3章 破門者と魔法①
太陽が燦々と輝く。
その日、クレアとリアムは、何もない閑静な森の中にいた。
「ここなら、魔法が暴走しても安心だね」
と、悪戯っぽくクレアが笑うから、リアムも笑わざるを得なかった。
「僕の故郷も、こんな感じで何もなかったよ」
クレアは両手を広げると、そう言って笑った。
「さあ、始めようか」
クレアは目一杯息を吸い込んで、吐く。リアムに三歩近づくと、その小さな掌に、正方形の石を載せた。
「君の知っている、魔法の根源。魔石だよ」
リアムはそれをつまむと、まじまじと見つめた。真っ黒なそれは、太陽の日差しを受けて、反射をしている。
「これに、知識をぶつけるんだ。何か起こしたい事象の、構成要素を思い描いて」
クレアは言うと、太陽に右手を掲げる。その中指には、黒い指輪が光る。
「例えば、火だね。火は可燃物、酸素、それに熱源がいる。だから、こうやって太陽に掲げれば」
と、説明の間にも、中指からちらちらと、火の粉が見えた。
それはみるみるうちに大きくなり、火球となる。
クレアは森の中に、それを投げた。森の奥底で、火球は消える。
「こんな感じかな。リアムも、やってみなよ」
ここまで静かに聞いていたリアム。名前を呼ばれて、心臓が早鐘を打った。
魔力がない。
そう誰かに言われ、指を指された。
でも、俺だって。
目を瞑る。
出ろ。
掌で、魔石が熱くなる。チリチリと、火の粉が散る。
それで、終わる。
クレアは、それを見て、何も言わずにいた。
諦める。沈黙。
「君は、魔力量が少ないんだね」
と、沈黙を破ったのは、クレア。
その言葉が、自分の父親と被る。目頭が、不本意にも熱くなって、どうしようもない。
「そうだよ」
リアムは、声を絞り出す。
「側近貴族の出で、魔力量が足りないからって、破門された。家から追い出された」
それを、クレアは静かに聞く。
「生きる意味がわからない」
涙が、溢れた。
「リアム、そう言うことだったんだね」
と、クレア。
「顔を上げて」
クレアは、リアムの深海の瞳を見据える。
「生きる意味なんて、僕だってわからない。でも、リアムには、リアムしかできないことだってある。だから、その力を、笑顔にするために使えられれば、それでいいんじゃないかな」
クレアは、にっこりと笑った。リアムの涙を、一雫手に入れる。
「リアムにも得意なことや、できることはたくさんあるよ。まだ、それを見つけていないだけ。大丈夫」
リアムの手を取る。リアムは鼻を啜った。
「そうと決まれば、街に行こうよ」
と、元気に言われるから、リアムは手を引っ張られて、それに着いて行った。




