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生徒会なんて正直誰かに任せたい  作者: そらいろさとり


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【最終話】今は知らないストーリー

最終話



「しまった。今日は随分と遅くなってしまった……」


 その日もいつものように昼休みも生徒会室で過ごし、資料を纏めて時計を見れば、既に午後の授業の始まる時間になってしまいそうだと、荷物を纏めて慌てて部屋を出る。


 ロットが用事で学園に居なかった為に、ついつい時間配分を間違えたと、しかし早急に職員にサインを貰わなければいけないものもあり、少し小走りで階段を降りるがどうせ遅れるならと一つ息を吐いて、手荷物を持ち直してゆっくりと降りていれば、午後の授業開始の鐘の音と共に慌てたような生徒達が各々の教室にでも急ぎ向かっている様子が目に入ってきた。


「珍しいな」


 学園の生徒達は授業の単位もある為に時間は普段守っているし、しかも見たところその生徒達も一年から三年まで幅広いように見えた。

 つまりそれはクラス単位の何かではないのだと、それでもその顔はなんだか楽しそうでもあったり、はたまたやや不満げにも見えたりと三者三様。

 いや、それでも顔を上げて笑顔の子達の方が多く見えた気がしたと思えれば、何かあったのかと少々気になったが、すでに鐘の音が鳴っている今、彼らを引き止めるほどではないかと、生徒たちとすれ違い職員室へと向かった時、声が聞こえた。


 朗らかにも聞こえるそのその話し声のする昇降口へと吸い寄せられるように足が向かう。


「授業が始まるが、君達は何を……、いや…本当に何をして居るんだ?」


 そう思わず素で話しかけてしまうほどの衝撃。


 相手が誰かも知っていたにも関わらず、その彼と彼女が持っていた物が本人たちと相違があり過ぎて、取り繕うことも忘れて言葉を発していた。



 その彼女の手には新品には見えないタオル。いや、明らかに雑巾と箒を取りまとめる彼女は、入学式に新入生の代表代理をした公爵家の『ユリエル・セルリア』様。

 そしてその隣でどこから持ち出したのか、ゴミ袋を持つのはこの国の王太子である『ロイ・ファルコ・ガルディウス』殿下。


「見ての通りお掃除ですわ。生徒会長」


 彼女は微笑み当たり前のことだというように告げられた言葉も正確には理解できずにまばたきを繰り返してから頷きを返す。


「そうかい、あぁ本当だ。綺麗だねありがとう。そうだ授業も始まってしまったし、今から職員室に行くので君たちのことも伝えておくから、その片付けが済んだら一度生徒会室に来てくれないかい?」

「そうですわね。勝手に学園の掃除用具も借りましたし、ご説明くらいした方がよろしいかしら」

「そうだね。備品管理も生徒会の仕事だからね」

「わかりましたわ。学園のものを使い、勝手してしまい申し訳ございません。ではまずは片付けてから伺いますわね。ロイさんもよろしくて?」

「……あぁ、ユーリが行くなら俺も行こう」

「では後ほど、生徒会室でお待ちしてるよ」

「はい。必ず伺いますわ」


 流れるような会話は、王太子やその婚約者に対しては無礼がありすぎたと思えたが、まったく気にした様子もない彼女に今更ながらに少し驚いていれば、


「ふふっ」

 そんな思わずこぼれた笑いなんて久方振りだとまた少し驚いて、早々にサインを貰おうと職員室へと急いだ。



 そこからは職員から早々に印を貰い、生徒会室に向かえばちょうど部屋の前で二人と鉢合わせた。

 生徒会に入るなり事情を聞けば、昇降口が汚れていたからみんなと掃除してただけだと彼女からあっけらかんと言われてしまい私が面を食らっていれば、家の用事が済んだが教室に行くには中途半端な時間だからと生徒会室にいたロットがソファに隠れて……、いや『休憩』していたらしく、

「ブハッ」っと吹き出したのちにそのまま彼の笑い上戸が発動してしまった。


 そんな私達の無礼も咎めることなく、ただただ「あらまぁ」と頬に手を当てて微笑むように佇む彼女と、反対に不機嫌そうな王太子だが、彼女の手前怒り出すことも咎めることもしてこないのが可笑しくて、これが惚れた弱みかと、その様子も面白いと私の頬も緩んでしまう。



 ロットが先日経費で買った来客用の高級茶葉を出せば、

「ありがとうございます。」

そう微笑えまれ思わず、

「いいや、ユリエルさんが喜んでくれるならお茶くらいいつでも入れよう」

 そんな人たらしな言葉が出てしまうことに我ながら驚けば、王太子の気には障ってしまったらしく部屋を出ていかれてしまった。



「阿呆。麗しの生徒会長様がそんな笑顔向けたら、どこの娘だって姫さんだって勘違いしてまうわ。婚約者を誘惑した不敬罪で囚われてもオレは知らへんよ」


 ロットに言われて、彼女達が手をつけなかった紅茶を片付けようと手を伸ばす。


「いやそんなつもりは……しかしなんだろうな、彼女は……そんな感じとは違った気がするんだが…」


 ーーー私を見る目が誰とも違う気がした。


 最初はただそれだけのこと。


 たったそれだけのことだったのに、そのあとからも彼女は変わることなく、いつまでも分け隔てなく、私達を手伝い、ロットが願っていた通りのようなアベイルくんを連れて、笑って、泣いて、今までロットと二人きりだった生徒会室に、いや、この学園に、次から次へと彩り続けてくれることになるだなんて、この頃の私達はまだ知らないストーリーだ。







 レイとロットとちょっぴりリランの本編では語られなかったお話、いかがでしたでしょうか?

 少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。


 先輩方やリランも実は陰では色々奮闘してたのですが、まぁその辺は本編のちょいとの語りと、苦労は語りたくないリラン様のプライドでこの辺りで閉幕させて頂きます。


番外編「生徒会なんて正直誰かに任せたい』ご覧頂きありがとうございました。


面白かったよとかありましたら、お星様での応援や感想、スタンプとても嬉しくモチベーションに繋がりますので、宜しければポチリポチリとお願いいたします!


他にも短編や長編なども色々書いてます是非ご覧ください〜!


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― 新着の感想 ―
レイ&ロット、このままじゃ生徒会を抜けられず、二人だけで苦労するのでは…どうするんだろう…。などと思っていたら。 そうでした!ユリエルとの出会いがありました! 別メンバー視点で描かれる場面が繋がると嬉…
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