どうしてこうなった
石牢から出ると鬱蒼と茂る森が目の前に広がっていた。
「少し歩くと転移陣があるのでそこまで歩きます」
姫様がそう言いながら森の中に入って行く。
俺たちもその後に続いて森の中に。
歩いて一分ほど経ったその時、草陰から熊の身体に羽が生えた生物が現れた。
あ、これがモンスターってやつ? それとも魔族?
モンスターが鋭い爪を振るって姫様を狙う。
皆の表情が驚きに染まる。助けるという選択肢が出て来ないようだった。
「ちっ」
足に力を込めて、一気に吐き出す。
風景が一瞬で流れていき、モンスターへと到達する。
そのまま拳をモンスターの顔面へとぶちかました。
モンスターは木々をへし折りながら吹っ飛んでいく。
ちらりと後ろを見る。
姫様が呆然とした表情を唐突に変えた。
目に涙を溜め、俺にタックルをかましてきた。
「うおうっ!?」
避けた。
姫様が草陰へとフルダイブ。
「ひ、姫様ぁあああああああああああッ!?」
「……普通避ける?」
爺さんの発狂とクラスメートである女の唖然としたセリフが聞こえた。
「ほら、いきなりだったから」
草陰からゆらりと姫様が立ち上がる。
「私、ここまで邪険に扱われたのは初めてです……」
ぽっと頬が染まっている……ような気がする。
「私の命を助けてくれて、おまけに初めてまで奪われてしまいました」
「あの? その発言はちょっと危ないですよ?」
俺が柔らかいツッコミを入れる。
男どもの視線が凄く痛い。
視線だけで分かる。死ねと言われていることが。
姫様はぎゅんと俺の横まで高速移動し、流れるような動きで腕を組んできた。
俺は姫様の高速移動に舌を巻く。
おそらく魔法だろうが、ステータス魔王超えの俺が反応できなかった。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 姫様、勝手に私のクラスメートに手を出さないで貰いたいんですけど」
神宮寺が毅然とした態度で文句をぶつける。
「そ、そうですぞ! 姫様にはもう許婚が……」
「だから嫁ぐ気はありません。私は愛に生きるのです!」
「どうせ魔王を倒せば帰れるんでしょう!? 黒羽に手を出しても待ってるのは別れだけですよ!?」
「教主はそう言っていますが、何か方法があるかもしれません。そもそもどうやって帰るのかも定かではないのですから」
爺さん、美少女、ブロンド美少女が三人俺のことで喧嘩し始めた。
俺はため息を吐き出す。
「ああ、どうしてこうなった」