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失礼します、といって保健室を後にする。
と同時に直ぐさま零輝の後ろから声がかかった。振り向くと筋肉がムキムキな男子と和服の女子一名。
この校舎では関わりたくない人達No.1の姿がそこにはあった。
「レーキ君。あ、あのね。その……い、一緒に」
「心中」
「し、しない……?ってシュー?!」
零輝はため息をついてコミカメに手をやる。思わず、危うくさっきまでのノリで突っ込みそうになったのだ。
ダルそうに話の内容を察知すると一緒に帰ろうという話だと予想がつく。
「周には部活があるだろ?」
「ん、と顧問が大変なことになっているんだって」
「なる程……憐れな」
そう言ってタルそうな目で零輝は周を見る。そして八重頭も同様に周を見た。
「いやいやいや?!ただの出張ですよ!!」
慌てて手 をブンブン振り自分の無罪を主張する周。零輝はため息をつくと前を向いた。
「……悪い。今日は人を待たせているんだ」
「大丈夫!1年なら待つから」
「待て!単位が12倍くらいされていないかっ?!」
「……ん、先帰っててくれ」
「ちゃんと突っ込めよ!」
「…………あんなボケは自分がいかにつまらない人間かを示しているぞ。今の場合突っ込んだらしらけることは確定。もっと時代の流れを読め」
「時代より大切な空気を忘れないで!」
「空気というより話だね」
「お前が振ってきたんだろぉぉぉぉ!」
訳がわからない。しかし、心なしかすこし明るくなれる。
こいつらもやはり替えがたい友人であることにはかわりがないのだ。
零輝はおいおいと泣き真似をする周を見る。
本当に暑くて馬鹿な男だ。
そして、八重頭をみる。赤く頬を染めてチラチラこちらを見ている。
「……ったく」
「どうした?泉田」
「何でもない」
誰にも気付かれないようにニヤリ、と少し笑顔を浮かべる。
そして、三神がいなくなった時。必死に支えてくれようとしたのを知っている。
周は自分を三神化した。当然あいつの完全な真似など出来ない。けど、俺を励ますそれだけのために三神になろうとした。
それは当然誉められることではない。
だけど……
八重もそうだ。
変わっても俺は俺だと思い、慕ってくれている。
何だかわかっていても意識しだすとニヤニヤが止まらない。
零輝はそれを悟られないように大きなため息をつく。いつの間にか待ち合わせ場所にはついていた。
「じゃ、俺は」
「泉田ぁ。こんなとこにいたんかぁ」
零輝が二人と別れようとすると突然間延びをしている特徴的なしゃべり方をする声が聞こえた。
「植野先生」
「おぅ、じゃな泉田」
「レーキ君。さよなら」
どうやら2人は植野を零輝の待ち人だと勘違いしたのか去っていく。否定するのも面倒だったので目だけで二人を見送る。
そして零輝はダルそうに植野の方を向いた。
「……何か用ですか?」
植野はいつからいたのかはわからないが、後ろにいた少女に目配せして少しおどけてかえす。
「お姫様がお待ちでね」
「はあ」
零輝は意味がわからずに曖昧に返すと植野はあとは任せた、と言い残しその場から去る。そして、多分上級生であろう少女が残された。
「…………」
「…………」
お互いに見つめあったまま広がる無音の空間。零輝はまた面倒事か、と少女を見る。
黒い髪を背中まで垂らし眼鏡をかけている。唇は桜色で身長はそこまで高くない。垂れ目のどちらかというと可愛いというより美人さんだ。おっ……もとい胸はそこそこである。
「…………」
「………………」
「……………………」
「……………………何用ですか?」
無言のにらみ合いに結局、零輝は負けてしまい尋ねる。すると少女は制服の胸前に握りこぶしを持っていき
「勝った」
と述べた。
何だか零輝はとても頭が痛くなってしまいコミカメに手をやる。
少女は相変わらず無表情のまま喋る。
「私は栗本和奏」
「……ああ。あの倒れていた子か」
そこで零輝は思い 出す。どこかで見た顔だ、と思ったら4日前に怨念から助けた少女だ。
零輝は今ここに彼女がいる理由を考える。どう考えてもお礼だろう。というか、これ以上の厄介はごめんだからそうであって欲しい。
しかし、その予想は半分裏切られる。
「まずはありがとう」
「……ごめん」
零輝は自分のせいで栗本が魂を削られたのを思い出す。亜緒にこの程度なら弊害は数日間くらいぼー、とするくらいだと助言されても重石は消えない。
「何故貴方が謝るの?理由がない」
「君の魂が削られたから」
「別に気にしないで。助けられただけ」
幸運だった。そう言って栗本は真っ直ぐに零輝をみる。
「君には霊が見える?」
その単刀直入の言い回しに零輝の思考は一瞬追いつけなかった。そのため相手の真意を考えることなく頷いてしまう。
「じゃあ、怨念は?」
「……一応。人を使って成仏を願う霊だと聞いた」
「捕食に関しては」
「人間の魂を霊と一体化させることによって霊の中に取り込み、その人を乗っとることによって再度死ぬ機会を得ようとする行為だったような」
「じゃあ、集合体に関して」
「……怨念が人の体をのっとるためにお互いの魂を存在を融合することだろ」
目的がわからない以上あまり過度に自分が知っているという情報は与えないにこしたことはない。だが、すでに核心的な質問には頷いてしまっている。
それに嘘は嫌いなのだ。零輝は仕方なく知っていること全てをさらす。
それに対して栗本は無表情で手をパチパチと叩くと
「満点」
そう言っ て彼女はトコトコと歩きだした。どうやらついてこいという合図らしいと受けとめた零輝は嘆息しながら後ろについていく。




