1章 ある王政の憂鬱①
日の当たるバルコニー。そこに、三人はいた。
紅茶が香りを立てる。女王カサブランカは、ゆっくりとそれを飲んだ。
カサブランカの、ゆるいウェーブのかかった、白銀の髪が、日光に透けた。
「幼馴染たち、今日は来てくれてありがとう」
凛とした、カサブランカの声が響く。
「私も、お招きいただき光栄です。殿下の、大きくなられた姿を拝見できました」
と、口にして、澄んだ海の色の髪を揺らすのは、レイン。
「お茶会のお菓子美味しいから、いいよ」
レイン、カサブランカに比べると、些か小さな体躯をした、クレアはそう言うと、スコーンを頬張った。
「で、話ってなんなのさ」
新緑色のおかっぱを揺らして、クレアは、鈴のような声を響かせる。
カサブランカの、カップを握る指が震えた。レインは、それを捉えていた。
「レインの予知によると、古龍が復活を遂げようとしている」
カサブランカは、絹の睫毛を伏せた。
レインは、長髪を耳にかけ、頷く。
それをクレアは見、椅子の背もたれにもたれた。
「ふうん」
クレアは、スコーンを齧る。
「伝承でも、五〇〇年経った今、古龍は復活を遂げると」
カサブランカは、震える手を押さえ、コップを口へ運ぶ。
「軍左派が力をつけた今、古龍討伐に力を入れて、古龍を倒した暁には、政権を奪おうとするだろう」
と、カサブランカ。
「様々な国を巡ってきたレインはわかるだろう」
振られたレインは、目を閉じて頷く。
「左派が力をつけ、実力を兼ね備えた今、国が傾くのは必然でしょう」
レインは、紅茶に砂糖を入れながら、そう言う。
「そうなれば、カサブランカ王の死も起こりうる事象だと思います」
レインは、その紅茶を口にすると、冷静にそう告げる。
「左派が政権を手に入れると、カサブランカは死ぬでしょ? そうしたら、この国はどうなるのさ」
クレアは言う。その目は、すでに答えを出しているかのように。確認のように。真っ直ぐに、カサブランカを見つめる。
「軍政、力こそが全ての世界となる」
カサブランカ。俯きがちに、ウェーブの髪を揺らす。
「そっか。それは、不満だね」
クレアは紅茶を見つめる。すでに冷めたそれは、渋みだけが残っていた。




