出会いは偶然
宇宙船の中には僕達以外に5・6人乗っていて、皆大型の鞄を足元に置いていた。
宇宙船の中を初めて見るから、どういうものだろうと緊張していたのだがなんら普通の飛行機と変わらずに少しガッカリした。
「ねぇ、私達の席どこよ?」
晴海はさっさと腰を落ち着けたいらしく、さっきから足をもじもじさせながら僕の横に立っている。
宇宙船は考えていたより小型で縦3列、横2列、計12人乗り用で設計されたようで、僕達は最後尾の右側の席だった。
「ほら、あそこの窓側だよ。僕はトイレの場所とか知っておきたいから、荷物持って先に行ってて」
「OK。了解したよー」
2つのトランクを持って晴海はさっさと行って、わー椅子ふかふかだー、と子供のようにはしゃいでる。
僕は宇宙船の奥の方に備え付けられた簡易トイレの場所を確認し、席に戻ろうと思ったが船長達がいる操縦席に行ってみようと思い直し、1番前にある操縦席に行ってみると先に誰かいたようなので、後からにしようと思っていると中から話声が聴こえてきた。
「この薬があったなら……というのか?だが、だとしたら、あなたは」
船長と思わしき声は聴こえるが、もう一人の話てるであろう人物の声は聴こえなかった。
「確かに、これは素晴らしい。だが、……に変えてでも欲しい訳ではない」
「どうして、あんたが娘の事を知ってるんだ!!」
「ちくしょう、ちくしょう!解ったよ、あんたの条件を最低限飲もう」
船長と謎の人物の声はそこから途切れてしまったため、僕は一抹の不安を感じながらも自分の席に戻った。
席に戻ると、晴海が近くの席の金髪の若い男に絡まれて困っていた。
というか、男が喋ってる言語が日本語じゃなくて英語なので解らなくて困っているらしい。
「ねぇ、この人何て言ってんの?」
僕の脇腹を人差し指でつんつんと突っついて聴いてくる。
「君はどこの大富豪の令嬢か?だってさ」
「え、えぇ~私令嬢なんて凄いもんじゃないよー」
僕はそれを翻訳して伝えると、外人は少し驚いたようだった。そして
「だったら、どうしてこの船に乗れているのか?ってさ」
「さぁ、私もよく解んない。お父さんのコネだと思うよ」
男の顔は少しは理解したという感じで、次いで自己紹介をした
「俺の名前はレディ・ゴードンだ。アメリカの政治家の息子で、この船には金を積んでもらって乗ったよ」
男はこの船に乗ってる人達にも詳しいらしく、僕達に説明してくれた。
曰く、この船に乗っている人は皆国籍が違うらしいが着てるもの、持ち物、などから全員がどこかの大富豪であることには間違いないらしかった。