第26話 元勇者 次なる目的地
「俺が目を覚ました時には陛下が敵の親玉を倒し………それでも2つの世界は再び繋げられてしまってからだった」
「それまで意識を奪われていたわけか」
「そうなる。今回は前に戦った影のさらに影みたいなやつだから記憶があるし、俺の感情や欲望を暴走させて操っていたんだろうがあの時の俺は一切の記憶を持っていないし、後から聞いた話だと俺は変わりなく冒険者として活動していたそうだ」
「なるほど。でも影の影なんてものを使っているところを見ると敵の親玉が復活したってわけじゃあなさそうだね」
「そうだな。親玉を倒した後も生き残っている影たちを討伐していったんだがどうにも討ち漏らしがいたようだな。きっとそいつが昔みたいに自分の劣化コピーをつくって世界を操ろうとしているんだろう」
「話はよくわかった。そのうえで君に頼みがある。聞いてくれるかな?」
「なんだ?」
「妖精人の森に『炎の紅玉』があるはずなんだ。それを手に入れてほしい」
「………あそこにあれがあるんですか?」
「敬語じゃなくっていいってば。(僕はいま『闇の黒玉』を持っているんだ)ある筋からの情報でね。かなり信憑性は高いよ」
「なるほど」
『闇の黒玉』は知る人は知る悪名高いものなので冒険者組合の職員に聞かれるのはあまり好ましくない。さらに敵に乗っ取られている人もいるかもしれないと考えれば小声で話した方がいいだろうと思ったのだ。
それを察したガリアは僕に実物を見せて確認させてということなく話をつづけた。
「確かにあそこは人間が入れる場所ではなくなっているからな。分かった、俺が向かおう」
「気を付けてね。敵が身を隠すのに人の入れない場所っていうのはありがたいはずだからね」
「忠告感謝する。………しかし俺が向かい始めるのはもう何日か経ってからだ。今の仕事も当分は誰かに任せなければらないし、向こうについてから手に入れるまでも時間がかかるだろう」
「こちらとしても1カ月そこらで手に入るとは思っていないよ。とりあえず他の『属性玉』についての情報を集めようとは思っているけどね。
「だったら聖国に向かうといい。あそこには『偉大な歴史書』がある。『属性玉』の行方もいくつか載っているだろう」
「それはいいことを聞いた。それじゃあとりあえず1か月後に連絡を取るよ。その次の連絡はその時に考えよう」
「ああ、そうだな」
「それじゃあお大事に」
「ありがとう」
そうして僕たちは病室から出て行ったのだった。
「それで、これから私たちは聖国に向かうのかしら?」
宿に帰った蓮の第一声がこれであった。その質問に僕は笑いながら答える。
「いや、聖国にはいかない。次の目的地はここからだと真逆の死霊の草原だよ」
僕がそういうとなぜか霞が嫌そうな顔をして聞いてきた。
「えっと、透君。そこってもしかしてお化けとかが出るのかな?」
「出るよ。霞ってホラーは苦手なんだっけ?」
「う、うん。でも頑張るよ!」
「そ、そうか」
と、そこで上着が微妙に掴まれているのに気付き見てみるとそこにはうつむいているクラウの姿があった。まさかと思いながら聞くとクラウは頷いたのだった。
「昔の事なんですがママにアンデット系の魔物を討伐してくれという依頼がありまして。それに私も連れて行ってくれたんですが、その時に500体はいた魔物たちを笑いながら倒していきまして」
「そのときのエミリアが怖くて、アンデットを見ると思い出すのかな?」
「はい」
「お前の仲間はずいぶんとアレなんだな透」
「その言葉は自分に返ってくるよ修」
「俺はまともだろう?」
そう言って3人に問いかけるが皆、口を開けずに首を横に振るのだった。
「………嘘だろう?」
「残念ながらこれが現実だよ………これくらいでふざけるのはやめていったいどうしようか?」
「そもそもどうして聖国に行かないの?」
蓮は目的地をガリアと話した時とは変えたことに興味があるようでしきりに尋ねてきた。僕としても隠すようなことではないので―盗聴などがないか確認した後―話すのだった。
「確かにガリアが言った通り、聖国には『偉大な歴史書』という魔道具がある。この世界で起こったことを自動で記録する奇跡の魔道具だけど、例外として『属性玉』については書かれていないんだよ」
「それは透たちが何かしたのかしら?」
「そうなんだ。僕とアルスが力技でどうにかね。そしてそのことをガリアは知っているんだ」
「つまりあそこで話したのは敵が聞いていた場合に敵を誘導できるようにか」
「そういうことだね。まあ敵も素直に聖国だけで待ち構えてはいないだろうけど戦力を少しでも分散させられるなら悪くはないだろう」
「なるほどな」
「それに………いや、これについては道中話そうか」
そして僕たちはモノリスを発つ準備を始め、その日の午後には出て行ったのだった。




