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赤銃時弾  作者: 夢魔
6/18

プレゼント

朝、目が覚めると身体は思った通り自在に動き痛みはなくなっていた。

まるで昨日の夜の痛みが嘘か幻のように。

ベットから起き上がると軽く身体を動かして昨日入れなかったシャワー室にいった。

服を脱いでいると

ーーガラァ。

何故かシャワールームのスライド扉が開いて中からタオルを首から下げた裸の唯が出てきた。

豊満な胸を揺らしながらいつもの束ねていた髪は降ろされてストレートになっている。

「お、起きれてんじゃん。おはよー。」

と、至って普通に挨拶してくる唯に頭痛がしなくもないが、流石に慣れてしまっていた。

「はよ。ドライヤーの場所変わったから。」

入れ違いに今度は俺がシャワールームへ入って戸をしめる。

「どこにあるよ〜?」

「上の戸棚に入れた。この間掃除してる時邪魔だったからな。」

「お、あったあった。んじゃいつものとこ置いとくな〜。」

「了解〜。」

などと、ごく平凡な会話をしていた。

これって年頃の男女の対応じゃねぇよなぁ〜。と思いつつ別に今更かとも思ってしまう。


適当に済ませた後、2人で飯(当然唯はラーメン。俺はご飯と味噌汁。)を食って学校へ出かけた。

一応、昨日親父から送られて来た十字架を首から下げて。

男子寮から出てすぐにバス停で待っている男子数名がびっくりしたように目を見開いてこっちを見て来た。

そりゃそうだ。

ここは男子専用(別に決まりはないが。)のバス停に男と一緒に女子が来たのだから目を見開くに決まってる。

「アッハハハ♪毎度の事だけど面白いよねぇ〜この光景♪」

「・・・そりゃ、お前だけだ。俺は気が重くて仕方ねぇよ。」

何て雑談をしているバスが来たので乗り込む。


その後は普通に登校して千花先生に昨日の事についてこってり絞られた。

まぁ命があっただけ得したな。ちゃんと単位もくれたことだし。

そして、放課後になり、昨日借りたままだったバイクを拾って唯と合流した。

「んじゃ、行くか?」

「おう♪」

昼休みの時に要から予備のメットを借りていた俺はそれを唯に渡しておいた。

「13区まではちょっくら距離あるからな。ちょっと飛ばすぞ。」

そう言ってエンジンを吹かしながらクラッチを繋いだ発進させる。

ーー相変わらず良い音するなぁ。


浮島は広くいため一定の感覚で区切られている。

学校がある方が1区で始まり、反対の13区まである。

バイクを走らせて数分後、親父の言っていた鼈甲銀行へ着くとそこは建物全体が黒色をしていて銀行というよりどこかの事務所のような感じがしていた。

2人は路肩にバイクを止めて中へ入っていく。

室内は薄暗いが高級感漂う雰囲気がしていた。

『ご用件は何でしょうか。』

防弾ガラス越しから無線を通して話しかけて来たのは黒スーツを来た少し大柄な男だった。

「親父・・・相楽 拳針の荷物を受け取りにきた。」

親父の名前を出すと男は『少々お待ちください』と言って何処かへ内線を通じて電話しだした。

俺はつい癖でその男を読唇する。

『オーナー。相楽 拳針様の荷物を受け取りにきたと言う方がいらっしゃいました。』

『・・・はい、はい。分かりました。』

オーナーに内線?

そんなに大事なもんでも隠してんのか?

『お待たせしました。今ドアを開きますので右手の奥へお進み下さい。』


ガチャンッガチチチーープシュゥゥ。

という、やたら厳重そうな機会音が聞こえて中へ入っていく。

奥に入ると、そこには一本の通路があり、階段下へと繋がっていた。

「なんか、すごいところ来ちゃった?」

「かもなぁ・・・」

唯の問いかけに同意しながら進むと、貫禄のある巨体をした男が待っていた。

「ようこそ。相楽 京介君。私は拳針の友人。橎堂(ばんどう) 善正(よしまさ)だ。今はここのオーナーを勤めてる。」

自己紹介しながら握手を求めて来た彼はやっと会えたと言わんばかりの笑みをしていた。

握手に応じて手を握った瞬間ーーあぁ、親父の友人ってのは間違いなさそうだな。と実感した。

彼の手は独特のゴツさがあったが、その硬さはアサルトライフルAK47をずっと使い続けていた名残があったからだ。

使う銃によって手にはその銃の特性が染み付く。

それを昔親父に教えてもらい、親父の手にはしっかりとその感触が残っていた。

それが彼の手にもあり信用出来ることがわかった。

「どうも。あ、コイツは俺の付き添いで・・・」

「武藤 唯です。」

「武藤・・・?ひょっとして武藤(むとう) 花奏(かなで)さんの娘さんかな?」

古い記憶をこじ開けるようにして橎堂さんは唯に尋ねる。

唯も若干驚いたように目を見開いている。

「そうですけど・・・母を知ってるんですか?」

「おぉ!やっぱりそうだったか!あぁ知っているとも。彼女も私の大切な友人・・・いや、戦友だ。今もお母さんは元気かね?」

その質問に唯は暗い顔をして黙りこんだ。

橎堂さんはどうしたのだろうと不思議そうに顔を傾けている。

仕方ない、説明するしかないな・・・

「橎堂さん。実は唯のお母さんは、今行方不明になっているんです。」

「・・・なに?」

「去年、引退したはずの花奏さんの元に国防省の人が来て一つの封筒を渡して行きました。花奏さんはそれを見るとその日の内に何処かへ消えて行ってしまいました。一つの痕跡も残さず、まるで最初からそこには居なかったかのように姿を消してしまったんです。」

事情を説明すると橎堂さんは信じ難いといった顔つきで考えこむ。

「・・・彼女は、優れた狙撃手だった。それも異常な程に。敵からは『魔弾の射手』と呼ばれ恐れられた程だ。そんな彼女の腕を買われたのだろうな。」

魔弾の射手。

意のままに命中する弾として7発中6発は自分の望む場所へ行くが最後の一発は悪魔の望む場所へ命中するという、ドイツの民間伝説として言い伝えられる話だ。

ちらりと母の事を教えてくれた橎堂さんに唯はいち早く反応した。

なぜなら俺と唯は自分の親の事を正直詳しくは知らない。

だから、母が行方不明になっていることよりもそっちの方へ反応した。

確かに唯は突然おばさんが居なくなった事には悲しんだ。

何日も泣いてしまうほどに、だ。

だけど、任務で居なくなったのなら終わったら必ず帰ってくる。そう信じている。

「あの、橎堂さん。良かったら今度、母の話を聞かせてくれませんか?」

「え?それは構わないが・・・」

「大丈夫です。母はその内帰ってきます。ふらりと、何処かへ消えたのなら、ふらりと何事もなかったように帰ってくる。そういう人ですから♪」

橎堂さんは目をキョトンっとさそたが、すぐに大笑いしてこりゃ一本とられたと言わんばかりの笑いをした。

「あぁ、君が良いのならいくらでも。もちろんその時は拳針の話もしよう。」

「「ありがとうございます。」」

俺と唯はそれが嬉しくて思わず声が弾んでしまった。

「さて、京介君。君への贈り物だが、こっちへ来てくれ。」

通路の先へと案内されながら先へ進み、着いた場所はどこかのBARのような広く、隅にはカウンターが置かれ、クラッシックな作りをした場所に着いた。

橎堂さんからはここで待つように言われてカウンターの席に座って待つ事にした。

「『魔弾の射手』だってさ、ウチのお母さんは」

「かっこいいじゃねぇか。」

「カッコよ過ぎだろ?」

「まぁな。この分じゃウチの親父も酷い名が通ってそうだな。」

「確かに♪」

そんなやり取りをしていると、重そうな金属のボックスをキャスターに載せながら運んで来る橎堂さんがいた。

「少し待たせたね。京介君。後は君の仕事だ。」

ボックスには暗証ロックとその横にちょうど今首から下げている十字架と同じサイズのくぼみがあった。

俺は首からそれを外してくぼみに差し込むと電源が入ったように暗証番号を入力するようランプが点滅する。

確か、0805だったよな。

入力し終えると箱はガチッと音を立ててロックが解除された。

蓋を開けるとそこには、2丁の拳銃が入っていた。

1丁は自動拳銃(オートマチック)漆黒のボディに黒塗りのナイフが内蔵されたMK.23がベースに作られた銃。

1丁は回転式拳銃(リボルバー)白銀のボディに純銀のナイフが内蔵されたトーラス・レイジングブルをベースに作られた銃。

それらの専用ホルスターと手紙が入っていた。

『この銃は私が現役時代に使っていた物だ。漆黒の銃は「ジャッカル」。

白銀の銃は「カーリー」。

お前ならこの銃を使いこなす事が出来る。

なんたってお前は俺の息子だからな。』

ーー何だよ、コレ。

何いい歳こいてかっこ良いこと言ってんだよ、あの馬鹿親父・・・

感動しながらもその銃を手に取る。

右手にジャッカル・左手にカーリー。

どちらも大型拳銃で扱うのは至難の技だろうが、親父が寄越した銃だ。

使いこなしてやる!

「その銃は・・・生半可な覚悟じゃ使う事はできないぞ。」

その姿を見た橎堂が懐かしい物を見たと言ったように厳しい言葉ながらもどこか楽しそうに問いかけてきた。

「分かってます。でも、親父がこいつを俺に託したんです。だったら使いこなさなくてはいけない。ーーそして俺もこいつを使いこなしたい。」

一切の迷いのない思いを告げると良い答えだと言いた気に右の口角をあげて笑ってくる。

それにしても、よく笑う人だなぁ。

「なら、そいつの使い方を教えてやらねばな。ーーそうだな、私の行きつけの喫茶店が向かいにあるからそこで話そうか。」

提案されて3人は鼈甲を出て向かいにあった喫茶店「ワーカーズ」に入っていった。

店内はシックな感じに作られて落ち着いた雰囲気が漂っている。

橎堂さんいわく、ここはコーヒーの専門店らしい。

奥の4人席へ座ると橎堂さんは椅子の方へ座り俺と唯は対面の長ソファに座った。

「2人は何にする?ちなみにここのパフェとオリジナルブレンドはオススメだぞ♪」

メニューを眺めてる最中にそう言われるとまるで

それで決まりだな。

と言われている気分になったが、特に他のを選ぶ理由もなかったのでそれにした。

「さて、まずは拳針の話をしようか。」

コクリと頷く俺らを見て橎堂は話を続けた。

「そのジャッカルとカーリーは私と拳針、花奏ともう1人が一緒にPMCで組んでいた当初から拳針が使っていた物でな。アイツ近接戦闘を最も得意としていた。」

そこで橎堂は話を区切ってメニュー表と一緒に置かれていたナプキンを一枚取り出して胸ポケットに収まっていたボールペンでサラサラと綺麗な字で何かを書いて見せて来た。

「アイツは自分の技を『拳銃』ではなく『剣銃』と呼び、オリジナルの剣銃格闘技『零』を作り上げた。」

ナプキンに書かれたそれを見せて分かりやすく説明する。

「零は近接戦闘では最強の名を誇ったが、アイツ以外誰もその技を習得することは出来なかった。いや、習得しようとすら思わなかった。だからやる事もなかった。」

「やる事もなかった?」

まるで初めから諦めていたような言いぐさだった。

「あぁ、戦場では拳銃は最も価値が低い。なぜなら拳銃はアサルトライフルに比べ威力・精度・射程距離・装弾数。その全てが少ないからだ。」

そこでウェイトレスが注文したコーヒーを持って来て、橎堂はそれを一口飲む。

「遠くから飛んでくる銃弾の嵐の中を君達なら突っ込みたいと思うかね?」

俺たちは同時に首を横に降ってそれを否定する。

当然だろう。

完全装備をしていても自分から自殺しに行くような真似はしたくないのだから。

「だが、奴はそれをしたのだ。私達の援護があろうが、なかろうが彼はその死の嵐に突撃して敵を蹴散らして行った。拳銃の射程距離に入ってもまだ近づき、撃って来る奴との距離が零になってようやく銃を使う・・・それが奴の戦闘スタイルであり、君がやろうとしているスタイルだ。」

ギロリと鋭い眼光が目を光らせてくる。

その瞳には強い意思と殺気が感じられた。

ーーゴクリ。

生唾を飲み込み、呼吸すらままならない。

だけど、ここで引いてしまったら絶対にいけない。

引いたら俺は戻れなくなってしまう。

「ーー俺は親父ではない。だからその零を使いこなすのは難しいかもしれない。だから、俺はコイツを使って新しい零を作り上げ、それを使いこなしてみせる。」

その回答には予想もしていなかったように橎堂さんは目を見開いた。

「面白い。なら、それを使いこなしてみせると良い。・・・参考までに教えておくが、何故一丁がリボルバーなのかよく考えるのだな。」

それは気になっていた。

どうして、ジャッカルと同じようにオートマチックではないのだろう、と。

その時はリボルバーの方が威力が高いからだと考えたが、この言い方からしてどうやらそれは違うようだ。

コーヒーを飲みながら橎堂は話を切り替えて唯に向き直った。

「花奏のことだが、さっきもちらっと言ったが、彼女にも二つ名がつけられていた。それが『魔弾の射手』と言われる異名だ。彼女は狙撃手としては天才的で彼女の『狙撃範囲』は実に4.4kmと言われていた。」

「4.4?!」

唯は驚いて食べていたパフェのスプーンをテーブルから落としそうになり、慌てて拾い上げる。

狙撃範囲とは様々な呼び名があるが、PMBではそれを狙撃範囲と呼んでいる。

それは狙撃手が撃てる範囲の事を示すが、自分を中心にした周囲4.4km全てが何時でもどこでも狙撃出来ることを示している。

「遮蔽物へ隠れようと跳弾により狙撃され、防弾ガラスの中へ入ろうと一箇所に集弾を受けて壊される。どこへ行こうと、どこへ隠れようとそのエリアにいる限り逃げ道はどこにもない。故に『魔弾の射手』と呼ばれていたのだ。」

ポカーンと、アホみたいに口を開けている唯にを見てさっきの自分もこんな顔してたんだな、と苦笑した。

「あぁ、そうだ。二つ名と言えば拳針にもあったな。確か『黒き者』と呼ばれていた。」

「黒き者?」

「そうだ。血と酒と殺戮を好むとされるインド神話に関する女神の事だ。」

女神と聞いた瞬間、思わず笑ってしまった。

「女神かッ!確かに似合ってるなッッ」

ヤバイ、笑がこみ上げて仕方ない。

横では唯も必死に笑を堪えているが、橎堂さんなんて爆笑していた。

す、すまん親父。今回ばかりは本当にすまん!

親父はびっくりする程に童顔で顔立ちも整っているせいか、タバコを吸っている所に警察が来て未成年者喫煙禁止法に基づき検挙されるていた事もあった。

「当時、俺たちは拳針にその二つ名がつけられて由来が気になって花奏が調べたんだ。そしたら、ククッ女神だと知ってアイツはしばらく笑い者になって話のネタにされてたな。」

懐かしそうに語る橎堂さんは本当に楽し気に話してくれた。

そして話を聞いているウチにだんだんと親父たちが組んでいたチームの事が気になり聞いた。

「橎堂さんには二つ名があったんですか?」

「私か?私にはなかったよ。あったのは拳針と花奏だけだ。あ〜、でもアイツにもそれらしいものがあったな。」

「アイツ?」

「君達も聞いた事があると思うが、名はボルクス・バーゲンまたの名を『ヘルハウンド』」

「!!」

『ヘルハウンド』

その名を知らない生徒は誰もいないという程有名な世界的犯罪者。

アメリカ大統領の暗殺で始まり飛行機ジャック、爆破テロなどの悪の尽くす限りして今も逃亡中の凶悪犯罪者だ。

「・・・かつての戦友が今や世界的大犯罪者として名が知られているのは残念な事だよ。」

その顔は残念というよりも悔しそうな顔をしていた。

「・・・何があったんですか?」

恐る恐る聞いてみると橎堂さんは首を横に振るだけだった。

「分からない。アイツに何があったのか、何故こんな事になったのか。それは我々にも分からないのだよ。ただこれだけは言える。アイツともし君達が出会う事があったのなら絶対に逃げるんだ。」

念を押すようにそう告げられて俺たちはただ黙ってそれに頷くしかなかった。




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