居間は過去に繋がる
その晩、夜遅くに晴海から1本の電話が入った。
えらく慌ててるようで、発したい言葉に口が追いついてなくて何て言ってるのか理解が出来ない
「ねぇ、晴海落ち着いて。何て言ってるか解らないよ」
電話口から深く息を吸う音が聞こえてくるから、どうやらこっちの声は聴こえたらしい。
「あ、あのねお父さんからで、電話があってね。明日アメリカに物資を運びにいった宇宙船をそちらに回すから、準備しておけだって」
別に慌てるほどの事でも無いきがするんだけど……
「わかったよ。用件はそれだけ?」
晴海は一拍おいて声を震わしながら、囁いた
「テロが起きたらしいの」
背骨がスッと冷えていき、手には変な汗が浮かぶ。
「私達が聴いた音もそのときの音らしいよ」
そしてそれから先、晴海が言った事を僕は覚えてない。
そのとき僕は、真っ白になった頭の中で呼び起こされる記憶に脳内を満たしていった。
大きな旅行鞄を持って別れのキスを僕にして2人で腕を組んで出てく両親
両親が出て行った後にきた新聞に書いてあったテロ事件
そして、不気味と感じた着信音
「あなたの両親が乗ってた宇宙船がテロにあい―」
フリーズする思考。視界に映るもの全てが歪む。そして
「お亡くなりに、なりました」
僕は絶叫した。
脳内に溢れていたものが静まると、大分落ち着いてきた。
「ねぇ、大丈夫?私の話聞こえてる?」
冷たい受話器から聴こえてくる晴海の声が今は温かい。
「うん。大丈夫だよ」
そう、なら良かった。と晴海が言ってる姿が眼に浮かぶ
「じゃあ明日荷物を纏めて、12:00に学校ね」
OKと返事をして受話器を置いた僕は、今まで温かかった部屋が急に寒さを思い出したかのように感じた。
それから、教科書、参考書、思い出の品々などを鞄へ詰めて、最後の1夜を過ごした。
翌朝
荷物を纏めて、いつもよりゆっくりと玄関へと向かう。
1歩踏みだす度に、まだこの家が温かかったころの思い出が溢れ出しては、消えてく。
門の前で立ち止まり、振り返り仰ぎ見た家は最後の家主を堂々と送り出そうと頑張っているように見えた。
これから滅び行く地球と共に風化して行き、また自然に戻るのだろう。
そう考えると自然と歩みは速まった。
「ありがとう」
そう言って、待ち合わせ場所へと向かった。
今晩4話書きます