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第1話 元勇者と幼馴染 召喚

これは夢だ


僕は黒い服とズボンと手袋に身を包み、目の前の敵を殺す


敵は悲鳴をあげながら倒れ、僕を恨みながら死んでいく


これは現実だった


僕が4年前、13歳の時に体験した記憶


異世界で勇者として戦って、友人をつくって、仲間ができて、人や魔物を殺し続けた雪白(ゆきしろ)(とおる)の記憶


最近は見ることが無くなっていたのにどうして今見ているのだろうか?


そして風景が色あせていき、夢から覚めるのだなと感じた




「………は?」


 目が覚めたら箱の中だった。いや、材質が石っぽいことを考えるともしかすると棺桶かもしれない。


 ………棺桶?どうして僕は石の箱から棺桶を連想したのだろうか?まあいい。とりあえずここから出るとしよう。

 狭い内部で両手を何とか動かして正面を押してみる。すると簡単に動き抜け出すことに成功する。そして抜け出してみるとやはり僕が入っていたのは棺桶のようで丁寧に僕の名前が彫ってあった。………ただし異世界の文字で。


 そもそも僕はどうして眠っていたのかを考える。僕の記憶が確かならいつも通りに高校に通って授業を受けていたのだが、気づかないうちに寝てしまったのだろうか?

 と考えていると後ろから気配を感じたので振り返る。すると1枚のカードが飾られているのが見えたのだった。そのカードには剣を垂直に地面に刺す男の姿とアルス・ヴィン・フラジールの文字があった。


「これは、僕の『絆』?」


 近づいてカードを手に取るとそこに書かれていた男が動き出し、僕に話しかけてきたのだった。


「俺が動くということは透か、透に縁のある人物が俺を手にしているのだろう。俺はフラジール王国第13代国王アルス・ヴィン・フラジールだ。まずはこの場所について話させてもらう。ここは透かその縁者がこの世界に召喚される場合、割り込みをかけて強制的に連れてくるようにしている場所だ。たとえ何十人が同時に呼ばれたとしても確実に呼び寄せる魔法がかけられている」


 ということは僕はまたこの世界に呼ばれたのか?でもそんなことは起こらないはずなのに。だから僕は無理やり日本に送り返されたはずなのに。

 アルスの話はまだ終わっていなかったので考えはいったん止めて続きを聞く。


「この世界と透の世界、日本という国のある世界は昔、互いの接点を無くし行き来することができなくなるようにした。しかしある事情から世界は再び接点を持ち、遠い未来にはまた勇者として異世界から人を呼び出すことができるだろう。だがそれは一方通行の召喚。送り返すことはできず、また呼び方によってはその者たちを肉体的、精神的に変えてしまうかもしれない。君、もしくは君たちに多大な負担をかけてしまうとは思うが再び世界の接点を絶ち、正常な状態に戻してほしい。この部屋には世界の情報を集めた『世界情報収集鬼』の受信鬼がいる。俺の話が終わったところで起動する手はずになるから気になることはそいつに聞いてくれ。………最後に、世界の接点を絶ってほしいというのは俺の勝手な頼みだ。だから聞かなくてもいい。願わくば君がこの世界を好きになってくれることを」


 そこでカードの絵は動きを止め元の絵に戻った。


「この世界を嫌いになるはずがないだろう。相変わらず馬鹿な王様なんだから」


 涙を拭きながら笑う。彼はいつも笑えと言っていたからこんな時でも笑ってやろう。そして彼の頼みを断る僕じゃあないんだ。


「さあ4年ぶりの勇者業を始めようか」











Side 黒羽(くろば)(れん)




「よくぞ来られた勇者たちよ!」


 突然の光に目をつむっていた私が再び目を開けると私たち1組の生徒と担任2人を多くの人が囲んでいた。そして豪華な椅子に座っている老人が私たちのことを勇者と呼び称えだした。

 クラスメイト達はみな動揺しており唯一冷静だった担任の笹原(ささはら)伊織(いおり)先生が今の状況を聞き出してくれた。それによるとこの世界は魔法と魔物が存在しており、私たちは魔物と戦うために呼ばれたのだとか。


「貴殿らはこのバオル帝国の勇者として召喚されたのだ。よってこれからは勇者としてこの国のために働いてもらう」


「待ってください。私たちは戦ったこともないただの人間です。いきなり勇者として戦えと言われても何もできずに死んでしまいます」


「それは気にすることはない。貴殿らはこの世界に呼ばれた時点でスキルと呼ばれる力を得ている。それを使えばどうにかなるだろう」


「スキルの使い方も分からないのですが?」


「文献では自分に意識を集中させるとスキルの内容と使い方が分かるそうだ」


「自分に意識を集中ですか?」


 言われたとおりにやってみる。


(『未来視』のスキル。数秒先の未来を見ることができる。使いこなせば数日、数年先の未来を見ることができるようになる。力を使おうと考え目に意識を集中することで使える。『直観』のスキル。勘が鋭くなる。自分の意思で使うことはできない)


 分かった。そして『未来視』のスキルを使ってみる。


『どうだ?自分のスキルが何か』


「どうだ?自分のスキルが何かわかったか?」


 王様が言うことを予知したことから今の私ではだいたい3秒後の未来をそこから3秒間見ることができるようだ。見ると言っているが実際には音も聞こえるのでテレビを見ているようだというべきだろうか?

 とにかく私はこの力を使って生きていくことになるのだろう。唯一の希望は雪白がこの場にいないことだけど、まあ期待せずに待っていようかな。

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