異世界ウロナ
俺の眼前にめちゃくちゃファンタジックな連中が居た。
ローブ姿の杖を持っている爺さんがすごく驚いた顔をしている。
豪奢なドレスを着込んで驚いた顔をしている凄まじい美少女もすごく驚いた顔をしている。
しかし、そんな事はどうでも良い。
問題は……。
ここどこだ?
俺は教室に居たはずなんだけど……。
くるりと辺りを見てみる。
石で作られた牢のような部屋だった。
そして、足元には何かの陣がある。
「もしかして、異世界に転移しちゃった? みたいな?」
あはは、と誰かが冗談めかして呟いた。
誰か分からないけど、僕もそう思うよ、奇遇だねHAHAHA。
すっと、爺さんが前に出て言った。
「ま、まさか勇者様が大量に召喚されるとは思いませんでしたぞ……。しかし、ようこそお越しくださった!」
「何言ってんだこのクソジジイ! 俺たちを帰せ!」
山田琢磨がそう怒鳴る。
かなり同意だ。
呆然としていたクラスメート達も山田の言葉に追従するように怒鳴った。
「この世界を救ってくだされば帰れる筈じゃ。私たちの力では召喚が精一杯で帰すことは……」
もごもごと歯切れ悪く言う爺さん。
隣に居た女の子が勢い良く頭を下げた。
「ごめんなさい! けど、私たちにはあなた達に頼る他なかったんです! 今、この世界は魔王に支配されていて人間族には太刀打ちができず、領土を追いやられていっているんです」
「ひ、姫! 頭をお上げ下さい!」
爺さんが女の子に慌てて言う。
「いいえ。私たちの勝手に巻き込まれたのですから、この国の代表として頭を下げるのは自然なことです!」
姫は毅然とした態度でそう言うと、もう一度頭を下げた。
クラスメート達は頭を下げられたことでクールダウンしたのか、姫の言葉を聞く態勢に入った。
中には姫様の容姿にぼーっとしている者たちも居る。
何ていうか、平和な奴らだ。
姫が感謝の言葉を口にして、語り始める。
この世界のことを。
事の発端はこの異世界、ウロナに魔王という存在が現れたことにあるらしい。
魔王は洗脳の魔術によって人間以外の亜人を配下に加え、侵略戦争を始めているという。
そこでここ、ラッド王国一の神の使いである教主に何かお告げはないかと聞いたところ、魔法適性の極めて高い者を異世界から勇者として一人召喚するようにと言われ、今に至る……らしい。
しかし、問題は勇者が一人であり、ここに勇者(候補)が三十二名居ることである。
「と、とにかく数は多いに越したことはない。それに皆さんは大事な勇者であることにも変わりない。まずはステータスを見て――」
爺さんが話し始めたその時、白羽零士が言う。
「何で俺らが勇者する流れになってんだよ。嫌だぞ。生きるか死ぬかの職業就けなんてよ」
爺さんが目を光らせて言った。
「勿論強制はしません。しかし、魔王は侵略戦争を推し進めておる。このまま力をつけることなく一般市民と同じく死んでいくか、勇者として魔王を倒して無事元の世界に帰るかの二択を選ぶしかないのです」
「帰れんのか?」
「教主様はこう仰っていました。「勇者は平和をもたらし、来た道を引き返すだろう」と」
白羽零士の眉がぴくりと動く。
かなり怒っているらしい。
そりゃ勝手に巻き込まれて選択肢は一つだなんてムカつくよなぁ。
「無論、勇者をするというのなら金も知識も住む場所だって与えましょう。魔王を倒せば国の一つや二つ上げることも可能です」
俺は内心で舌を巻いた。
実質一択の二択を迫り、直後に莫大な褒美をちらつかせる。
油断ならない爺さんである。
クラスメートは皆、互いの顔を見合い、クラスのリーダー的存在であり委員長の神宮寺美香が代表して了承の返事をした。