転移
現在、俺はもの凄く居心地の悪い状況にあった。
神宮寺と姫様、爺さんに囲まれ、クラスメート達は俺を射殺すように睨んでいる。
もう泣きたかった。
「私の名前はクワトロ・レムリアと言います。レムリアと呼んで欲しいですわ」
「あ、帰ったら美味しい和食でも食べに行こうね。どうせこんなところに和食なんてないだろうし」
「姫様に手を出したら勇者様と言えど容赦はしませんぞ」
「わーったから黙ってろ!」
そんな胃の痛い状況に置かれながら歩くこと数分。
森が切り拓かれ、広場になっているところに出くわした。
広場には大きな六芒星の陣が敷かれている。
これが転移陣だろう。
「こちらが転移陣になります」
俺の予想通り姫様が言った。
六芒星の上に俺たちは歩いて行く。
爺さんが呪文を唱え始める。
「我が心の故郷へ、軌跡を描き給え。転移」
瞬間、その場で見えた景色が歪んだ。
臓腑の浮く感覚を一瞬だけ体感する。
気づいた時は景色が変わっていた。
大きな噴水に美しい木々。ここはどうやら庭らしい。
目の前には赤を基調とした大きな城が存在感を放っていた。
姫様が陣から飛び出て、皆へと歓迎するように言う。
「皆様、ここが我が城――ラッド城です!」