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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
9/18

雨と少女

天音ちゃんと、大雨の中で出会った。

小さな天音ちゃんが、アパートの駐車場で雨宿りをしている。

俺は、天音ちゃんを、餌付けしていた。




『台風7号は、沖縄から離れつつ在りますが。引き続き、雨による土砂災害や河川の氾濫に警戒して下さい』


 東江は、バケツや鍋等を、並べて。雨漏りの箇所を確認作業をしている。

 だが、こればかりも、していられない。


「何だ、13∶00時、過ぎてるじゃん」


 俺は、どうりでお腹が空くわけだ。

 溜まりそうな、容器の水を捨てて。コンビニへ向かった。


 キッチンも、それなりに、綺麗にしたし。床も、分厚いベニアを追加した。


 自炊も、そこそこしているが。今日は、冷蔵庫に、何もない。


 大きな黒い傘を差し、厚手のスウェットに着替えて。肌着は着ていない。

 台風で、洗濯が間に合ってなかった。

 車があると、深夜のコインランドリーで、乾燥できるのだが。近くに、無いのが不便だ。


 スリッパを、パタパタと鳴らしながら、雨の道を歩く。

 ビールの6缶パックを買い、適当な摘みと、オニギリ。から揚げも足して、白Tも忘れてない。会計を済ませて、外に出た。


 モナカのアイスを開けて、袋はコンビニに捨てた。

 雨の中、オジサンがアイスを食いながら、一人で住宅街を歩いている。


 不思議な光景ではないが。沖縄では、違和感がある。


 そう。沖縄の人は、歩かない。

 200m先にあるコンビニへ、タバコを買いに行くのに車を出す。不思議な県民だ。

 それに、傘も滅多に差さない。

 ずぶ濡れになっても、晴れると直ぐ乾くという理由で、傘を持たない。車を使う。


 俺は、浮いてる存在なのか。


 荷物を抱えて、アパートに辿り着くと、駐車場に、少女がいた。


 50前の初老のオジサンが、関わってはイケナイ案件だ。

 分かってはいる。分かってはいるが。放置は出来ない。


 手に持った袋を。アパートのステンのポストの上に置き。


 東江は、もう一度、コンビニへ戻った。


 雑誌コーナーで、ナンプレを買い。お菓子コーナーで、駄菓子を大量購入して。3個バッグの四角いジュースを買った。


 ※警察案件です。真似はしないで下さい。


 雨は、降り続き。東江の願いは、届かなかった。


 少女は、冷たい地べたに座り。向かいのアパートを見ている。


 俺は、カメラに収まる中央に座り。

 ビニール袋から、3個パックのジュースを取り。ビニールを破り、一つを取り出した。


「お嬢ちゃん飲むかい」


 これが、天音ちゃんとの出会いだった。


『こく』と、頷き。

 俺の手から、ジュースを奪い取った。


 だが、ストローが中々取れない。


 天音ちゃんが、歯で食い千切ろうとしても、伸びるだけだった。


 俺は、違うヤツを取り出して、ストローを取り出し。パックに刺した。


 天音ちゃんは、苦戦したのを俺に渡して。ストローが刺さった方を奪い取り、強く握った。


 ジュースは、勢い良く飛び出し。天音ちゃんは、素早く口を付けた。


 ストローから、口を離さない。ゴクゴクと喉を鳴らして、パックを潰して行く。

 喉が、渇いていたのか。口から離すと、バックの膨らむ音が聞こえてくる。


『ズズズッ』


 次に、ビニール袋の駄菓子を漁り始めて。魔女っ子のウエハースチョコを取り出した。


 これも、開けられないと、渡してきた。


 袋を開けると、また、奪い取り。

 ウエハースチョコを口に入れた。


 最初の会話は、


「ピンクは、可愛いけど。1番は、3番の黄色が好き」


 理解が、できなかった。けど、

 キラキラシールを捲って渡すと。

 全てを、はがして。貼る場所を探して。

 自分の洋服の胸に貼って、喜んでいた。


「お母さんと、お父さんは、何処かな」

 勝手に、打ち解けたと思い込み。訪ねた。


「ママは、アッチ。パパはいない」

 アパートの二階を指していた。


「ママは、何をしているのかな」

 雨降りに、外に出して、探しもしない。


「分からない。新しいパパが、来てるの」

 天音ちゃんは、首を振り。知らないと答えた。


「天音ちゃんね、もう少しで、お姉ちゃんになるの。だから、良い子にしないと怒られるの」

 聞きたくない事を聞いてしまった。


「ママが、怒るの」

 母親も、児童虐待をしているのか。


「ママは、天音ちゃんが、悪い子だから。新しいパパに、叩かれているの」

 男が、児童虐待をしているのか。


「天音ちゃんは、ママの事好き」

 聞かないと、いけないと思った。


「ママは、好き。新しいパパは、嫌い」

 子供は正直だった。


「ママは、パパと結婚……」


 2階への階段から、男が降りてきた。

 そのまま、傘を差して、駅の方へと向かった。


 天音ちゃんは、柱の陰に隠れながら、男の行動を目で追い掛けている。


 男が、角を曲がり。姿を消すと。

 天音ちゃんは、路地の道を、雨に打たれながらも、左右を確認して道を渡り。


 階段は、壁を使いながら、急いで登っている。

 振り向きもせずに、家に向かっていた。


 俺も、母親に文句を言おうと、天音ちゃんを追いかけた。


 2階へと駆け上り、通路を見ると。

 203号室に、天音ちゃんは入った。


 天音ちゃんの部屋が手前だったら、見失っていたかも知れない。


 俺は、203号室の前で、大きく息を吸い。そのまま、吐いた。

 意を決して、チャイムを鳴らす。


 誰も出てこない。


 もう一度、鳴らした。

 それを、3回繰り返して。


 天音ちゃんが、怯えながら出てきた。


 俺は、この光景が忘れられない。


 これからは始まる、火事も。


 天音ちゃんは、俺の顔を見ると、ホッとしたのか。部屋の中へ消えた。


 呼ばれているのか。母親の影が見当たらない。

 東江は、ドアを全開に開けて。監禁罪を、否定しようとした。


「天音ちゃん。お母さんは、何処かな」


 ここが、天音ちゃんの家なら、母親はどこへ行った。男が、降りて来て直ぐだ。消えたのか。


 色々と考えていると、焦げ臭い匂いが、鼻を襲った。


 東江が、ドアを開け放っていたから。空気が、ドアの方に流れていた。


 次の瞬間、ベッドで炎が上がった。

 それと同時に、警報機が鳴り響き、天音ちゃんが、丸くなりながら。


『キャー。助けて』

 奥の部屋で、助けを呼んだ。


 俺は、スリッパを脱ぎ、家に上がった。


 寝室の窓を開けて、燃えている布団を丸めてベランダへ投げた。


 現れたのは、発火装置に使われたアイロンだった。コンセントが、刺さっている状態だ。


 最初に、コンセントを抜き。

 上着を脱いで、炎を上着で叩いた。

 何度も、何度も。火が消えるまで、ひたすら、上着を振り下ろし。叩きつけた。


 火が消えると、慎重にアイロンを持ち、ベランダに投げ捨てて。

 臭くなった、マットレスもベランダに移動させた。


 幸いにも大雨で。布団が、ベランダに有った、水溜りを吸い上げている。

 放置しても、安全だと思った。


 玄関には、野次馬が溜まっていて。

 俺は、ボロボロになった、上着を着た。


 「すみません。ボヤです。お騒がせしました」


 東江は、頭を下げて。安心させた。

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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