長い一日-3
頭の中がぼーっとする。
上手く呼吸ができないせいか、まだ体が熱いせいか…。
受け入れることだけで精一杯な僕は、彼から与えられる熱に溺れかけ、ただもがいていただけだと思う。
それでも浩祐さんは僕の髪を撫で、幸せそうな笑みを浮かべていた。
「嫌じゃなかったか?」
「え…何が?」
「俺が今"シた事"」
「っ……!嫌なわけ…っ、ない。そっちこそ…どうなんだよ」
「嫌だった風に見えるか?」
「……全然」
「だろ?」
腕枕をしてもらうって変な気分。
居心地が良いような悪いような真逆の感情に弄ばれ、僕が離れようとしても彼は益々きつく抱き締めるばかりで余計に落ち着かない。
でもそれは、お互いに裸だからかも。
「そろそろ寝る時間だな…。お前の部屋に行くぞ」
「…!やだ…、まだここにいたい」
「なんだ?自分の部屋で寝るのが怖いのか?」
「違うよ!そうじゃなくて…」
「だったら何の問題もないだろ。ほら、行くぞ」
眠ってしまえばまた明日が来る。
だけど僕には明日がない。
明日になればまた今日の繰り返しで、どんなに近づきたいと思っても僕は永久に浩祐さんには近づけない。
僕には"今日"しかないんだ。
ベッドから体を起こし、先に着替え始めた彼を睨み付け、僕は1人布団にくるまった。
「ッ……お願い…、僕……もっと浩祐さんの事が知りたい…!」
「…!瑛汰……」
「あんたを…忘れたくないんだ…っ」
分かってもらえない悔しさで涙が滲み声が上擦る。
自分がどれだけこの人を困らせ、迷惑をかけてるか理解はしてるつもりだ。
それでも今、この時を手放す気にはどうしてもなれない。
明日。僕はどうなる?
また家族を失った事実に悲しむの?
またこの人を問い詰めて困らせる?
いっその事────僕も死んでしまえばよかったのに。
その考えで頭がいっぱいになった時、布団越しに僕を包み込む腕があった。
「……俺はさ。自分が、世界一の幸福者だと思ってんだ」