第15話 元勇者の娘 信じる
Side クラウ・ソラス
パパと一緒に世界を旅するか。それとも1人でママの隠れ家に住むか。本来なら悩まずにパパと一緒に行くべきだとは思っています。そのためにママは冷凍睡眠装置をつくってパパがこの世界にやってきたら私が目覚めるようにしていたのですから。
でも2人きりではなくパパの仲間の人もいるというのが私を悩ませています。つくられた子供であり『読心』のスキルを持つ私を受け入れてくれるのか。嫌悪の眼で見られ、パパもいずれ同じ目で私を見るのではないか。そう思ってしまいます。
そんなことがあるはずがない。パパの仲間なんだからそんな人たちじゃないと思ってもやっぱり信じきれない。ママとパパしか関わったことのない私は対人関係というものがひどく苦手なのです。
本を読んで知識を得たつもりでも体験のない私は自信が持つことができません。
「大丈夫かい?」
「パパ………」
「ねえクラウ。君はもしかしてつくられた子供であることや『読心』のスキルを持つことを教えて嫌われるのが怖いと思っているのかな?」
「どうして」
パパは私の心を読んだかのように核心をついてきます。それに驚いて反応してしまいましたがパパは笑いながら言います。
「君はもっと多くの人と関わらなければいけないね。いいかいクラウ、別に僕の仲間に君のことを話す必要はないんだよ」
「え?」
「君が僕の仲間に話しても大丈夫と思ったら話せばいい。それまではそうだね、僕が妖精人を探しているとき寿命を迎えようとしている君の母と君に出会い、君の母にクラウを託された。そういうことにしておこうか」
パパの言うことを聞きながら考えます。でも人に嘘をつくのはいけないことで、そんなことをしながら私が仲間になれるとは思えません。そうパパに言うと。
「なるほど、君はまじめでもあるんだね。でもそこは心配しなくても大丈夫だよ。隠し事があっても仲間にはなれるし友達も作れる。まあ人によるのは確かだけど蓮たちに限っては心配ないよ」
「本当に、本当に私は嘘をついても仲間になれるんですか?」
「なれる。もしなれなかったらクラウと2人で旅をしよう」
「………本当ですか?」
「まあそんなことにはならないけどね」
その言葉を聞いてパパは仲間を信頼していることが分かりました。だから私も仲間を信頼しているパパを信頼して言いました。
「パパ、私も一緒に旅をさせてください!」
「ああ、一緒に頑張ろうね」
これが私の旅の始まりなのでした。
Side 黒羽蓮
「それで?私たちは組合に呼ばれたと聞いたのだけどどうしてこんなところに連れてこられたのかしら?」
私たち3人は夜中にカレアから冒険者組合からな内密の話があると聞き彼についていったのだが連れてこられたのは組合から離れた路地裏だった。
何か妙だと思い私たちは臨戦態勢を整える。
「なぜここに連れてきたかだって?それはな………お前たちを殺すためだよ!」
「「「!?」」」
カレアはそういうと同時に壁を使い跳躍しながら私たちの後ろに回り修一に剣で攻撃をしてくる。それを修一は同じく剣で防ぐがカレアの攻撃が速すぎるためにしばらくすれば受けきれなくなるだろう。だからその前に。
「霞!」
「捕縛魔法!」
「水魔法!」
霞の捕縛魔法により現れた光の輪がカレアを縛る。そして修一が左手を切り落とし、私は水魔法を使い高速水流で右手を切り落とす。腕の欠損程度なら霞が治せるので確実に戦力を削ぐことを優先する。
しかし両腕を切り落とされたというのにカレアは笑ったままだった。それを不気味に思いながら彼と距離をとる。
「それで?両腕を落とされたうえに体を縛られているのにまだやる気なの?」
「両腕を落とされたうえに体を縛られている?その程度ではまだやる気はなくならないよ!」
「そんな!?」
霞の捕縛魔法を一瞬で無効化したカレアはそのまま驚いて隙ができた霞を狙い蹴りを入れる。それをギリギリのところで私が割り込み防ごうとするが蹴りが予想よりも強かったために2人で飛ばされてしまう。しかもあまりの衝撃に私の体はまともに動かなくなってしまった。
「ほらほらほらあ!隙を見せると死んじゃうよお!」
「くそっ!」
再び修一とカレアが斬りあうがやはり修一の方が分が悪く、少しずつ斬られていく。今はまだ浅い切り傷で済んでいるがどこまで耐えられるか。
「火魔法!」
それを見た霞は火魔法でつくった火球を空に打ち上げ異常を知らせようとする。火球は無事に空に上がり破裂した。これで人が来るだろう。
あとは私たちが援軍が来るまで耐えるだけだと信じ、『未来視』を使って見た未来を伝達魔法を使い修一に教えることで時間を稼ごうとするのだった。
Side ダン
行方不明者が出るようになってから組合は冒険者にも夜警をさせるようになった。流石に俺たち高ランク者に強制依頼を出すことはなかったがこうして俺は毎晩遅くまで自主的に見回りをしている。
今日は強い胸騒ぎがするので完全武装しながら町を歩いているのだが異常は何も起こらない。だが今も嫌な予感だけは強くなっているから放り出すわけにはいかない。そうして歩き回っていると町の外からフードで顔を隠した妙な2人組がやってきたのでそいつらに話を聞こうと足を向けるのだった。




