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長い一日-4

「幸、せ…?一体どこが…?毎日僕の面倒を見て迷惑をかけられて…、ちっとも報われないのに…」


「案外、そうでもないんだぜ?お前はほぼ毎日、俺に想いを告げてくれるからな」


「え…!?」


驚きのあまり僕が布団から顔を出すと、浩祐さんは瞼に優しいキスをした。


「好きな奴がさ、その日その日で必死に悩んで告白してくれるなんて最高の贅沢だろ?だから俺は、毎日お前に惚れてもらえるよう努力してる」


「……僕、昨日も告白した…?」


「ああ、したよ。顔を真っ赤にして泣きそうな顔で。可愛かったなぁ」


「や…、止めてよ!可愛いとかそう言うこと言うの…」


この部屋に来るまで凄くドキドキして不安に押しつぶされそうだった僕は一気に恥ずかしくなって顔を逸らす。


ニヤニヤしてる浩祐さんの勝ち誇った顔なんてとても見れない。


「……なんか僕、バカみたい」


「バカなもんか。これは俺の今日一日の努力が実った結果だろう?…だからさ、お前は安心して眠ればいい。お前が忘れても俺はちゃんと覚えてるから」


「っ…!浩祐…さん」


「俺達に同じ日なんて一日たりとも有り得ないんだ。明日はまた別の恋をしよう。俺が必ず惚れさせてやるから」


彼のその言葉は自信に満ちていた。


「……うん。浩祐さん……明日も好きだよ」


確かにそうなのかもしれない。


同じ日を繰り返してるのは僕だけで、彼や他の人にとっては新しい一日。


僕達の関係は始まったばかりで止まってるんじゃなく、毎日少しずつ前進してるんだ。


彼が幸せだと言うのなら悪いことばかりじゃないのかもしれない。


「俺も好きだよ、瑛汰」


自分の部屋のベッドで横になるとすぐ睡魔に襲われ、彼はウトウトする僕に添い寝して背中を撫でてくれる。


僕は今日何をした?浩祐さんに恋をした。


だったら明日は何をする?


僕はその答えを頭に何度も思い浮かべながら静かに瞼を閉じた。


────────────────────


「…………何の夢だったんだろう…」


白くぼやけた部屋が目の前に広がり、僕は何度も目を擦る。


「あれ?僕……泣いてた?」


頬に引き攣るような感覚を覚え、今度はその場所指で擦る。


凄く幸せであったかい夢だった気がしたのに、涙が乾いた後に僕は首を傾げて部屋を見渡した。


ここは何の変哲もない僕の部屋だ。だけど何か違う。

その違和感を注意深く探ると、机の上にある一冊の本に目が止まった。


その本は物語を綴ったもののように重めかしく重鎮している。

でも実際には日記帳みたいだ。


「僕の字……だよね?」


身に覚えの無い言葉が書き綴られたページをパラパラ捲り、飛ばし読みをしていた僕は最後に書かれたページの文字に胸がドキッとした。


それはまるで予言のようであり、願いとも取れる不思議な言葉。


でももっと不思議なのは、この文字を見た僕自身がその通りになってしまう予感を覚えた事だ。


「……あ!今日から旅行に行くんだった!」


予定を思い出した僕は日記を閉じ、急いで部屋を出た。


でもそれは早く旅行に出かけたいからじゃない。


階段を一段、また一段と降りるたびに心臓がドキドキと囃したて、僕は少しでも早く"誰か"に会いたいと思った。


それはあの日記の言葉のせいかもしれない。




【明日、僕は彼に恋をする。】




~fin~


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