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Doors  作者: さの氏
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名付けのセカイ1

扉を開けた先は、先ほどの薄暗い廊下とは打って変わって、少し眩しいくらいに明るかった。


扉を開けた先にあったのは、部屋ではなく…なんというか…"外"だった。


少し向こうの方にはたくさんの人達がいて、大きなビルのような建物があり、家や店などもあり、まるでひとつの街のようだった。


…じゃあ、あの気味の悪い屋敷?から出られたってこと?


そう思ったが、何気なく後ろを振り返ってみると、そこには、大きくて重そうな、美しい模様のレリーフがたくさん入った扉がだけが、不自然に佇んでいた。




屋敷なんて、なかった。



扉が、ひとつだけ。


…………え。


私は自分の目を疑った。


今……確かにあの扉から出てきたんだよ、ね…?


地面の上に堂々と佇む扉は、あの"どこでもドア"を想像させた。


あの時の私は、自分が置かれている状況が掴めず、ただ呆然と立ち尽くしていた。



それから何分ぐらいそのままでいただろうか。


ふいに、私に気づいた一人の男がこちらに向かって息を切らしながら駆けてきた。


割と背が高く、髪は綺麗な金色で、その頭には黒くて四角い、シルクハットのような帽子をかぶっていた。


年齢は、20~30代くらいに見える。


目が合うと、彼はにこっと人懐っこい笑みをつくった。


「はあ、はあ。やっと見つけた…!新しい"旅人"さんですね!

えと、僕はこの"名付けのセカイ"の案内役の、小林と申します。」


と彼は言った。


え?案内?旅人?セカイ?なにそれ……?


「ちょ…、ちょっと待ってください。

旅人とか、セカイってなんなんですか?

そもそもここはなんなんですか?

訳わかんない……。」



「…あ、説明が先だった!

すいませんっ。まだ新人なもので……。

ええと、では長くなりますが説明をいたします。」



そう言って、小林は説明をし始めた。



細かい内容は省くが、ざっくりとまとめると、まず"セカイ"とは、先程の廊下にある扉を開けた先にある空間、だそうだ。



そのセカイは、数え切れないほどたくさんあって、それぞれの特徴や特色がセカイごとに異なるそうだ。



そしてそれぞれのセカイには、多くの人たちが住んでいる。



彼らは一般的に"住人"と呼ばれているそうだ。



そして"旅人"とは、いろんなセカイを回

って旅をしている人たちのことをいうそうだ。



旅人は、セカイで1週間以上過ごすと、強制的にそのセカイの住人となり、それから一生そのセカイで暮らすことになるという。



そのセカイの住人となって。



小林によると、ほとんどの旅人が最初に入ったセカイの住人となるそうだ。



旅には危険がつきものだから、と。



あの時の私は、その言葉を軽く聞き流していたが、いろんなセカイを旅しているうちに“危険”というのがどんな意味かわかった。



……それについてはおいおい話すことにしよう。



____「……まあ、だいたいこんな感じですね。

何か質問等あれば遠慮なく僕に聞いてください。」



「あ、じゃあ…小林さんが最初に言ってた“名付けのセカイ”って、どういう意味ですか?」



「ああ、その話は今からしようと思ってたんですよ!

“名付けのセカイ”とは、その名の通り新しく来たまだ名前のない旅人さんに名前をつけるという役割を果たすセカイなんです。」



「……あの、話の腰を折るようですが、新しく来た旅人って、私のように記憶のなくなった人のことを言うんですか?」



「え…?記憶がないだなんて、あたりまえですよ、そんなこと。

…だってあなたは、今さっき生まれてきたばかりなんですから。」



「今さっき、生まれ、た……?」



「ああ、いきなりのことですから記憶がなくなったと感じるのも無理はないですね。」



小林は肩をすくめて言った。



その後に小林が、旅人が誕生する仕組みについて細かく説明してくれたのだが、なぜか私は今さっき生まれてきたなんて、どうしても理解できなかった。



私には今まで生きた記憶が絶対にあるのだ、前世とかじゃなくて。



本能的にそう思った。



今でもその思いがはっきりと私の中にある。



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