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第三話 ヒーロー的なあれ

第三話 ヒーロー的なあれ

 

 「うぇぇえ!?何あれ」

 化け物だ。

 なんか化け物が空から降ってくる。

 「物怪だ。取り敢えず俺に任せ——」

 「とりゃぁぁぁあ!」

 メノがなんかワチャワチャどやっているのを傍目にミコトは道端に落ちていた大きめの木の棒を拾い降ってくる化け物に向かってぶん回す。

 メキッと音がしたあとバキバキ、と木の折れる音とともに化け物が吹っ飛んで電柱に当たった。

 ぱちぱちと火花が散る。

 「ふぅ……」

 私……強いかも……!

 「どうよ!」

 折れた木をぽいっと捨て振り返るミコト。

 「いや……どうよもなにも……」

 メノが凄い顔で、ドン引きしたような顔でミコトを見ている。

 なんやね、失礼な——

 「ゴリラ娘ある。」

 チャイナえせ江戸っ子野郎が何やら肉まんをもぐもぐしながら言った。

 今なんつったよこれ。

 「ふんっ」

 ミコトは思いっきり頭目掛けてチョップした。

 「痛いある何するあるさァ!」

 肉まんを加えたままチャイナえせ江戸っ子野郎がこちらを睨む。

 「さすが俺の娘!」

 「うっさいハゲ!」

 誇るハゲ親父。

 ミコトがキリッとそちらを睨んだ。

 「お父さんに向かってその態度は無いぞ。お父さん仕事行くからね。仲良くしなさいよ。」

 「はいあるー」

 「ほーい」

 って!

 なんでお前らが返事するんか!

 返事をしたのはミコトではなくチャイナえせ江戸っ子野郎とメノだった。

 「ああそれと兪王(ゆわん)、そいつ神だから、敵だから斬っていいぞ。」

 「えっ?」

 「は?」

 「わかりやしたあるー」

 え?

 ミコトとメノが聞く間もなく親父はすたすたと去っていった。

 「おーいお前、守人だもんな。まさか主を裏切ったりしないよね」

 ささーっと不安げな表情……なんかとてつもなく不振な笑みでメノがチャイナえせ江戸っ子野郎の顔をのぞき込む。

 「斬るある。」

 「ぎょえっ!?」

 ぎょっと驚いた後にメノはしょげて体育座りをして顔を埋めうなだれ出した。

 「何この神様しょぼ!?」

 多分つっこんだら負けなのに思わずミコトは突っ込んでしまった。

 「あとお前じゃないあるさァ。名前は兪王(ゆわん)ある。」

 口の中に肉まんを放り投げながらチャイナえせ江戸っ子野郎……兪王と名乗る少年が言った。

 「……そうかい兪王くん嘘だよね、今日ってエープリルフールだよね。」

 げっそりした相変らず不信すぎる笑みをうかべたメノが兪王にしがみつく。

 「嘘じゃないある。さっさと斬られるよろし」

 「よろしくないから!斬られないから!」

 「斬っちまえー。そんな使えない詐欺師斬っちまえー。」

 ないす兪王とやら。

 ミコトが兪王に向かってないすとやる気のない声で言った。

 よく良く考えればこの詐欺師が全部悪いきがする。

 「ねえなんで俺神なのに守人と依代に殺されそうになってるの!?」

 「神なら斬っても大丈夫だと思う。」

 「こっの罰当たり!が!」

 ぽかんとメノがミコトの頭を軽く叩いた。

 「後ろにいるあるでぇ」

 兪王がミコトとメノの後ろを指さしながら表情一つ変えずに言った。

 先程ミコトが倒したはずの物怪がこちらに向かってきている。

 兪王の指さす先を見るまでもなく物怪はミコトに襲いかかる。

 「えっ!?」

 「馬鹿頭下げろ!」

 ミコトがどうしようもなく咄嗟に頭を抱えしゃがむ。

 兪王はパタパタと飛んでいく鳩を眺めながら肉まんを食べている。

 メノが足を後ろに体制を整える。足元の雪がさざっと崩れた。

 そしてそのままナイフを何も無いところから出し握って物怪へ斬りかかる。

 物怪は真っ二つに切り裂かれそのまま風に乗って消えていった。

 「ったく、あぶねえ。これだから最近のは」

 やれやれとナイフを空中に飛ばし消してメノが言う。

 「さっき私が倒したやつ……!」

 少し呆然としていたミコトだがはっとしたように指をさして言った。

 指さした先、先程の化け物は跡形もなく消えていた。

 「ゴリラに復讐しに来たあるさぁ……」

 「む!」

 恐ろしいあるよと呟く兪王の方をミコトが睨む。

 「あいつらは物怪。そんな簡単にゃいかねえの。」

 やれやれと腰に手を当てながらメノが告げる。

 「ん?というかさっきから訳が分からないんですけど……」

 ミコトが腕を組みメノの方へ顔を近づけ睨む。

 「侍の娘なのにそんなのも知らねぇあるとあ……」

 もぐもぐと肉まんを食べながら兪王が驚いたようにミコトを見つめる。

 「教えてやれよ、ゆー……じゃなくて兪王」

 「人の名前間違えるたぁ失礼なヤツある!」

 そう文句を言いながらも兪王が仕方ねえあると説明を始めた。

 「まずあいつは自称神を名乗る永遠人とわびとっていうただ寿命が長ぇだけの種族ある。そんで——」

 「ちょっ、ちょっと待って!」

 説明を続けようとする兪王をミコトが一旦ストップと止める。

 「なんある説明しろとかやめろとかめんどくせぇあるなぁ」

 頬を膨らませる兪王。

 「え?自称神って本当に自称だったの?ただ寿命長いだけ……」

 「その通りだ!でも俺は神だ!最初にそう言ったのはお前ら人間だからな!」

 珍しがってそう呼んだんだろとメノが言った。

 「それでここ、日輪帝国の正式契約された永遠人以外は日輪帝国の敵だから斬るある。」

 「ちょっとまって話が変わった物怪は!?」

 「ツッコミどころそこかよ!おい!ここはあれだろ?なんかほら、なんで敵なの!?とかさぁ……」

 メノがおいおいとツッコミを入れる。

 太陽が雪を少しずつ溶かしている。

 「そっか。ついでになんで敵?」

 ミコトが面倒くさそうに聞いた。

 「日輪帝国は今帝国主義国として地球の国家統一を目指してるある。他の国との勢力争いで向こうもこっちも身体能力の優れた永遠人を使ってるある。帝国に反乱されたらたまったもんじゃねえあるから管理してるあるよ。日輪帝国の永遠人以外はてきあるさぁ。」

 さらっと肉まんを食べつつ説明した兪王。

 ここ、日輪帝国が他国と勢力争いで常に戦争中であることは誰もが知っている。もちろんミコトもだ。

 日輪帝国軍が主にその最前線に立ち、ミコトの父である侍たちもその組織の一部ではあるがこちらは細かい治安維持のための地元の駐在さん組織のようなものなので野放しである。

 「少し昔話をしてやろうか」

 にやりとメノが二人を見た。

 

 大昔、地球に突然生まれた永遠の命を持った永遠人。

 彼らは孤独で生涯何万もの命を見送ってきた。

そんな彼らは少しづつ自分と同じ存在に気が付き団結して行く。

 歳を取らないことに疑問に思った人間が彼らを神としたことが彼等が神を名乗ることの始まり。

彼らは人と同じように生きる方法、人になる方法を探していた。

そしてそんなある日、契約を編み出す。

人と契約することで人になれるのではという考えからだ。

 契約することで自由は少なくなるが強い力を持つことが出来た。

 それは契約した人間も同じで力を持つことが出来た。人間は争いにそれを使いたがった。

 彼らの事情を知った一人の錬金術師が三種の神器を創り出しこの神器を使った一人のみが人になれること、それは人が持つことを告げどこかへ失踪。

 彼らは長年一緒に居た仲だからと争いを拒み皆が幸せになれる方法を考えていたが先代の月の神を名乗っていた、永遠人をまとめていた者が殺された後、永遠人達はバラバラになった。

 

 「それで俺は人間になるためその神器を探している!」

 一通り話し終えたあとメノが告げた。

 「もちろんタダでとは言わない。」

 「なんで人間になりたいの?」

 「さあな」

 「条件はなにあるか?」

 「俺の望みが叶えばお前らの願い一つずつ叶えられる」

 ふふん!とメノがドヤ顔で言った。

 「よっしゃ乗った!!そんなのすぐに見つかるよ!」

 「願い叶えるあるね!ほんとあるね!」

 二人が目を輝かせながらメノの方へ駆け寄る。

 先程までの疑心暗鬼の目はどこへやら。

 「おうよ!この神様メノに任せな!」

 そうして、三人は契約を結び、ここから物語が動くのであった——。

 「であった——じゃねーよ!」

 なんとも酷いまとめにミコトが全力ツッコミを入れメノをぶつ。

 「は!?なんで俺!?」

 メノが驚いた顔をする。

 「まず、物の怪ってなに?」

 「ああ?そんなん一話から読んでれば察しがつくだろうが。」

 「そうある。漫画全盛期の平成のアニメみてりゃ大体こんな敵がうようよしてるあるさぁ。」

 メノと兪王がけっと言葉を吐き捨てた。

 日の温かさで溶けた雪で地面が濡れている。

 「えぇ……」

 「まあ要は、死霊みたいなもんだ。」

 呆れたようにメノが説明を始める。

 「死んだ人間は生きている人間が羨ましい。だから生きている人間を恨む。それだけだ。」

 「それが、物の怪?」

 「その正体あんまよく分かってねえ人間様がむかーしそう読んだわけ。物の何かとか思ったんじゃねえの?意味はあんまねえよ」

 急にやる気のない投げやりな態度でメノが言って話を終わらせた。

 「でもなんでメノがそれを倒すの?別に捜し物してるだけなら関係ないんじゃない?」

 「こいつら長生きだから余計恨まれるあるよさぁ」

 相変わらずテンションの低い声で兪王が答える。

 なんだかんだで答えてくれるこの子はただのツンデレ説、とミコトが心の中にしまい……切れず頭の中でデレる兪王を想像しようとするもこのムスッとした顔からは何も浮かばなかった。

 「それに時には金になるからな!」

 メノが何度目かのドヤ顔で偉そうに言った。

 「特に物の怪に困ってる婆さんとかは金になるぜー。神様ーって崇めてくれる」

 「よし、兪王くんこの人倒すよろし」

 そんなメノを見てミコトがチャイナ口調を真似して真顔で告げた。

 「任せるよろし」

 兪王が太極拳のように構える。

 その目は確かにメノを捉えている。

 「よろしくない!ねえこの子本気だよ、ねえ、おかあさーん?お宅の子暴力沙汰起こそうとしてるわよー!?」

 そんな兪王を見てメノが慌てた様子でボケにはいる。

 「ぐだぐだと話進まねえあるさぁ。絶対読者飽きてるあるよさっさと終わらせるよろし」

 すらすらと言う兪王。

 「うるせーよこれはこういうぐだぐだな物語なんだよ文句あるやつはとっとと帰れ」

 「そんなこと言ったら誰もいなくなっちゃうじゃん」

 「……」

 ミコトの的確な私的にメノが空を見た。

 何事もないとでもいいたげな感じに。

 「だいたいさ——」

 メノが諦め何かを話しかけたその時、視界から兪王が消えた。

 かと思いきやメノの横に居た。

 サッと横に入り込んだ兪王がそのまま勢いに乗り足を上げメノに蹴りを入れる。

 「危ない!」

 顔面に蹴りを入れようとしている兪王を見、割と冗談で言っていたミコトは兪王の本気の殺意に驚き叫ぶ。

 「お終いある」

 ハイライトの消えた殺意の籠った瞳でメノを捉えた兪王は小さく呟き顔面に蹴りを入れる。

 「っ」

 しかしその蹴りはメノには当たることなく電柱に当たった。

 そして蹴りの入ったところから電柱が吹っ飛んだ。

 亀裂が入って徐々に折れる……ではなく気づいたら折れて吹っ飛んでいたのだ。

 兪王はゆっくりとその場にしゃがむように軽快に着地した。

 「あ……あっぶねぇ……」

 ビビった顔でメノがおっかねえと兪王を見る。

 口は間抜けに空いている。

 「あんな一瞬で避けた……」

 そんなメノをミコトが驚いた顔でまた見た。

 「あいやー……」

 相変わらず表情ひとつ変えずに失敗したあると兪王がゆっくり顔を上げる。

 電柱が吹っ飛んだせいで周辺には雪と細かくなったコンクリートや煙が舞っていて、断線した電線からはぱちぱちと火花が散っている。

 「兪王君……?」

 その後の沈黙の中で恐る恐るミコトが口を開く。

 「まだお師匠さんに勝てないある。」

 どこから取りだしたのか肉まんをもぐもぐ食べ始めながら兪王が言う。

 「お師匠さん……ハゲ親父のことだよね」

 「ああ、あのハゲか」

 ミコトとメノが頷くを

 「あいつに勝ったらそこのゴリラ娘も倒すあるさぁ」

 「えっ!?」

 もごもごしながら指さされミコトが聞き返す。

 「日輪帝国の軍神じゃねぇ神は斬るって決まってるある。それと契約を結んでるお前も倒すあるよ。でもお師匠さんを倒してからじゃないとバックにつかれちゃ困るある。願いは惜しいあるが三種の神器なら自分で見つけるある。そこの自称神を倒せば情報網広げてもらえるあるさぁ。」

 「もしかしてお前……最初から……」

 まさかとメノが他人事のような顔で肉まんを食べている兪王を睨む。

 「神器の存在くらい知ってるある。」

 そう言い肉まんを食べながら、またくるあるよーと軽く言い兪王はその場をゆっくり歩いて去っていった。

 一瞬の出来事すぎて唖然とするミコト。

 「ちょっと待って、あんなに強いんじゃあハゲ親父あっという間にやられるんじゃないの?それはいいとして私も?ていうかなんで私だけ契約結ばれてるの?」

 ふと我に返ってミコトがメノを問い詰める。

 今頃ハゲ親父は自分はどうでもいいと言われたことに泣いているだろう。

 「そういうことだろ。契約に関しちゃ同意したろ?」

 問い詰められそっぽ向きながらメノが答える。

 「兪王君は?」

 「あいつは多分心の底から同意してなかったんだろ。というかミコトがちょろいんだって」

 「うっさい!」

 ちょろいと言われたことにミコトは拳で応えた。

 「不安なのかー?」

 によによしながら馬鹿にするようにメノがミコトの顔をのぞきこんだ。

 「っ!違っ、だって強かったじゃん!」

 ミコトはむーと頬を膨らませる。

 そして散々な目にあった電柱を見る。

 「いやぁ、ビビったビビった。」

 「ビビったって、あとほんの少しでもズレてたらあんたの首が飛んでたじゃん!」

 ミコトがへらへらするメノの首を指さす。

 「いやいや、神様舐めてもらっちゃ困るね。俺はあいつより人生の先輩だからな」

 へへんとメノがドヤる。

 「契約したわけだし、しばらく護衛してやるよ」

 「別に大丈夫!」

 「まあゴリラだもんな」

 「あ?」

 「ごめんなさい申し訳ございませんでしたお守り致します」

 ひぃ、とメノが頭を下げる。

 「じゃあ、お願いしてやらんこともない!」

 ミコトがふふん、と笑った。

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