手紙も手袋も消し炭にしとこ!
「こりゃまぁった……えっらい沢山やなぁ。冬休みも終わったばっかで招待状には早ないか?」
「ロットの方は?」
「え? オレ今喧嘩売られとる? 買うたろか? ほんで他所に倍値で売ったるわ」
明らかにお怒りの様子のロットの前には、彼の言った通りの私宛の卒業式の招待状の山。
今日は学園は勿論、店の方も久々の休みを立ったのだと我が家へと遊びに来たロットは、そう怒るように言った後に乱雑に頭を掻きながら改めて視線を手紙に向けて溜息を吐く。その相変わらずの喜怒哀楽の豊かさは羨ましいとすら思えるが、招待状に視線を戻して私もつられて溜め息を吐いた。
「ちゃんとお受け取り出来ないとお断りはしていたんだけどね」
「お前の場合はそうなんやろなぁ」
そう言いながら、手袋をしてその手紙を指先で摘みながら左右に分けてゆくのは、きっと悪意と好意の振り分けをしてくれてるのだろう。
「……こっちは早めにお断りの言葉と共に送り返して、こっちは……返すのも怖いらしいわ」
ロットの横に居るのであろうその善悪の判然してくれているであろう精霊や妖精と呼ばれる小さな彼女と、仕分けてくれるロットに感謝を述べてから、その分けられた悪意をそっと摘んで暖炉に投げ込めば、その手紙は勢いよく燃えて消えた。
「……今、髪が……いや……見間違いやな。卒業式の招待状や。そんなもん入っとる訳ないな!!」
「爪もあまり良い趣味してないよねぇ。アレを送り付けて何故好意を持って貰えると思うのだろうね?」
「それはその通りやけど! それは気付かへんかったのに言うなや!!」
「それに縮れた毛は流石に嫌かな」
「イーーーヤーーーー!!! オレの手袋も燃やさせたって!!!」
ロットはそう言って勢いよく暖炉に先程使ってた手袋を放り込むとやはり燃えてなくなった。
「この恩でフェリス家の衣装は一生ウチで頼んますわ……」
「元よりそのつもりだけどね。君の人生も私が持とうか?」
「断固拒否や」
はっきりと断りながらも、用意された水受けで手を洗いながらアイロンされたハンカチで手を拭くロットに振られてしまったと笑えば、ロットは私の部屋のソファで横になる。
「冗談はさておき、ちょい寝さしてな。ホンマ寝不足やねん」
「うちにくるより、家で寝た方が移動時間分無駄にならないんじゃないかい?」
聞けば、ロットはもう半眠状態なのか目を閉じ、
「家で寝とると起こされそうな気ぃしてな。昼には起こして……飯食わして……な」
そんな食い意地だけは張っている言葉に返事をする前に彼はもう眠っているようだった。
「ふふっ、可愛いね。君たちが夢中なのもわかるよ」
自分には見えない誰かに呟けば、なんとなく同意して貰えた気がした。





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