国境の彼方
激しい雨が降りしきる夜。
MORUチームは蒼鷹総合病院に急行要請を受けていた。
対象は東南アジアの小国で起きた大規模な洪水災害。
現地の医療体制は壊滅的で、NEPTと協力し緊急支援が決定したのだ。
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神崎はチームを集め、状況説明を始める。
「今回の任務は国境を越えた現場だ。文化も言葉も違う。だが、命は同じだ。誰一人、見捨てられない」
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現地に到着したY-01。
目の前には倒壊した家屋と浸水した道路。
救助隊とともに救援活動が続いていたが、混乱は凄まじい。
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神崎たちは負傷者のトリアージを開始。
言葉の壁に苦しみながらも、身振り手振りで患者の状態を伝え合う。
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その時、妊婦が緊急搬送されてきた。
胎児の心拍は不安定で、母体も大量出血。
神崎は即座に帝王切開の準備を指示し、限られた資材の中で手術を始める。
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手術中、突然停電。
発電機も故障し、暗闇の中でチームは懐中電灯の光だけで必死に作業を続けた。
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手術は成功。
母子ともに一命を取り留めたが、現地の医師は神崎に詰め寄る。
「この国の医療はもっと計画的であるべきだ。
あなたのやり方は無秩序すぎる」
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神崎は答える。
「今、必要なのは計画じゃない。
今、生きている命を救うことだ」
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その言葉に現地医師は言葉を失い、チームは新たな試練の始まりを感じ取った。