無邪気な祐樹。全部聞かれてたなんて恥ずかしい。

下をうつむいている僕に向かって祐樹が話しはじめた。

「竜、僕言ったじゃん。タッグだから助けるのは当たり前だって。それもあるけど、もっと大きなものがあるんだ。」

僕のほうを見てにっこりする。

「竜が弱いから助けるんじゃないよ。僕も竜と一緒だよ。誰かが傷つくのが見たくないから助けるんだ。それに竜は役に立ってないなんてことは絶対ないからね!いるだけで、そこに居てくれるだけで役に立てることだってあるんだよ。守りたい、助けたい、協力して勝ちたい、って気持ちがあるから頑張れるんだ。」

思わず泣きそうになったが…我慢…

「今までの2回はたまたま僕のほうが運がよかっただけだよ。竜も同じ気持ちなら、次は助けられるかもしれないね。助け合って頑張ろっ!」

やっと分かった。どんなにコイツが馬鹿やってても、ウザくても、何やってもコイツと一緒に居るか。コイツが居てくれるから僕がいられる。コイツの優しさに僕は助けられる。

「ありがとう。」

涙はでなかったが、代わりに感謝の気持ちが言葉に表れた。

「ヘレンも同じ気持ちかなぁ…」

クランは嬉しそうだった。


「ありがとね。励ますつもりが、励まされちゃった。」

「こっちこそありがと。」

クランは出て行った。

出て行くときに

「私たちの部屋は0805室だけどアリスに頼んで近くの部屋に移動させてもらうから遊びに来てね!」

と言っていた。今度お礼を言いにいかなければ。

今日は疲れたから、クエストの報告とかは明日にしよう。

自分の部屋の前で立ち止まる。

「祐樹、今度は助けられないように強くなるからな!」

そういうとすぐに自分の部屋のほうへ入った。

祐樹も自分の部屋に入った。

窓の外を見ると雲は無いのに雨が降っていた。


ご朗読有難うございました。

とうとう初クエストが終了です。

竜と祐樹は大きな何かを得ることができたと思います。

次回は無の属性と異の術がごちゃごちゃになってると思うので、そこを踏まえて、竜の修行に付き合っていただきます。

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