「赤い部屋の奇跡」1から3話台本
1から3までまとめました。
第1話「天才の終わり」
シーン1:回想 - 撮影スタジオ(10年前)
スタジオライトが眩しく照らす中、幼い主人公・桐谷蒼太(当時8歳)がカメラの前で涙を流している
監督「カット! 完璧だ、蒼太くん! 君は本当に天才だよ!」
周囲のスタッフが拍手。母親が駆け寄ってくる
母「蒼太、よく頑張ったわね」
幼い蒼太「うん! 楽しかった!」
画面が暗転。タイトルロゴ表示
シーン2:現在 - 撮影現場の控え室(5年前)
13歳になった蒼太が控え室のモニターを見つめている。そこには同年代の子役・星川凛(当時13歳)が信じられないほどの演技を披露している
蒼太(心の声)「何だ、あれ…僕とは次元が違う…」
モニターの中の凛は、大人の俳優たちさえも圧倒する表現力で泣き、笑い、怒りを表現している
共演者A「星川さん、本当に化け物だよな。あの年齢であの演技…」
共演者B「桐谷くんも天才って言われてたけど、レベルが違うよね」
蒼太の手が震える
シーン3:蒼太の部屋(3年前)
蒼太(15歳)がマネージャーに頭を下げている
蒼太「すみません…もう、役者は続けられません」
マネージャー「蒼太くん! まだ15歳じゃないか。これからだよ!」
蒼太「いえ…僕には才能がないんです。それが分かっただけでも、良かったと思います」
マネージャーの悲しそうな顔。フェードアウト
シーン4:現在 - 桐谷家リビング(放課後)
高校2年生になった蒼太(17歳)が制服姿でリビングのソファに座っている。平凡な日常
母「蒼太、あんたの妹、また学校休んだわよ」
蒼太「…またか。心音、どうしてるの?」
母「部屋に閉じこもってるわ。もう2ヶ月も学校行ってない」
蒼太がため息をつく
シーン5:心音の部屋の前
蒼太がドアをノックする
蒼太「心音、入るぞ」
心音(小声)「…来ないで」
蒼太「飯だけでも食えよ。母さん心配してる」
心音「…お兄ちゃんこそ、昔は輝いてたのに。今は私と同じ、ただの人間じゃん」
蒼太が言葉に詰まる
蒼太「…そうだな。俺は凡人だ。でもそれでいいと思ってる」
シーン6:翌週末 - 商店街の小劇場前
蒼太が買い物袋を持って歩いていると、小劇場から人が溢れている
通行人A「すごい演技だったね!」
通行人B「特にハムレット役の子、プロ級だったわ!」
蒼太が何気なく立ち止まる
シーン7:その夜 - 心音の部屋
ドアが少し開いて、心音(16歳、長い黒髪、やせ型)が顔を出す
心音「…お兄ちゃん」
蒼太「どうした? 珍しいな、自分から話しかけてくるなんて」
心音「あの…今日、外に出たの」
蒼太「え?」
心音「商店街の劇場で…ハムレットを観たの。お兄ちゃんが昔買ってくれた、シェイクスピア全集に載ってた」
蒼太の表情が変わる
心音「信じられないくらい…綺麗だった。演技が、輝いてた。私…あの劇団に入りたい」
蒼太「は? お前、人と話すのも苦手なのに?」
心音「それでも…あの輝きが欲しいの」
シーン8:翌日 - 「月光劇団」事務所前
古いビルの3階。蒼太と心音が立っている。心音は蒼太の服の袖を握りしめている
蒼太「本当に行くのか?」
心音(震えた声)「…うん」
ドアを開けると、広々とした稽古場。奥に50代の女性・月島椿(座長)が座っている
月島「いらっしゃい。入団希望の子?」
心音「…はい」
月島「名前は?」
心音「き、桐谷…心音です」
心音の声が震えている。蒼太が心配そうに見守る
月島「緊張してるのね。大丈夫よ。ところで、あなたは?」
蒼太「付き添いです。妹が心配で」
月島「そう…あら、あなた、どこかで見たような…」
月島が蒼太をじっと見つめる
蒼太「いえ、人違いかと」
月島「…まあいいわ。心音ちゃん、うちの劇団に入りたい理由は?」
心音「あの…ハムレットを観て…演技が、綺麗で…」
月島「ハムレット役の凛ちゃんね。彼女は特別よ。あなたもあんな風になりたい?」
心音「…はい」
シーン9:同じ場所 - 5分後
月島が立ち上がり、奥の部屋から台本を持ってくる
月島「なら、試験をしましょう。これを読んでみて」
「赤い部屋」と書かれた台本を心音に渡す
心音「こ、これは…?」
月島「私が書いた一人芝居よ。5人の登場人物が赤い部屋で繰り広げる心理劇。でもね…」
月島が意味深に笑う
月島「この5人を全部一人で演じるの。それも、2週間後にね」
蒼太「え? 一人で5役?」
月島「そう。うちの劇団の入団試験はこれ。できる?」
心音「わ、私…演技なんてしたことなくて…」
月島「じゃあ無理ね。帰って」
月島が冷たく言い放つ
蒼太「ちょっと待ってください! 妹は本気なんです!」
月島「本気なら できるはずよ。それとも、諦める?」
心音が俯く。蒼太が台本を見る
蒼太(心の声)「5人役…一人じゃ無理だ。でも…」
蒼太「あの、質問いいですか? この試験、5人が同時に舞台に立っても構いませんか?」
月島「あら? つまり…」
蒼太「5人の役者を集めて、それぞれが一役を演じる。そういう解釈も可能ですか?」
月島が面白そうに笑う
月島「面白い解釈ね。いいわ、それでもOK。でも2週間で5人集められる? しかも演技ができる人を」
蒼太「…やってみます」
心音「お、お兄ちゃん…?」
蒼太「お前一人じゃ無理だ。俺が手伝う」
シーン10:劇団を出た後 - 路上
心音「お兄ちゃん、どうして…」
蒼太「お前があの輝きを求めてるのが分かったから。俺にはもう無理だけど…お前なら、まだ可能性がある」
心音の目に涙が浮かぶ
心音「ありがとう…」
蒼太「礼はいい。さて、問題は5人の役者だが…」
蒼太が台本を読み始める
蒼太(心の声)「赤い部屋…5人の登場人物。主役の『少女』、少女の母親『女』、謎の訪問者『男』、少女の幻想『影』、そして語り部『声』…これは、相当難解な台本だ」
EDテーマ流れる
次回予告ナレーション(蒼太)
「演技ができる人を探せ。公園で一人、全ての役を演じる少女。彼女は一体…? 次回、第2話『孤独な天才』」
第2話「孤独な天才」
シーン1:蒼太の部屋(深夜)
蒼太が机で「赤い部屋」の台本を読み込んでいる。ノートに役の分析を書き込む
蒼太(心の声)「この台本…かなり高度だ。心理描写が複雑で、役者の表現力が試される」
ページをめくる。「少女」のセリフに赤線を引く
蒼太(小声)「『私はここにいる。でも誰も私を見ていない』…か」
蒼太の目に昔の自分が重なる
シーン2:翌日 - 高校の教室(昼休み)
蒼太が窓際の席に座っている。隣の席の友人・田中健太が話しかけてくる
健太「なあ蒼太、今度の休み暇?」
蒼太「悪い、ちょっと忙しくて」
健太「珍しいな、お前が忙しいなんて。バイトでも始めたのか?」
蒼太「まあ、似たようなもんだ」
教室の後ろの方で、一人で本を読んでいる女子生徒。白石雪(17歳、長い銀髪、無表情)
健太「そういえば、白石さんって不思議だよな」
蒼太「白石?」
健太「ほら、いつも一人で本読んでる子。入学以来、誰とも話してるの見たことない」
蒼太が何気なくそちらを見る
シーン3:放課後 - 公園
蒼太が役者を探して公園を歩いている
蒼太(心の声)「演技ができる人…高校の演劇部にでも頼むか? いや、レベルが足りないかもしれない」
ふと、公園の奥から声が聞こえる
女性の声「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ…」
蒼太が声の方へ歩いていく
シーン4:公園の奥 - 小さな広場
木々に囲まれた場所で、一人の少女が立っている。銀髪が風になびく
少女(白石雪)「復讐の剣を握るべきか、それとも…」
彼女が突然、老人の声色に変わる
雪(老人役)「王子よ、あなたの父は毒を盛られたのです」
さらに若い女性の声に
雪(オフィーリア役)「ハムレット様…私を愛していると言ってくださったのに」
蒼太が息を呑む
蒼太(心の声)「すごい…一人で全ての役を演じてる。しかも、それぞれのキャラクターがはっきりと…!」
雪が演技を終え、深呼吸する。そこで蒼太の視線に気づく
シーン5:同じ場所 - 直後
雪が慌てて本を鞄にしまおうとする
蒼太「あの、待って! すごい演技でしたね!」
雪「…っ」
雪が顔を赤くして後ずさる
蒼太「俺、桐谷っていうんですけど、同じ学校の—」
雪「ナンパ…?」
蒼太「え? 違います! あの、お願いがあって—」
雪「警察呼びます」
蒼太「ちょ、ちょっと待って! 本当に演技のことで!」
雪が走り去る
蒼太「あ…行っちゃった」
蒼太が地面に落ちている本を拾う。「ハムレット」
蒼太「これ…白石さん?」
本の中に名前のシールが貼ってある。「白石 雪」
シーン6:翌日 - 高校の教室(朝)
蒼太が白石雪の席を見る。雪はいつものように一人で座り、本を読んでいる
蒼太(心の声)「クラスメイトだったのか…全然気づかなかった」
蒼太が席を立ち、雪の方へ歩いていく。周囲がざわつく
女子生徒A(小声)「え、桐谷くんが白石さんに?」
女子生徒B(小声)「あの二人、話したことあったっけ?」
蒼太が雪の机の前に立つ
蒼太「白石さん、これ」
ハムレットの本を差し出す。雪がゆっくりと顔を上げる
雪「…あ」
蒼太「昨日、公園で落としてたよ」
雪「…ありがとう、ございます」
小さな声。雪が本を受け取る
蒼太「あの、話があるんだけど、放課後少しだけ時間もらえないかな?」
雪「…お断りします」
蒼太「いや、変な意味じゃなくて! 演技のことで相談が—」
雪の目が少しだけ見開かれる
雪「…演技?」
蒼太「うん。白石さんの演技を見て、ぜひお願いしたいことがあるんだ」
シーン7:放課後 - 屋上
蒼太と雪が屋上にいる。雪は蒼太から2メートル以上距離を取っている
蒼太「えっと、改めて。俺は—」
雪「桐谷蒼太さん。クラス委員。成績中の上。友人は田中健太さんを含め3名程度。部活動はなし」
蒼太「…詳しいね」
雪「観察してるだけです。私は人と話すのが苦手なので、観察することで補っています」
蒼太「なるほど…で、本題なんだけど」
蒼太が「赤い部屋」の台本を差し出す
蒼太「これを読んでほしいんだ」
雪「…台本?」
蒼太「俺の妹が劇団の入団試験を受けることになって。でも一人じゃ無理だから、役者を集めてる」
雪「それで、私に?」
蒼太「白石さんの演技を見て思った。あなたなら、この台本の『影』の役ができるんじゃないかって」
雪が台本を受け取り、ページをめくる
雪「…これ、一人5役の台本ですね」
蒼太「そう。でも5人で分担して演じようと思ってる。白石さんには『影』を—」
雪「お断りします」
蒼太「え?」
雪「私は…人前で演技なんてできません」
蒼太「でも昨日、公園で—」
雪「あれは一人だからです。観客がいるなんて…無理」
雪が台本を蒼太に返そうとする
蒼太「待って。台本だけでも読んでみてくれないかな。それで無理だと思ったら、諦めるから」
雪が迷う
雪「…台本を読むだけ、ですか?」
蒼太「うん」
雪「わかりました。でも、期待しないでください」
雪が台本を受け取り、屋上を去る
シーン8:その夜 - 白石家(雪の部屋)
雪が部屋のベッドに座り、台本を読み始める
雪(心の声)「赤い部屋…少女、女、男、影、声」
ページをめくる。「影」のセリフが目に入る
台本の文字「影:私はあなたの心の闇。あなたが見ないふりをしているもの」
雪の手が止まる
雪(心の声)「これ…まるで私のことみたい」
さらに読み進める
台本の文字「影:誰も私を見ない。でも私はここにいる。ずっと、ずっと…」
雪の目から涙が一筋流れる
雪(小声)「私も…ずっとここにいる」
シーン9:翌日 - 高校の教室(昼休み)
蒼太が弁当を食べていると、雪が机の前に立つ
蒼太「白石さん?」
雪「あの…やります」
蒼太「え?」
雪「赤い部屋の『影』役。私にやらせてください」
蒼太が驚いて立ち上がる
蒼太「本当?」
雪「はい。この台本を読んで…演じたいと思いました。でも…」
蒼太「でも?」
雪「人前は怖いです。失敗するかもしれません。それでも、いいですか?」
蒼太が笑顔になる
蒼太「大丈夫。俺が全力でサポートする」
雪「…なぜ、そこまで?」
蒼太「妹のためってのもあるけど…白石さんの演技、すごく綺麗だったから。その才能を、舞台で見てみたいんだ」
雪が少し照れる
雪「才能なんて…大げさです」
蒼太「いや、本当だよ。あの一人芝居、プロ級だった」
シーン10:放課後 - 公園(以前雪が演技していた場所)
蒼太と雪、そして心音が集まっている
蒼太「心音、こちらが白石雪さん。『影』役を演じてくれることになった」
心音「は、はじめまして…桐谷心音です」
雪「…白石です。よろしく」
二人とも緊張している。蒼太が苦笑い
蒼太「二人ともコミュ障か…先が思いやられるな」
心音「お兄ちゃん!」
蒼太「冗談だよ。さて、まだ役者があと3人必要だけど…」
蒼太の携帯が鳴る。母からのメッセージ
メッセージ「蒼太、高校の演劇部が廃部になるらしいわよ。部員が足りないんですって」
蒼太「演劇部…!」
シーン11:翌日 - 高校の演劇部部室
古びた部室。中には部長の森下真帆(17歳、ショートカット、活発そう)が一人で台本を読んでいる
ドアをノックする音
真帆「はい?」
蒼太が入ってくる
蒼太「失礼します。演劇部ですよね?」
真帆「そうだけど…入部希望?」
蒼太「いえ、お願いがあって来ました」
真帆「お願い?」
蒼太「演劇部の方で、演技に協力してくれる人を探してるんですが—」
真帆「あー、無理無理。うち、私一人しかいないから」
蒼太「え? 一人?」
真帆「そう。他の部員は全員辞めちゃった。来月で廃部決定」
真帆が寂しそうに笑う
真帆「まあ、私の演出が厳しすぎたのかもね」
蒼太「演出…ってことは、森下さんは演出家志望なんですか?」
真帆「うん! 将来は劇団を主宰して、オリジナル作品を作りたいの」
蒼太の目が輝く
蒼太「それなら、ちょうど良かった!」
EDテーマ
次回予告(蒼太)
「演劇部の森下さんが仲間に。だが、まだ役者が2人足りない。照明、音響…裏方のスタッフも必要だ。試験まであと10日。次回、第3話『奇跡のチーム』」
第3話「奇跡のチーム」
シーン1:演劇部部室(前回の続き)
蒼太が「赤い部屋」の台本を真帆に見せている
真帆「へえ、月光劇団の入団試験なんだ。月島椿さんの」
蒼太「知ってるんですか?」
真帆「当たり前じゃん! 月島さんは伝説の演出家だよ。若い頃は大劇場で数々のヒット作を飛ばして…」
真帆が台本を食い入るように読む
真帆「この台本…すごい。心理描写が複雑で、でも美しい。これを2週間で仕上げるの?」
蒼太「はい。だから、森下さんの力が必要なんです」
真帆「私の?」
蒼太「演出家として、手伝ってほしい。俺は元—」
蒼太が言葉を止める
蒼太「俺は演技の知識はあるけど、演出は素人だ。森下さんの演出の才能が必要です」
真帆「…いいよ、やる!」
蒼太「本当ですか?」
真帆「うん! どうせ演劇部も廃部だし、最後に面白いことしたいなって思ってたところ」
真帆が立ち上がる
真帆「で、キャストは?」
蒼太「今のところ、妹の心音が『少女』役、白石雪が『影』役。あと3人足りない」
真帆「ふむふむ…『女』『男』『声』か。『声』は録音でもいけるけど、『女』と『男』は難しいね」
シーン2:学校の廊下(昼休み)
蒼太が歩いていると、放送部の前を通りかかる。中から美しい声が聞こえる
女性の声「こちら放送部です。今日のお昼の放送は—」
蒼太が足を止める
蒼太(心の声)「この声…『声』役にぴったりかも」
蒼太が放送部の扉をノックする
声の主「はい、どうぞ」
中には小林美月(17歳、眼鏡、真面目そう)が座っている
美月「あら、桐谷くん? どうしたの?」
蒼太「小林さん、お願いがあるんですけど—」
シーン3:放送部室 - 5分後
美月が「赤い部屋」の台本を読んでいる
美月「なるほど、『声』役ね。確かに私の声質に合ってるかも」
蒼太「やってもらえますか?」
美月「うーん、でも私演技なんてしたことないし…」
真帆(部屋の外から)「大丈夫! 私が指導するから!」
真帆が扉を開けて入ってくる
美月「森下さん?」
真帆「小林さんの声、学校放送でいつも聞いてるけど、すごく良い声だよ。絶対できる!」
美月「そ、そうかな…」
蒼太「お願いします。あなたの声が必要なんです」
美月が少し照れる
美月「わかった。やってみる」
シーン4:学校の中庭
蒼太が一人でベンチに座り、ノートに書き込んでいる
蒼太のノート
∙少女:心音 ✓
∙影:白石雪 ✓
∙声:小林美月 ✓
∙女:?
∙男:?
∙演出:森下真帆 ✓
蒼太(心の声)「あと2人…『女』と『男』。特に『女』役は難しい。母親役だから、ある程度年齢を感じさせる演技が必要だ」
そこへ健太が走ってくる
健太「蒼太! 大変だ!」
蒼太「どうした?」
健太「美術部の前で、誰かが倒れてる!」
シーン5:美術部室前
床に倒れている長身の男子生徒。周りに人だかり
蒼太「これは…」
倒れているのは大塚竜司(17歳、190cm、強面だが優しい目)
女子生徒「大塚くん、大丈夫?」
竜司「あ、ああ…ちょっと貧血で」
竜司がゆっくりと起き上がる
蒼太「保健室行った方がいいんじゃないか?」
竜司「いや、大丈夫。いつものことだから」
竜司の手には絵筆が握られている
健太(小声で蒼太に)「大塚、見た目怖いけど、実は繊細なんだよな。美術部のエースで」
蒼太(心の声)「大塚竜司…繊細で、絵が得意。ということは…」
シーン6:美術部室(放課後)
蒼太が美術部室を訪れる。竜司が大きなキャンバスに向かって絵を描いている
蒼太「失礼します」
竜司「あ、さっきの…どうした?」
蒼太「実は、お願いがあって」
蒼太が事情を説明する
竜司「演技…俺が?」
蒼太「はい。『男』役なんですけど、実は謎めいた訪問者の役で」
竜司「でも俺、演技なんて…」
蒼太「大塚さんの絵を見せてもらいました。美術室に飾ってある、あの『孤独な夜』って作品」
竜司「あ、ああ…」
蒼太「あの絵からは、深い感情が伝わってきた。そういう感受性があれば、演技もできると思うんです」
竜司「…感受性、か」
竜司が少し考える
竜司「実は俺、舞台美術にも興味があって。絵を描くだけじゃなくて、舞台装置とか作ってみたいなって」
蒼太「じゃあ、演技もやりながら、舞台美術も手伝ってもらえませんか?」
竜司「…面白そうだな。やってみる」
シーン7:公園の広場(翌日の放課後)
蒼太、心音、雪、真帆、美月、竜司が集まっている
蒼太「みんな、集まってくれてありがとう。これがチームのメンバーだ」
真帆「でも、まだ『女』役が決まってないよね」
蒼太「それなんだけど…」
蒼太の携帯が鳴る。知らない番号
蒼太「もしもし?」
女性の声「もしもし、桐谷蒼太くん?」
蒼太「はい、そうですけど…」
女性の声「私、月光劇団の月島です。実は、『女』役にぴったりの人がいるの」
蒼太「え?」
月島「うちの劇団員なんだけど、事情があって今は休団中。でも、この台本なら演じたいって」
蒼太「本当ですか?」
月島「ええ。明日、劇団に来てくれる? 紹介するわ」
シーン8:翌日 - 月光劇団事務所
蒼太と心音が訪れる。月島が笑顔で出迎える
月島「来てくれたのね。さあ、こちらよ」
奥の稽古場へ案内される。そこには一人の女性が立っている
長い黒髪、凛とした佇まい。星川凛(22歳)
蒼太「…っ!」
蒼太の顔が驚愕に染まる
星川凛「久しぶりね、蒼太くん」
心音「え? お兄ちゃん、知り合いなの?」
蒼太(震える声)「ほ、星川…凛…」
凛「5年ぶりかしら。大きくなったわね」
蒼太の脳裏に、13歳の時の記憶が蘇る。凛の圧倒的な演技。自分の挫折
蒼太(心の声)「なぜ…なぜ、星川凛が…!」
月島「あら、知り合いだったの?」
凛「ええ、昔ね。それより蒼太くん、私に『女』役をやらせてくれる?」
蒼太「え、でも…」
凛「この台本、読ませてもらったわ。とても良い作品。演じたいと思った」
凛が蒼太に近づく
凛「それに、あなたが演出するって聞いて。どんな演出をするのか、興味があるの」
蒼太「俺は演出家じゃない。森下さんが—」
凛「でも、あなたがこのプロジェクトのリーダーなんでしょ? だったら、私はあなたの演出を見たい」
蒼太が言葉に詰まる
心音「お兄ちゃん…この人、すごい人なの?」
蒼太「ああ…元天才子役。今は若手女優として活躍してる」
凛「してた、ね。今は休業中」
月島「凛ちゃん、体調の問題でしばらく舞台から離れてたの。でも最近良くなってきて」
凛「だから、リハビリも兼ねて。小さな舞台から始めたいの」
シーン9:劇団を出た後 - 路上
心音「お兄ちゃん、本当に星川さんでいいの?」
蒼太「…正直、迷ってる」
心音「なんで?」
蒼太「星川凛は…俺が役者を辞めるきっかけになった人だ」
心音「え…」
蒼太「あの人の演技を見て、俺は自分の才能の限界を知った。勝てないって」
蒼太が立ち止まる
蒼太「でも…彼女がいれば、この舞台は確実に成功する。お前の試験、合格できる」
心音「でも、お兄ちゃんが辛いなら—」
蒼太「大丈夫。もう過去のことだ」
蒼太が笑顔を作る
蒼太「それに、今の俺は役者じゃない。演出家だ」
シーン10:公園の広場(翌日)
全メンバーが集まっている。凛も一緒
真帆「わあ、星川凛さん! 本物だ!」
美月「テレビで見たことあります!」
竜司「すげえ…」
雪だけは少し離れた場所に立っている
凛「みなさん、よろしくね。私、星川凛です」
蒼太「それじゃあ、これでキャストは揃った。あとは—」
真帆「照明と音響! 舞台には絶対必要!」
蒼太「そうなんだよな…演劇部に機材はある?」
真帆「あるけど、操作できる人がいない」
そこへ、二人の生徒が近づいてくる
男子生徒A「あの、俺たち、手伝えることある?」
蒼太「え?」
男子生徒A「さっき、森下先輩から話聞いて。照明と音響、俺たち放送部と軽音部でなんとかできるかも」
美月「田村くんと斎藤くん!」
田村(照明担当)と斎藤(音響担当)が加わる
蒼太「本当に?」
田村「はい。面白そうだし」
斎藤「俺ら、こういうの好きなんで」
シーン11:同じ場所 - 夕暮れ
全員が円を作って立っている
蒼太「これで、チームが揃った」
真帆「キャスト5人、スタッフ5人。計10人!」
蒼太「試験まで残り8日。正直、時間は全然足りない」
凛「でも、やるしかないわね」
蒼太「うん。明日から、本格的な稽古を始める。場所は—」
竜司「体育館の倉庫、空いてるらしいです。俺、鍵借りられます」
蒼太「ありがとう。じゃあ、明日の放課後、全員集合で」
全員が頷く
蒼太(心の声)「俺は、もう役者じゃない。でも、このチームを成功させる。妹のために。そして…俺自身の、けじめのために」
EDテーマ
次回予告(凛)
「稽古が始まる。でも、素人たちの演技は想像以上に酷くて…。蒼太、あなたは本当に役者をやめて正解だったの? 次回、第4話『演出家・桐谷蒼太』」
Due to length constraints, I’ll provide a detailed outline for the remaining episodes:
読んで頂きありがとうございます。




