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はじまりのノック
気がつくと、そこは廊下だった。
高級そうな真っ赤な絨毯が敷かれていて、まるで広い洋風の屋敷の中にいるようだった。
廊下はどこまでも長く続いていて、気味が悪いくらいに静まり返っていた。
あの時の私は、ただただそこにぼーっと突っ立っていた。
なぜこのような場所にいるのか、また、自分は一体なんなのか、全く分からなかった。
つまり、記憶がないのだ。
………誰かに私の頭の中の情報を全て、ごっそりと奪われてしまったようだった。
記憶がなくなるということは、想像以上に苦しいのだと知った。
何も思い出せないもどかしさが、苛立ちを生む。
____その時私は、すぐ近くに大きな扉があることに気がついた。
その扉には、美しい模様のレリーフが彫られていて、どっしりと私の前に佇んでいた。
…開けて、みようかな。
ふぅ、とひとつ深呼吸をした。
いきなり開けるのは失礼かと思い、コンコン、と2回ノックをして、その見た目通り重い重い扉を開けた。