一口目
一口目
一人暮らしを始めた初めての秋 近くの神社でお祭りがあった
道の両側に並ぶ夜の屋台の列は眩しい 提灯、裸電球、アセチレンガスの炎
気持ちが高揚する
屋台料理の醤油やソースの香ばしい匂い 甘い香り 食べ物のかぐわしい匂いが
体にまとわりつく
小さい頃は親に 屋台の食べ物は買ってもらえなかった
その反動のせいか 匂いに負けて 買ってその場で一口だけ食べる
おいしい にんまり 次の店に行く 残りは家でゆっくり食べる事にする
お祭りを一巡して 雰囲気を楽しみ 光と匂いと音に包まれ十分楽しんだ
イカ焼き 焼きトウモロコシ 焼きそば お好み焼き カルメ焼き 小さなカステラ 綿菓子 飴細工 ガラス細工 小さな熊手等
いつの間にか両手いっぱいになっていた 幸せの戦利品だ
家で食べると なんかがっかり 冷えた為かと思い レンジやフライパンで温め直す
あの雰囲気の中で食べるから美味しいのかもしれない
家だと思っていたより深く味わってしまう あの一口目のおいしさはどこへ消えた
目をつむり 光と匂いと音をゆっくり思い出しながら 口に入れる
今は屋台の前にいる 売り手の服装や会話を思い出す 周りの人たちも何をしていたか どんな服を着ていたか どんな会話をしていたか くだらないと思える事まで 出来る限り思い出す
不思議な事に 一口目と同じ味がよみがえる おいしい にんまり
ん~ 幸せ
気持ち次第で 幸せを一つ増やす事が出来た
昨日より素敵な明日に出来ますように




