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生徒会なんて正直誰かに任せたい  作者: そらいろさとり


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8/12

予想は悪い方へと裏切られる



 そしてとうとう卒業式の日を迎えた。


 招待状をくれた子達には断りを入れたにしろ、きっと行けば何かしら言われる予想もつき、また突発的に何かがあったとしても厄介だと、当日は王立騎士団の宿舎へと用事のある振りをして泊まった翌日の朝、制服姿のロットが青い顔して父と共にやってきた。



「騎士団長様、お忙しい中ご案内ありがとうございました」

「ふふっ、ロットにそう言われるのも可笑しいな。こちらこそ、先日は衣装を準備してくれてありがとう。父上にも御礼をお伝え下さい」

「はい」


 人前だからと、お互いにいつもの会話とは違う様子に苦笑いを送り、そしてそんな父が出て行った後、ロットは我に帰ったように「って、こんなんしてる場合やない!」と私にも制服に着替えるように指示すると、説明もなく馬車へと放り込まれた。



***



「リランはん!?」

「困ったことになったわねぇ」


 教師くらいは職員室にいるのだろうが、見渡す限り誰もいない学園を駆け抜けて生徒会室の扉を勢いよく開ければ、同級生のリランくんが困ったように紙を差し出すと、ロットは勢いよくそれを手に取って見るのを横から覗き込もうとすれば、彼は即座にその紙をリランくんの座る机に叩きつけた。



「なんやこれ!!?」

「火急のことが入ったらしくて、仕方ないらしいわ」

「そないなこと言われてはいそうですかと言えるか!!」

「でももう学園の許可はとってあるみたいなのよね〜」


 ロットが頭を抱えて改めて私に差し出した、その少し折れた紙には、


「任命書。生徒会長、レイ・フェレス。会計、ロット・ペンニーネ。副会長・書記兼任、リラン・ラヴァ・トリンドル……。これは?」

「うちもわからないわぁ〜。昨日の卒業式の後、突然言われて、ウチもなにが何やら」


 私の問いにリランくんの頬に手を当てて溜息を吐くその姿は、何故か少し余裕があるようにも見えたが、そのまま顔を両手で覆うと泣く素振りを見せられる。


「ウチだってわからないわよぉ〜。ウチは遠方からこの学園の高等部に入って、少しでも多くを知りたいと一年から生徒会に入らせて貰って、右も左もわからないのよ!? なのに、会長達がみんなして辞めて……ウチ、もしかして嫌われてたのかしら……仲良くしてたつもりだったのに……」

「いや、そんなことはあらへんとは思うけど……オレらからしたら仲良さそうに見えてたで?」


 涙を流すリランくんに、ロットが困惑した様子でこちらを見るが、別段リランくんを慰める立場でもないかと、無表情のまま終わらせる。


「ウチをレイも慰めなさいな!」

「いやぁ、巻き込まれたのはむしろこちらで、慰めて欲しいのもこちらの方だと思うんだけどね」

「それはそうやな!!」


 ロットも目が覚めたらとばかりに手を打ちリランくんを見れば、

「ウチだって被害者よ」

 そう相変わらず被害者顔をして頬に手を当てて悲しげな顔をされては、元来性格の優しいロットはこれ以上は言いづらいらしく、頭を掻いて大きく溜息を吐いた。


「それでこの資料は……」

「あ、どうももう学園長にも許可を得て引継済みみたいよぉ。困ったわねぇ」

「困ったわねぇってそんな気楽な話やないやろ。オレらやるなんて言うてへん!!」


 ロットが勢いを取り戻しそうになれば、リランくんはまたもさめざめと泣いた振りをする。


「ウチだってそうよぉ。それに二役だなんて。……それでも卒業式まではやってもらえて良かったわ。うちも年末年始あたりから……家の事情があって生徒会どころか学園も休んでたのよ」

「そんなん言われても、オレらも授業以外はほぼ学園におらんかったからな」


 リランくんの最後の言葉の時はなんだか本心というか、なんとも言えない顔をしたと真っ直ぐに見つめれば、それに気付かれたのかこちらを見上げて「うちも被害者よ」と、まるでそれ以上追求するなとでも言うように告げられた。



「辞退は出来るのかい?」

「それなら他に当てがう人はいるかしら? 最低限、生徒会が分かっていて春からホラ、王太子も入ってくるのでしょう? 入学式もあるし、今更辞退して散々な結果になっても、ウチらが関わってた名前は残ってしまうわ」

「逃げ場なしやないか!」

「ウチも被害者なのよ」


 ……王太子と言われて内心で溜息を吐く。

 これでも王立騎士団を二人も身内に持つ身として失礼を行うわけにもいかないと……、そして改めて書かれているのが『委任状』ではなく『任命書』の時点で、彼らがもうこの座に戻ってこないことを示している。


「……それで、私達はやるしかないのかな?」

「そうねぇ。腹を括って貰いましょうか」

「いややぁ〜」


 頭を抱えるロットを横に、リランくんは頬に手を当て「ホント仕方ないわね」と立ち上がりると、


「こうなってしまったものは仕方ないわ。入学式に向けて頑張るしかないわね♡」

「いややぁ〜!!」


 諦めた私と違い、嘆くロットの声が生徒会室に響き渡った。



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― 新着の感想 ―
仕事を押し付けた前生徒会の人達ヒドいO_o ロットが過労死してしまう!
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