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長い一日-2

"今日"はあと何時間?


半ば無理やり食べさせられた夕食の最中、僕はその事ばかりを考えていた。


そして部屋に戻ると、開けっ放しの窓から入る少し冷たい秋風が開いたままだった日記のページを捲る。


それはまるで、僕に"書け"と言ってるみたいだった。


「瑛汰ー。風呂空いたから入れよ」


「あ、うん。今行く」

ペンを握ってどれくらい経ったんだろう?


ノック音のすぐ後に聴こえた浩祐さんの声に応え、僕は最後に一言を添えてその表紙を閉じた。


明日の僕はこの日記に気付くだろうか?

そしてこの言葉の意味を理解するだろうか?


きっと首を傾げると思う。


「ねぇ、浩祐さん。後で少し時間ある?」


「うん?なんか聞きたいことでも見つかったか?」


「ううん、そうじゃなくて…。言いたい事があるんだ」


「言いたい事…?なんか、(こえ)ーな」


彼は少し笑いながらそう答え、"部屋にいる"と告げた。


正直何を言いたいのか、僕自身も定かじゃない。

それでも今伝えないとこの気持ちは消えてしまう。


もしかすると僕は一人で焦って勝手に思い詰めてるだけで、そう思い込んでるだけかもしれない。


でも仮にそうだとしても……。

手を繋いで帰ってる時からずっと、湧き水のように胸から溢れるこの感情は嘘じゃないと自信を持って言える。


「…浩祐さん。入っていい?」


「おう。適当に座れ」


シャワーを浴びた僕が真っ先に部屋へ向かうと、彼は窓際に寄りかかって煙草を吸っていた。でもすぐにその火を消す。


「悪い。煙たいか?」


「ううん。別に慌てて消さなくても良かったのに…。僕、煙草の匂い平気だよ?」


「ダメだ。匂いが平気でもお前の体に悪いだろ?」


「っ……。浩祐さんってほんと、わけ分かんない…」


「そうか?俺程分かりやすい奴も珍しいと思うぞ」


僕がベッドに腰掛けてそう呟くと、煙草を消した浩祐さんも隣に腰を下ろしてベッドが軋んだ。


そんな僕らの間には遠慮がちな距離が少し空いてる。


彼がわざとその距離感を選んだのはなぜだろう?


もう少し空いてたら何とも思わないのに、手を伸ばせば届いてしまうこの空間は僕を試してる様にも思えた。


「なんだよ、言いたい事って」


「……あんたは……、どうして僕といるの…?」


「…………」


「僕との生活なんて面倒なだけで、一体あんたに何の得が────」


「────言いたい事ってのはそれじゃねーだろ。…言えよ。恐がるな。ちゃんと聞いてやるから」


「…!僕が言いたい事…、"知ってる"んだ…?」


「……知ってる。俺は毎日、そう思わせるのを目標にしてるからな。それに、俺もお前と同じ考えだ。だから…言えよ」


決して近いとも遠いとも言えない二人の間を詰めたのは彼だった。


期待する様な面白がってる様な輝きを持つ瞳に覗き込まれ、僕は心臓が跳ね上がりみっともないくらい顔が熱くなる。


……この人はやっぱり意地悪だ。


「あの…っ、"僕は"今日あんたと会ったばかりだし…、こんなこと言うの……絶対変だと思うけどっ…」


「いいから早く言え」


「っ、僕……多分あんたに……恋、してる」


「"多分"?それは違う。"絶対"だ」


「え────」


急に顔の距離を縮められ、警戒する間もなく唇に温かいものが触れる。

それが何なのか気付いた頃、僕は無意識に彼の首に腕を回していた。

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