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「…………なあ、親友。あいつ俺の正体に気付いていたみたいだぞ」

自分の左腕につけてある時計を覗いてみた。7時38分という時刻は彼にとって特別な意味はなかった。ただ、時間というものが無情にも進むということ以外に関しては。零輝がいなくなった広場で14日月を島田は見上げた。

「お前は間違っているよ。俺は死んだ。でもその理自体は受け止めているんだ」

島田は大きく息を吐く。長年溜めていたものが吐き出たような感覚に陥る。

その体を光がゆっくりと包み込んだ。

「だから。最後に伝えておくことは死ぬな――生きて間違えたことを償ってくれ」

自分の存在意義に納得できた、その男は最後に全身を眩く光らせ、そして消える。

あとにはかつての繁華街をなでる風のみが残った。



探せど捜せど亜緒は見つからない。結局、収穫もなく家路に帰る。

その腰が突如震え出した。

反射的に携帯を取りだし通話ボタンを押す。かけてきたのは周だった。

『もしもし』

「……なあ切っていいか?」

零輝はいつも通りの口調で答える。よくこいつはくだらないことで電話をしてくるのだ。暇でも無視するところだ。ましてや、今日は疲れている。

すぐにでも電話を切れるように零輝は電源ボタンに指をかける。

『とりあえず今病院の近くなんだ!はやく来てくれ』

しかし、その声は逼迫しており零輝はなんとも言い知れない不安に捕らわれた。

「……とりあえず訳を話せ」

『今聞いたとこ…………が殺された、いや殺されかけた!今緊急手術中だ』

嫌な予感は的中する。携帯の電波が途中乱れたが零輝には誰がどういう状況で何が起 こっているのかを大体把握する。

青山との同じ知り合い。そして青山が俺に真っ先に緊急事態なことを知らせる相手。

そんな条件に当てはまる人物は一人しか思い当たらない……!

「場所は?!」

『穴生市立病院!!』

「今行く!」

そう言って、電話を切る。そして、少年は闇に向かって走り出した。

「八重……」

少し涙を目の端に浮かべながら。



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