第三話
レオは仕方なく家に戻ることにした。少ししか出歩いていないのに、かなり疲れがたまっている。家に入るとき注意深く中を見渡したが家の中には誰も居なかった。もしかしたら、誰か優しい人が俺をこの家で看病していたのでは無いか、と思ったのだ。誰も帰って来ないなら、家はきっと自分の物だろう。
さて、とレオは椅子に座った。これから、どうすればいいのか。
記憶を無くしている人間は意外にも冷静だ。レオは机に肘を着いて顎を支えた。色々考えなきゃいけないことが沢山ある。俺が誰なのか、なぜ村人はあぁなのか。ふうっとため息をつく。起きてからかなりの時間がたったが空は今だに青であった。
「夜はまだなのか……?」
夜が来ないことに恐怖は無かった。別になんとも思ってなかったのだ。さて……あの黒い四角い物が何なのか……
あれ?ふと、レオは思った。
なぜ、俺はこの空がいつか暗くなることを知っているのだろうか?俺がたとえこの国の人間じゃないとしても、空はどこに住んでいたって、共通だ。俺は生まれてからこの夜のやってこない空しか見ていないはず。どこか違う星から来たのなら別だが…。まず、そんなことはないだろう。いや、何か書物を読んだのかも知れない。
しかし――――…見ることは不可能だろ……?
何かが変だ!
バッと立ち上がってレオは気を失った。
そして、この世界を知る。
気が付くと体中が汗で濡れていた。レオは椅子から転げ落ちたようでひんやりした床に倒れている。
「………そんなことってあるのかよ……」
頬から涙が零れ落ちた。