春の日差しの中で
僕の通う校舎は1階建てで築50年くらいはたっている。
今は南側の陽がよく当たる教室に、机を一つと教壇を1つ置いて勉強するのに使ってる。
教室は春の暖かな日差しのおかげで、適温くらいに温まっていた。
「では、今日も始めましょう。姿勢、礼、おはよーございます」
「おはようございます」
どこの学校でも恒例の朝の挨拶を済ませ、席に着く。
「今日は火星移住計画への歴史についてやりたいと思うけど、いい?」
「うん。いいよ」
2人きりの教室の中でサラッと教科書を捲る音が響いて、消えてく。
「地球の逆行化が始まったのが今から15年前、西暦2060年の事ってのは基礎知識として……じゃ、火星移住計画は誰が言い始めたか解る?」
ピシッと晴海が僕を指名する。
「確か、当時のアメリカ大統領のミルマンさんだったけ。貧困問題を片っ端から解決していった」
「そう。でも皮肉な事に、地球逆行化の後押しをしたのも彼女だったよねっとこの話は置いといて」
晴海は科学の資料集を取り出し、捲る。
「当時既に火星への調査は人が住めるという確証は得ていたけど、ここで一つの問題がうまれたの。
それは、火星に全人類が住める訳では無いと言うこと」
そう、それは当時TVでも大きな話題になったと聞いた事がある。そして、それを解決するために犯した人類最後にして最悪の悲劇が起きたとも―
晴海は声のトーンを落とした。
「作戦名テペストルボーン。火星移住において、残した兵器が悪用されないようにと表向きは兵器の処理だったけど、実際は敵対国同士の戦争へとなっちゃった。そして、半分以上の国や人が死んでしまったのよ」
そうして、生き残った人は罪や罪悪感をこの星に置いて、別の星へと渡りのうのうと生きていく。
馬鹿げてると思うが、僕も生きている以上彼らと同じなのだと思うと気が沈む。
と、そこまで説明したところで休み時間と決めてある時間へと入る。
「休み時間どうする?」
「そろそろ食料無くなってきたから、適当に取りに行く」
「じゃ、私も行こうかな。今日は美味しい物見つかるといいね」
食料といっても、道端に生えてある草や茸や果物なのであまりいい物は期待できない。
僕達は互いに食べた美味しかったもの、不味かったものの情報を交換しながら食料を授業そっちのけで夕刻になるまで探し回った。
そして、校舎へと戻り鞄を提げ帰ろうと机の上に置いてあったラジオに手を伸ばしたとき
ジィ…ジィジィ…と音がしてその後に大きな爆発音が何回も轟いた。
僕は驚いて小型通信機を手から滑らしてしまう。
小型通信機は落下の衝撃で破損してしまいもう音を出すことは無かった。
「先のって、火星との連絡用のだよね!一体火星で何が起こったの!?」
「僕に聞かれても解らないよ。ただ只ならぬ事が起こってるとしか」
帰り道では、お互い言葉を交わさず先のラジオの事を黙考していた。
補足説明
貧困問題を解決するために工場や室内栽培が出来る施設を用意したが、それにより今までCO2を排出しなかった国までもがCO2を排出するようになり結果、地球の逆行化は加速した。