表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第4話 ハルベリー村へようこそ

後ろからの視線を感じつつ、でも森を抜けようと歩き続ける。


途中で山菜やら木の実やら、食材になりそうなものも見つけたしいい収穫ができた!

食べられそうな木の実は何個か落として、子狼が食べられるように地面に置いてあげたら嬉しそうに食べていた。…かわいい。絶対に触らせてくれないけど。


そう思いつつ歩いていると、微かに川のせせらぎの音が聞こえてきた。

川…ということは、どこかの村や町に繋がっているかもしれない!


子狼を置いて行くのもかわいそうなので、走らずにゆっくりと川の方へと向かって行った。





森を抜け川に辿り着くと、少し先に橋がかかっている。

川を挟んだ向こう岸にはいくつか木造の家が並んでいた。

橋のところまで行くと、「ハルベリー村」とだけ書かれた木の看板が立っている。


ハルベリー村…聞いたことがない。

やっぱりここは本当に異世界なんだ。

そう思いながら、村へ続く橋を渡った。


村に入るとちょっとした市場が広がっていた。

見たことがない魚や果物、野菜などが並んでいる。

大規模ではないが種類が豊富だ。

キョロキョロと見ていると、

「いらっしゃい!おや?お嬢ちゃん、見慣れない顔だね?旅人さんかい?」

店先から愛想のいいおばちゃんが声をかけてきた。


「そうなんです。素敵な市場ですね」


「そうだろう~?これもそれもローウェンさんが来てくれたおかげだよ。果物や野菜が実りやすくなってね。それに近くには川辺があって魚も獲れる。いい町だよ。ところで、お嬢ちゃんの後ろにいるその子狼…傷がひどいよ。村はずれに居るローウェンさんに診てもらったほうがいいね~?」


その言葉に振り向くと、子狼がちょこんと座っていた。

あれほど…本人的には頑張って隠れていたのに、こんなに堂々と人里に姿を現して大丈夫なんだろうか。


「ローウェンさんという方は、お医者さんなんですか?」


「医者…というよりあれは薬草オタクだね(笑)昔はもっと都会にいた人で、王族に仕えてた…とかなんとか。まあ、腕はたしかだよ。」


「教えて頂きありがとうございます!」

そう言って、お礼に苺…ラズベリー?のような果物を買おうとポシェットに手を突っ込み気が付いた。


お金がない………。

なにせこの世界にきてあたしが持っていたものと言えば箸のみだ。

それも1本は便利なポシェットになってもう1本は簪になっている。

それに日本のお金を持っていたところで使えないかもしれない。


どうしよう…。

親切に教えてくれたのに…申し訳ない…

何か交換できるものでもあれば………ん?交換??


「すみません…今、所持金を切らしていて…。あの、これと交換して頂くことってできますか?」


そう言って、ポシェットから小瓶に入れた塩を取り出すと、おばちゃんは目を丸くした。


「……こ、これは……塩? しかも、精製度が高い…あんた、どこでこんなの手に入れたの?」


「えっ、これ…特別なものなんですか?」


「そりゃそうさ。このへんじゃ、塩ってのは山越えて手に入れる貴重品だよ? 保存も効くし、薬の材料にもなるからね。果物なんかじゃ割に合わないよ、正直言って」


「そうだったんですね……でも、何も持ってなくて……お礼の気持ちとして、少しでも…」


「ふむ……だったら、こうしようかね」


おばちゃんはちょっと困ったように笑いながらも、ラズベリーのような果実をカゴに詰めてくれた。


「まぁ、これも何かの縁だ。だったら――ひとつ提案。

あんた、さっき“ローウェンさんに子狼を診てもらいたいって言ってたよね?」


「はい、でも場所がよく分からなくて……」


「そりゃそうさ。あの人の家、村のはずれにあってさ。ちょっと入り組んでて初見じゃ迷っちまう」

おばちゃんはバスケットを渡しながら、にっと笑った。


「案内してあげるよ。ついでにあんたが変なヤツじゃないって保証にもなるしね。あの人、ちょっと人見知りなとこあるからさ〜」


「えっ、人見知り…?」


「って言っても近づくなオーラを出してるだけだけどね!でも腕は確か。子狼もきっと助けてもらえるよ。これはその治療費ってことでどうだい?」


「ぜひ!お願いします!」


おばちゃんの店仕舞いを待っている間、子狼にラズベリーのようなものをあげると

不思議そうな顔をしてクンクンと匂いを嗅いでいたが、食べられるものだと分かったのだろう。

もぐもぐと一心不乱に食べ始めた。


「美味しい?」と聞くと、ぴこっと耳が動いた。


……かわいすぎか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ