現世から消滅
俺こと黒羽一兎が机にへばりつきながらスマホでアプリゲームをしていた。
その時、頭に痛みが走る。
俺は思わずため息を溢し、右隣に視線を移す。
目付きの悪い不良、山田琢磨が笑っていた。
山田の手には俺の頭を打ったカバンがあった。
俺を快く思わない人間の一人である。
一度絡まれた時、軽くあしらったことが原因で以降ねちっこく絡まれ続けることになった。
正直、何であんな対応をしたのかと軽く後悔している。
しかしまあ、後悔していても仕方がない。
ぐっと背筋を伸ばしてあくびをした。山田? ああ、無視だ無視。
「あー眠い」
「あー眠い」
俺のセリフと誰かのセリフが完全に被った。
俺がソイツの顔を見ると、ソイツも俺の顔を見た。
白羽零士。
この学校のボスであり、先生ですらビビって注意ができないという畏怖の対象である。
何でも三年生のグループを一人で壊滅させたとか、女を自分のものにするために彼氏とその友達をぶん殴ったとか話題には事欠かない。
……ちなみに山田が絡んできた理由の一旦を白羽が担っている。
黒羽と白羽似てるじゃねーかよ。舐めてんのか? などと下らなく意味の分からない理由で絡んできたのだ。
山田が白羽の腰巾着ということはクラス公認の事実である。
白羽の机には女が数人集まっていた。
白羽はモテて、俺はモテない。凄まじい格差を見せつけられた気がした。
俺は隣でギャーギャー喚く山田を見つめて、盛大なため息を吐いた。
「テメエ、何ため息吐いてんだああ!?」
「いや別に……」
俺が曖昧に答えた瞬間、教室が白く輝いた。
な、何だ!?
思考が白く染まっていく。
ふっと、クラス中の人間がこの世界から掻き消えた。