第7話 元勇者パーティー 旅立ち
「………雪白、綾崎。この世界ではもう結婚できるからといってあまり羽目を外しすぎるなよ」
「「誤解です!」」
ある意味的確すぎる現状理解をする笹原先生に一応否定を入れて部屋に入れる。さすがに7人も集まると部屋が狭くなるがわざわざ空間魔法を使って部屋を広くするのも面倒なので何もしないが蓮がこっちをちらちらと見て催促をしてくるので仕方なく部屋を広げる。
「すまんな雪白」
「いえ別に。それで3人はどういったようで来たのですか?」
「それはですね。あなたたちに頼みたいことがありまして。これから雪白殿たちは『属性玉』を集める旅に出るのですよね?」
「ええ、そうなりますね」
「実は聖国とキィ商国が秘密裏に勇者を召喚したという情報が入りまして。もしあなたたちが旅をしている中で何か情報が手に入ったならこちらに教えてほしいのです」
「別に僕たちに頼まなくてもそれこそ《ハウンド》を使えばいいんじゃないですか?」
「当然彼らも動かしますが彼らは警戒されますからね。あなたたちの方が知名度が低いのでもしかしたらということです」
「わかりました。それで先生たちはいったい何をしに?」
「教師として生徒が旅立つのを見送ろうと思ってな。………あまり無理をするんじゃないぞ」
「帝国に残るみんなのことは任せてください。神崎君や天海さんの心のケアも可能な限りがんばりますから」
生徒に人気の柔らかい笑顔を僕たちに向けながら清水先生はクラスメイト達のことは任せてと言ってくれる。
本当にありがたいことだなと思いながら僕たちは旅立つのだった。
Side 黒羽蓮
透の転移魔法で帝国から離れた日の夜。私たちは森で野宿をしていた。本来ならそんなことをしなくてもすぐさま妖精人の森に向かうこともできたのだけど透が何かあって全員がバラバラになった時、野宿できた方がいいだろうということで実際にやってみたのだけど。
「ほら霞さん、早く火を起こさないといつまでたっても晩御飯がつくれないよ」
「修、もっと水気のない枯れ木とかを持ってこないと火種ができても燃えないよ」
「蓮、もっと魔物の解体は無駄なくやらないと。できるだけ皮は薄く剥いで肉がつかないようにしないと」
「透君、火種ができたよ!」
「うん、これならいいね。魔法を使わずに火種がつくれるほうがいいからね。魔法が使えない状況に陥ることもあり得るわけだからね」
「これならどうだ透?」
「それなら大丈夫だよ。次に集めた枯れ木を燃えやすいように並べて」
「内臓は捨てた方がいいのかしら?」
「まあ安全第一でいくならそうしたほうがいいんだけど。そうだね解析魔法をみんなに教えておこうか。この魔法が使えれば毒の有無や食べれる部位が分かるようになるからね」
透に手とり足とりとはいかなくてもかなり教えてもらいなんとか夕食の準備を終えた私たちは食べながらこれからの予定を話し合う。
「妖精人の森に入るのは難しくないけどもしかしたら人間は立ち入り禁止になっているのかもしれない。それを考えるといきなり結界を突破すると敵だと思われるかもしれないね」
「でも結界に入らずに連絡を取ることはできるの?」
「それはできるよ。例えば結界に作用する魔法を使って僕たちの存在を伝えてもいいんだからさ」
「だとしたらやはり妖精人が友好的か敵対的かが問題だな。もしも敵対してきた場合は無理やり奪うのか?」
「そんな!?」
「いや、それはできない。妖精人から無理矢理『炎の紅玉』を奪った場合、取り返すために軍隊を派遣してくるはずだからね。とくに彼らは魔法人形と呼ばれる魔法具があってね。強いし硬いし、人形だから倒しても倒してもそれ以上の数がつくられるからきりがないし。そういうわけだから本格的に敵対するのは避けたいんだ」
透は昔、魔法人形の軍勢と10日間戦い続けたことがあったそうでその脅威を理解している。話を聞くだけでも厄介なのが分かるので透の方針は分かるのだけど。
「結局、向こうが敵意を持っていたらどうする気なの?」
「決闘を申し込む。彼らは決闘で着いた決着はどんなに不満でも受け入れるからね」
「それがお前の知っている妖精人の性質なのか?」
「そうだよ」
「でももしかしたら透君の知っている妖精人じゃなくなっている可能性もあるんじゃないかな?」
「ふむ………」
霞の話を聞いて考え込む透。確かに透が知っているのは500年前のことだけ。それだけの時間が経てばいくらか変わっている可能性はある。
「そうだね。それじゃあ僕は明日から森の外に出ている妖精人を探して話を聞いてみるよ。で、蓮たちはここから………そうだな、シリアの街に向かって行って旅になれるようにするのはどうかな?」
「いきなり透がいない状態で旅をするのか。だが遅かれ早かれそうする必要はあるな。俺は賛成だな」
「私も賛成だよ。地図を見る限りシリアの街までは山や大きな川があるわけでもないし、基本は見晴らしのいい草原だから大丈夫なんじゃないかな?」
2人は賛成するが私は不安があったためすぐに頷くことができなかった。それを見た透は安心させるために護衛をつけると言ったのだった。
「護衛?」
「そう。ただし命の危険がない限りその護衛は姿を現さないからね。基本的には3人で旅をしていってほしい」
「そういうことなら反対はないわ」
「それじゃあご飯も食べたし寝る準備に入ろうか」
そうして男性と女性で分かれて別々のテントに入り眠るのだった。