第13話 親友 調査
Side 木戸修一
バンデッドドールが出た日から5日。なんと撃退ではなく討伐に成功したことでここ数日はお祭り騒ぎだったわけだが流石に今日は普通に戻っている。
今日は冒険者の仕事を休むと蓮たちと話し合って決めていたのでこうして1人で街をぶらついているのだがもう長いことここに泊まっているので目新しいものはない。
「ようシュウイチ!こんなところで会うとは珍しいな」
「どうもダンさん。今日は休みなんで適当にぶらついているんです」
偶然出会ったのは2級冒険者のダン・クレイさん。かなりの実力者で俺たち3人がかりでも勝てなかった相手だ。
「そうか。つまり暇なんだな?」
「いえ数少ない自由を謳歌するのに忙しいです」
「実は最近妙な事件が続いていてな。俺はその調査をしているんだ」
「いやだから」
「この町で男女問わずに人が消えているんだ。消えた人数は分かってるだけですでに10人。気になるだろ?」
「それは………確かに気になるな」
10人もの人間が行方不明というのはこの世界でも異常事態だ。未だに透からの連絡がない以上この町にはまだ留まるしかないわけだから危険は排除できるならしたほうがいいだろう。
「仕方ない。手伝おう」
「そうか。ところでお前、地が出てるぞ」
「!?………それはすみませんでした」
「いいっていいって。別に気にしてねえよ。それに冒険者は礼儀を知らないやつの方が多いからな」
「じゃあこっちで話させてもらう」
「おうよ。それでまずは消えた奴らが最後に目撃された場所を巡ろうと思うんだがどうだ?」
「何の手がかりもないのならそうするのがいいだろうな」
最後に目撃された場所を巡りながら俺は今回の事件の話を聞いた。今回消えたのは宿屋の娘が2人に薬屋の娘が1人、10級冒険者の女性が3人、8級冒険者の男が4人。普通の女性だけならまだしもランクが低いとはいえ冒険者が消えたということで組合はこの事件を重く見てダンに調査を頼んだのだった。
そして全員の場所を巡った俺たちだが結局何も手がかりを得ることはできなかったのだった。
「何もわからなかったな」
「だな」
「こうなると次に何をするべきか悩むな」
「最後に誰と会ったかは分かっているのか?」
「親だったり仲間だったりだな。そいつらに話は聞いたが何も得られるものはなかった」
「となると被害者の共通点から考えるしかないか」
「共通点?そんなのあったか?」
「全員若いってことだ。一番年上でも25歳、下は16歳。そして誰も消える前に特別なことを言わなかったってことは話しかけられたり会うことが特別じゃない相手ってことになるだろう?」
「つまり旅人ではない。さらには年取ってるやつも除外していいかもしれんな」
「それに冒険者か、冒険者に関係のある職業についている奴だろう」
「なるほどな。そうなるとまずは冒険者で誰が事件の起こった日にこの町にいたかを調べてみるか」
「しかしいったい何の目的で誘拐しているんだろうな?」
「目的か。どこかにさらって殺しているんじゃないか?」
「だとしてもどうして今なんだ?おそらくだが犯人はこの町に来てだいぶ経っているんだろう。そんな奴がどうして今になって行動するんだ?」
「それは………確かにそうだな」
「もしかしたら最近現れた災害級が関係あるのかもしれない」
「しかしあれは討伐したぞ」
「まあこれについては俺の考えすぎならそれでいいんだがな」
しかしどうにもそんな予感を感じてならない。災害級ほどの魔物があっさりと倒されたことも腑に落ちないし、倒されて数日経ってから事件が起こるというのも関連性があるように思える。
ここは蓮と合流して彼女の『直観』に頼ろうと考え、俺はダンと別れるのだった。
Side 雪白透
嫌な記憶を思い出す。それは僕の想像よりも苦しく、悲しいものだった。
「ああ………」
「パパ、大丈夫ですか?」
「悲しいことは今でも変わらず悲しいんだね。いくら時間が過ぎても癒されないものはあるんだね」
「………パパ」
「でも悲しい思い出は癒されないけど楽しい思い出をつくることはできる。だから笑っていられるようにもっと楽しい思い出をつくるんだ」
「はい!」
「それではこれで第10の試練 演劇を攻略とします」
「おつかれさまでした」
「パパ、いい演技でしたよ」
最後の試練は渡された台本通りに演技をするというものだったのだがこれが予想以上に大変で何度も撮りなおしになってしまった。
しかしこれですべての試練を攻略したのだ。エミリアの研究資料など僕にとって有益なものを手に入れることができるのだから今までの苦労を忘れられるというものだ。
「それではママの書庫に案内しますね」
「ああ、頼むよ」
「書庫に着いたらパパの頭の中を探られますが抵抗しないでください。記憶を読み取ってすべての試練を攻略したことを認められればそのままママの全てを頭の中に書き込みますから」
「そうか。書き込むのにどれくらい時間がかかるかわかるかい?」
「だいたい5分程度ですね」
「それじゃあそれが終わったらクラウの答えを聞かせてほしい」
「………はい。その時に必ず」
僕たちと一緒に来るか来ないか。クラウの答えを楽しみにしながら僕たちは書庫に向かうのだった。




