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すべての序章

僕は海が何より嫌いだ…

それは僕が、僕の不思議な力を物語っているようだから…


僕は神田竜(かんだりゅう)

ごく普通のありきたりな人生を歩んでいる。

ある一点を除いて…

「おーい竜っ!」

朝一で声をかけてきたのはクラスメートの半田祐樹(はんだゆうき)

こいつは口数の少ないオレに唯一話しかけてくるやつだ。

「昨日のテストどうだったっ!?」

いつも通りうっとうしいテンションで話しかけてくる。

「別に。」

「何それ!朝からそんなんじゃ一日は始まらないよ!」

はぁ…

仕方なくいつもの場所へ向かうとする。

いつもの場所というのは僕たちが「基地」と呼んでいるところだ。

基地といってもたいした場所ではない。むしろ基地という表現は間違っている。

ただの教室だ。といっても普通の人では入ることができないような使われていない鍵のかかった教室だ。

「はやくしてねっ」

「はいはい…」

もちろん僕は鍵など持ってはいない。

(職員室から借りてくる勇気があればもっと社交的だろう。)

ではどう開けるのだって?

僕にはなぜか特別な力がある。物心ついたころには使えるようになっていた。

神に愛されてなのか、神に嫌われてなのかはわからない。僕が思うには嫌われてだと思うが…

開けるという言葉には少々結びつきにくいと思うが、僕の特別な力とは「消す」ということだ。

消すと一概に言っても僕には使い方がいまいちわからない。というかあまり使いたくない。

なぜかって?消すということはその気になれば人でさえ消すことができる。

そんな恐ろしい力を僕が持っているとみんなが知ったらどうなるだろうか…

考えただけでも恐ろしい……少し話がそれてしまったね。

さて、消すというのがなぜ扉を開けるのにつながるか。

「はやくしてって!先生来るよ!」

祐樹がせかすので手短にしよう。

僕と祐樹の存在を一時的に消すのだ。

手を祐樹と僕にかざす。

僕たちはもうほぼ色だけになった。

一時的に消すことで扉は僕たちを認識せず(もちろん扉には自我はないわけだが)とおりぬけるということだ。

かなり非科学的かつ理解不能だがその辺は勘弁してほしい。

僕だってどうしてこうなるかわからない。

どうにかして自分に納得のいく説明をしようと思ったらその考えに至った。

まぁこんな力どうでもいいんだけどね。

基地へ入ると僕たちの体は元に戻っていく。

「ふぅ…何度やってもなれないや」

「こんなこと普通じゃありえないしな」

そうだ肝心なことを忘れていた。

なぜ祐樹が僕の力を知っているかということだ。

それは簡単。彼も不思議な力の持ち主だからだ。

しかし今は関係ないので伏せておこう。

ここの教室は使われていない上にたくさんのものが大量におかれているため僕たちがいることはベランダの窓からはおろか、廊下側のドアにつけられた小窓からさえ見えない。

そのためこの教室は僕たちがほぼ私物化している。

祐樹はゲーム、漫画、勉強道具などを持ち込んでいる。

(ここにいるということは言うまでもないが、授業をサボっているわけだが勉強道具を持ちこむのはなぜだろう…)

それにくらべ僕はノートパソコン一台のみ。

素っ気無いようだが案外暇つぶしにはなる。

「なんか楽しいことないかなぁ。」

祐樹がつぶやく。

「お前は毎日が楽しいだろ。」

「うん!」

即答で返ってくる返事。

祐樹は気楽でいいよ…

PCをカチャカチャやっていると掲示板があった。

特に興味をそそられたわけではないのだがなんとなくクリックしてみる。

いくつかのスレッドを見ていると不思議なものが目に入った。

「あなたの潜在能力はなんですか?だって!」

突然祐樹の声がして驚いて振り返ると後ろから祐樹が覗き込んでいた。

「これって僕たちの力のことじゃないのっ?」

ふざけた感じで話しかけてくる祐樹が勝手にクリック。

するといきなり画面が真っ暗になっていろんなウィンドウが開いたり閉じたり警告の表示が出っぱなしになったり…終いにはフリーズしてしまった。

「あらら……」

「これ何かわかるか祐樹クン?」

妙に優しい口調で問いかける。

「えっと…ウイルス…?」

「ざっつらいとだよ…」

この後は言うまでもない。

「ったく…」

「いってぇ〜…竜パンチ強すぎ…」

「何か言ったか?」

「何でもございません…」

PCどうするんだよと思いつつも、もう一度電源を入れてみる。

なんとPCが直ってる!んなわけないだろ…と一人で心の中でノリ突っ込みを入れてみる。

やはりダメだ。

もう一度…ダメだ。

あきらめようと思ったとき突然PCがついた。

「え!?」

「僕の力忘れたの?」

少し驚愕する僕に珍しく落ち着いた口調で祐樹が話しかけてくる。

そうか…

祐樹の力は電気だ。

こいつもオレと同じように危ない力だが、使おうと思えば簡単に制御できる(らしい)。

「どうしてPCが直ったのでしょう?」

祐樹が自慢げに聞いてくる。悔しいながらも返答する。

「祐樹が電気をPCに送り込んでウイルスだけを指定して除去したんだろ。」

「ざっつらいとだよ。ざっつらいとって言葉悪くないね。今度使ってみるよ。」

嫌味のように繰り返す祐樹。

元をただせば祐樹、お前のせいだぞ。

心の中で愚痴をこぼすのが(聞こえるはずがないが)聞こえたのか祐樹が言う。

「PC壊しかけたのは悪かったよ。ごめん…でもさっきのスレッド変だったよ。」

「さっきのスレッドがなんだって言うん…」

なにかおかしい。

「祐樹、なにか静かすぎないか?」

「そう思う。」

「さっきのスレッドに今みたいになるように仕掛けがされてたってことか…」

「多分そう。」

なんでこいつはいつもうるさいのにこういう時はこんなにも静かなんだ?

「というかなんか暗くなってきてないか?」

「いや、もうここの教室以外は暗黒と呼べる状態になってるよ」

後ろを振り返ったがもう遅い。

この教室も暗黒に染まった。

「何が起こってるんだ?」

「わからない。」

そりゃそうだろうな。

「でも竜!……なんだかわくわくしないか!?」

ったく…どういう状況かもわからないのにわくわくとはぬかしたやつだとつくづく思う。

「どういう状況かわかってるのか?」

「全然。」

ふざけるな!という思いは声にはだせずに呆れ返ってしまった。


大切なお時間を使い、最後までご朗読してくださり本当に有難うございました。

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