第20話 元勇者 魔法の講義
魔法
この世界には魔法がある。なぜ使えるのか、使うための代償はないのか、多くの疑問があるがそのほとんどは解決されていない。やがて人々は魔法の理由について知ろうとすることを止め、今度はどうすればより強力な魔法を使えるかを知ろうとした。
その結果、新しい魔法が生まれるには《派生》と《発生》の2つのパターンがあることが分かった。
「これは新しい魔法を習得するのに必要な知識じゃないけれど知っていおいて損はないから教えておくよ」
冒険者組合の演習場で僕は4人に魔法の理論について教えていた。クラウは蓮たちよりも知識はあるのだがこの話については知らなかったので一緒に話を聞いている。
「最初に魔法は6属性の魔法しかなかったと言われている。つまり火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、光魔法、闇魔法だね」
「でも透はこの前、消滅魔法っていうのを使っていたわよね?あれもその6属性のどれかなの?」
「いや、あれは《発生》のプロセスからできた魔法で6属性には含まれない。まあその話は後に回してまずは《派生》についてから語ろうか。例を挙げると土魔法を使って土壁をつくることはできるよね?」
「ああ、そうだな」
「同じように土魔法を使って土の槍をつくり、それで戦うこともできるよね」
「ああ、しかしそれがどうかしたのか?」
「つまり土魔法は汎用性が高いわけだけど、その中から特化させた魔法ができるようになったんだ」
「特化させた?それってどういうことなのかな透君?」
「さっきの例えでいうと土魔法よりも速く壁をつくることができる土壁魔法、さらに強度を増した壁をつくる城壁魔法みたいな感じでね、汎用性を捨てる代わりに何か1つに特化させた魔法が生まれることを《派生》って言うんだ」
実際に魔法を使い実演しながら教える。そして4人とも理解できたなと思ったところで《発生》の話に入る。
「次は《発生》についてだね。これは《派生》以上に謎なんだけどいきなり頭に魔法の使い方が浮かんでくるんだよ」
「「「「はい?」」」」
「いや、だから頭に浮かんでくるんだよ。僕の場合は勇者になってから1週間ぐらいしてかな?突然、分解魔法が使えるようになったんだ。ちなみにそれまでこの世界に分解魔法は存在していなかったことが分かっている」
「つまり、文字通りに発生したってことですか?」
「そういうことみたいなんだ。しかも分解魔法を使い続けていたらいつの間にか《派生》して消滅魔法ができたりね」
あれからかなり戦いが楽になったからな。殺しても問題のない敵だったら問答無用で消滅魔法を撃ち込んで勝ってたし。
「まあとにかく、新しい魔法が生まれる方法はその2種類があるっていうことを覚えていて欲しい。それに《派生》した魔法については元の魔法の適性があればたいていは使えるからね」
「本当に謎なのね」
「まあね。そもそも魔法を使える条件は適性があることと、その魔法を知っているか、体験したことがあるかだからね」
「それならもしかしたら私たちも消滅魔法を使えるのかしら?」
「………どうだろう。あれは僕以外に適性のある人がいなかったからね。まあ同じ異世界人にならもしかしてはあると思うけど」
「なら試してみるか」
そうして試してみたのだが………
「「「「消滅魔法!」」」」
「………誰も適正はなかったみたいだね」
誰も適性がなかったようで的に変化は起こらなかった。
「まあ適性があれば便利だけどなければ内ないで他の魔法でもどうとでもなるからね。それじゃあ魔法の生まれる話はこれでお終いにしようか。これから僕が魔法を使っていくからその後に自分が使えるかを試してみよう」
Side ガリアノート・ドラゴ・アインテイル
「やっぱし『収集鬼』が無くなっている。しかし荒らされた形跡はないか………」
俺は今、フラジール王国にある大事な場所の調査に来ていた。『直観』スキルのおかげか妙な胸騒ぎを覚えてやってきてみればやはりというかこの場所に変化が起きていた。
「つまりはトオル先輩か、それに連なるものが召喚されたってことだよな?………そういえば帝国で勇者召喚が行われたって噂があったな。それがなのか?」
他に何かないものかと部屋を探すが特に発見はなかった。
「ここは1度組合に帰ってから情報を集めるか。リオネスの組合長は誰だったか」
帰る準備をしながら組合で連絡を取る相手を思い出そうとする。そしていざ帰ろうとしたとき壁にかかっている鏡で自分の顔が写っているのを見て驚いてしまった。
鏡にはずいぶん見ていない自分の笑顔が映っていたのだった。どうやら俺は久々に退屈しない日常を送れるのだと遅れて気づき、これから起こるかもしれない劇的な日々を想像しながら帰るのだった。
ああ、トオル先輩だったらいいなあ………




