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第9話 元勇者 隠し子?

 蓮たちと別れた僕は転移魔法を使いある場所へと向かった。そこは僕の昔の仲間の1人、妖精人のエミリア・ソラスが好んで使っていた隠れ家である。妖精人の寿命はおよそ500年なのですでに彼女はいないだろうが妖精人について何か残しているものがあるかもしれないと思って探しに来た。

 久しぶりに見る隠れ家は最後に来たときよりも強力な人除けの魔法と方向感覚を狂わせ隠れ家と逆に進ませる魔法、そして景色を変え隠れ家を隠す魔法が張ってあったが1日かけてそれらの魔法を突破し巨大な木の中に造られた部屋へと入る。


「おじゃまします。誰かいませんか?」


 いちおうの礼儀としてそう言ったが誰もいないだろうとは思っている。エミリアは人に無関心で、僕や仲間に対してもあまり関わろうとしなかったほどだ。そんな彼女が他人をここに住まわせているはずはないと考えたのだがその予想は外れ返事が返ってきた。


「はーい。ちょっと待ってください」


「え?」


 そうしてやってきたのは僕に似た顔立ちの青い髪の幼女だった。いったい何者だろうと考え尋ねようとする前に彼女はとんでもないことを言うのだった。


「おかえりなさい。パパ」


「………なんだって?」


「おかえりなさい。パパ。私はエミリア・ソラスとパパの子供のクラウ・ソラスです。一応6歳です」


「ちょっと待ってくれ。僕はエミリアと子供ができるような行為をしていないはずだけど」


「はい。ママが昔こっそりと採取したパパのを使って魔法で子供をつくったんです」


「そんなことを彼女が?」


「はい。ママはアルスおじさんたちがみんな老いて死んでいくのを見て寂しいと考えたんです。それでいけないことだと分かっていながら私をつくったんです」


「それは………」


 あのエミリアがそんな心境になるとは思いもしなかった。しかしここで疑問がある。僕が異世界に帰るとき、すでにエミリアは250歳だった。それからアルスたちが死ぬまで50年、それからクラウをつくるのにたとえ100年かかったとしてもクラウは今、350歳になるはずではないだろうか?


「ちなみに私が6歳なのはママが私を生んでから5年で亡くなって、それから去年まで魔法で時間を止めて眠りについてたからなんです」


「………読心系のスキルを持っているのかい?」


「はい。スキル『読心』と『魔法威力増加』の2つです」


「そうか。ところで僕は」


「ママの資料を取りに来たんですね」


「そうだよ。それで渡してくれるのかな?今の資料の所有者は君なんだろう?」


 エミリアは自分の持ち物に魔法による認証システムを施していた。所有者登録がだれもされていない、もしくは所有者が死んでいる場合は普通に手に入れることができるのだが所有者がいる場合、許可を取らなければその存在を知覚できないという厄介なものなのだ。


「はい。でも渡すためにはママの残した10の試練を攻略してもらわないといけないんです」


「………嫌な予感しかしないけど、僕に選択肢はないんだよね。その10の試練に挑戦しよう」


「ではまずうつむけに寝転がってください」


 クラウの言う通りにうつむけになって寝ころぶ。すると何かが―おそらくはクラウの足が―頭に乗るのだった。


「では第1の試練。幼女に頭を踏まれながら10分間罵倒され続けるです」


「………」


「いいですか?」


「ああ。これは難題だ」











 第2の試練 クラウに合う服装を見繕え


 第3の試練 クラウと遊び楽しませろ


 第4の試練 用意された魔法人形100体と戦い勝利しろ


 4つの試練を終わらせた頃には夜になったのでいったん休憩し、夜食にすることにした。食材は魔法人形たちが仕入れてくるらしく、たくさんあったのでたくさんの料理をつくりクラウと食べるのだった。


「パパはすごいですね。ママは第4の試練に1日はかかると予測していたのにわずか半日で終わらせるなんて」


「確かにアレはやばかったね。でも幸いなことにアルスとヒュッケルの『絆』を僕は持ってたから何とかなったよ」


「『絆』ですか。パパのスキルなんですよね?」


「そうだよ」


 雪白透のスキル『絆』


 一定以上の信頼を築けた相手が同意することでカードを生成する。そのカードを僕が持っていればカードに記された人物の身体能力、魔法適正、スキルすべてを僕が使えるようになるスキルである。またカードをつくった相手には見返りとしてスキルが1つ付与されるのだが、『絆』には強力なスキルにありがちなデメリットも存在していた。

 それは僕がカードを使用している間に受けた傷は同時にカードに記された人物も受けるということ。カードに記された人物が死んでいる場合は使用に制限がつく。たとえばアルスのカードを使う場合、使用できるのは30分だけ、再使用に1時間かかる。というものである。

 ちなみにヒュッケルというのはアルスと同じく僕の仲間で帝国のアルスさんが持っていた(アルスさんはヒュッケルの残した文書や絵から僕が500年前の勇者だと予想したらしい)。


「残る試練は6つ。最短で2日ってとこかな?」


「パパなら1日でも大丈夫じゃないですか?」


「そこまで楽観はできないよ。なんといってもエミリアの試練だからね。………そうだ、クラウ、君は僕と一緒に来ないかい?」


「え?」


「今僕は世界の接点を無くすための旅を3人の仲間としているんだけどさ。君も一緒に来ないかい?」


「それは………」


「まあ今すぐ答えてほしいとは言わないよ。僕が試練を全て攻略してここから出るまでに返事をくれればいいから」


「………はい」


 僕の提案はクラウには急すぎたようなのですぐに答えないでいいと言う。僕の知らないところでつくられた子供だとしても僕の子であることに間違いはないのでできるだけ面倒をみたいのが僕の心情である。

 しかし同時にクラウの意思を尊重したい気持ちもあるので着いていくにせよ残るにせよ互いに納得ができればいいなと思うのだった。

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